メンデルスゾーンの生誕200年記念 の特別企画ということで、2夜連続の
シンポジウムとコンサートに行ってきた。
ものすごくいい企画で、非常に面白かった。
メンデルスゾーンは1809年2月3日、ユダヤ系ドイツ人の家系である銀行家の長男としてドイツの
ハンブルクに誕生。音楽家にしては珍しく、富裕の家庭で育ち、早くからその天才を発揮し、数々
の名曲を世に送り出し、各国の言葉を自在に操り、水彩画でも才能を発揮、指揮者・ピアニスト・
オルガニストと活躍し、その当時忘れ去られていたバッハの楽譜を発掘し、発表。
天才中の天才として活躍するが、わずか38歳でこの世を去ったという音楽家である。
私は、子供の時代からこのメンデルスゾーンの作品が大好きで、今でも毎年、発表会では、
生徒さんが必ず’無言歌集’の中から1曲、弾いていて、生涯のエピソードも髄分読んで、知って
はいたのだが、この1日目のシンポジウムでは、メンデルスゾーンは、それに加えて、乗馬や
水泳までも得意だったときき、本当に何でもこなす天才だったのだと改めて納得。
これは、メンデルスゾーンが描いた’ダラム大聖堂’。生涯を通じて、彼はいつも小さな画帳を
携帯して、描きとめていたらしい。
これは、彼が描いた’ゾーデンにいる家族’(部分)
うちにある資料には、メンデルスゾーンの描いたスケッチ画がたくさんあった。
確かに細かく精密だ。
会場には、貴重なメンデルスゾーンの自筆譜も展示してあり、自筆譜をこよなく
愛する私!は、もう目がらんらんしてしまって、しばらくずっと見ていた。
これは展示してあったのとは違う「真夏の夜の夢」序曲の自筆譜。彼の使用した
ペンもあったが、まあ本当に、几帳面な整った譜面で、字も非常にきちんとしていて
美しい!感動です!
自筆譜はその作曲家の性格がよくわかるが、ドイツのボンのベートーヴェンハウスで見た
自筆譜は、もう書きなぐってある感じだったし、資料で見るショパンやそのほかの音楽家
の自筆譜も、結構書き直したあとなどあるものだが、メンデルスゾーンのは、見事に
美しく凄然としていた。
以前、フランクフルトのゲーテの生家にいったとき、大好きだった『若きウェルテルの悩み』
を書いたという机が展示してあり、私はそこで非常に興奮してしまい、インクのあとだらけ
の机の写真を何枚も撮り、机をなでてしまった!
どうもこの自筆というところに、いつも興奮してしまう変な私(笑)
アムステルダムのアンネの家では、アンネの日記の自筆を見たが、これは胸がしめつけ
られるような心が痛い自筆だった・・・
この1日目のコンサートとシンポジウムは、3時間にもなり非常に面白かった。
指揮者のクルト・マズアさんと奥様の偕子(ともこさん)、立教の教授の星野さんやメンデルス
ゾーン学者のピーター・ウォ-トジョーンズさん、音楽学者のラルフ・ヴェナーさん
そして井上さんが、滅多にきけない貴重なお話をいろいろしてくださった。
すばらしかったのは、クルト・マズアさんの、ゲヴァントハウスの歴史や、いかにしてメンデル
スゾーンの作品を守ってきたかという重厚なお話だった。
メンデルスゾーンはユダヤ系だったので、その作品は、ナチスの迫害から守るために、
ベルリンからすべてを移し、エルベ川を下った炭鉱の地下に隠していたんだそうだ!
感動!こうやって世界の遺産は守られたのだ!
ゲヴァントハウス弦楽四重奏団の、ボーイングもすべて伝統にもとづいた徹底した演奏。
4人の音がまさに一糸乱れず1つの音になり、最後の弓の角度も、綺麗に全員、同じ角度!
すばらしい四重奏で、今まできいたゲヴァントハウス四重奏団の演奏の中でも、
特に印象的だった!
写真は「フィンガルの洞窟」
大好きなフィンガル。2日目のOEKと井上さんのフィンガルは、自由でおおらかで、本当に
いい演奏だった。いつもは最前列なのに、この日は、席が行ってから決まったので、前から
13列目。でもいつもは見えなくて想像できいている管やパーカッションの方々もしっかり
見えて、大満足。各楽器が本当によく響いていた。
洞窟の情景が、ずっと頭の中に拡がっていた。
写真はスコットランドの西の洋上に浮かぶ孤島スタッファ。フィンガルの洞窟に行くには、
ボートをこいで行くんだそうだ。私は一生行くことはないだろうなあ。
20歳のメンデルスゾーンが実際にみたフィンガルは、彼の目にどう映ったのだろうか。
コンサートのラストは、マズーアさんがOEKを振る交響曲第4番「イタリア」
井上さんが解説されたように、メンデルスゾーンが開設した古きゲヴァントハウスの歴史と
20年の若いOEKとの融合!
「イタリア」の冒頭はあののだめちゃんのテーマソングにもなってますよね(笑)
これもまた大好きは「イタリア」は、マズーアさんの手にかかると、本当のメンデルスゾーン
がそこで振っているような、そんな感覚に陥りました。
ゆったりとしたテンポで、鮮やかにイタリアの音が響き渡って、満席のあたたかいお客さん
の拍手の中で、本当に幸せな夜を味わいました。
この企画は、東京・大阪と金沢だけですよね。
金沢で、こんなすばらしい体験が出来て、本当にうれしかったです。
このような形の、シンポジウムも、また期待してます