風の向こうに  

前半・子供時代を思い出して、ファンタジィー童話を書いています。
後半・日本が危ないと知り、やれることがあればと・・・。

風の向こうに(第三部)六小編 其の参拾参

2010-05-23 21:11:40 | 大人の童話

「でも、夢ちゃん、卒業して38年、いろいろなことわかってよかったね。」

「うん。懐かしいものに会うこともできたし、気になっていたこともだいたいわかったし、

新しいものも見ることができた。あとは卒業記念樹だけね。それも、六月に来れば

わかると思う。」

夢は六小の言葉に、笑顔で答えました。

「あ、それからね、去年運動会見に来た時、もう一つわかったよ。」

「え、なになに。」

六小の放つ光は、夢の言葉に輝きを増し、六小は夢の言葉に興味深深のようです。

「うふ、あのね、わたしたちより2年前の、第ニ回卒業生が卒業記念に残したテントが

まだ使われていたの。」

「へぇ~、それはすごいね。」

「でしょ?あのテントは、わたし、よく覚えているんだ。5・6年生の運動会の時、

使っていたもの。まだ使っていたんだね。なんか、うれしかった。感激しちゃったな。」

六小は、懐かしそうにテントの話をする夢を見て、夢ちゃんにとっては、ほんのテント

一つでも、わたしの所にいた時の大切な思い出なんだな、それはわたしを大切に

思っていてくれているということでもあるんだな、と思い、いつまでも自分を大切に

思ってくれている夢に、小さな声で「ありがとう。」と言ったのでした。この時、夢は

六小と向かい合っていました。しかし、六小には、夢の眼がどこか遠くを見ている

ような気がしてなりませんでした。その眼には、40年前の懐かしい小学校時代が

映っているように六小には見えました。六小はそんな夢の顔を、いつまでも

そっと見ていました。



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