ピアノと海と花との生活 Ⅱ

~創造する芸術~

ミステリアス・メンデルスゾーン メンデルスゾーン生誕200年特別企画

2009-12-18 | 音楽

    

          

           メンデルスゾーンの生誕200年記念 の特別企画ということで、2夜連続の

          シンポジウムとコンサートに行ってきた。

          ものすごくいい企画で、非常に面白かった。

              

     メンデルスゾーンは1809年2月3日、ユダヤ系ドイツ人の家系である銀行家の長男としてドイツの

    ハンブルクに誕生。音楽家にしては珍しく、富裕の家庭で育ち、早くからその天才を発揮し、数々

    の名曲を世に送り出し、各国の言葉を自在に操り、水彩画でも才能を発揮、指揮者・ピアニスト・

    オルガニストと活躍し、その当時忘れ去られていたバッハの楽譜を発掘し、発表。

    天才中の天才として活躍するが、わずか38歳でこの世を去ったという音楽家である。

     私は、子供の時代からこのメンデルスゾーンの作品が大好きで、今でも毎年、発表会では、

    生徒さんが必ず’無言歌集’の中から1曲、弾いていて、生涯のエピソードも髄分読んで、知って

    はいたのだが、この1日目のシンポジウムでは、メンデルスゾーンは、それに加えて、乗馬や

    水泳までも得意だったときき、本当に何でもこなす天才だったのだと改めて納得。

              

    これは、メンデルスゾーンが描いた’ダラム大聖堂’。生涯を通じて、彼はいつも小さな画帳を

    携帯して、描きとめていたらしい。

              

      これは、彼が描いた’ゾーデンにいる家族’(部分)

      うちにある資料には、メンデルスゾーンの描いたスケッチ画がたくさんあった。

      確かに細かく精密だ。  

        

            

        会場には、貴重なメンデルスゾーンの自筆譜も展示してあり、自筆譜をこよなく

        愛する私!は、もう目がらんらんしてしまって、しばらくずっと見ていた。

        これは展示してあったのとは違う「真夏の夜の夢」序曲の自筆譜。彼の使用した

        ペンもあったが、まあ本当に、几帳面な整った譜面で、字も非常にきちんとしていて

        美しい!感動です!

        自筆譜はその作曲家の性格がよくわかるが、ドイツのボンのベートーヴェンハウスで見た

        自筆譜は、もう書きなぐってある感じだったし、資料で見るショパンやそのほかの音楽家

        の自筆譜も、結構書き直したあとなどあるものだが、メンデルスゾーンのは、見事に

        美しく凄然としていた。

        以前、フランクフルトのゲーテの生家にいったとき、大好きだった『若きウェルテルの悩み』

        を書いたという机が展示してあり、私はそこで非常に興奮してしまい、インクのあとだらけ

        の机の写真を何枚も撮り、机をなでてしまった!

        どうもこの自筆というところに、いつも興奮してしまう変な私(笑)

        アムステルダムのアンネの家では、アンネの日記の自筆を見たが、これは胸がしめつけ

        られるような心が痛い自筆だった・・・

              

      この1日目のコンサートとシンポジウムは、3時間にもなり非常に面白かった。

      指揮者のクルト・マズアさんと奥様の偕子(ともこさん)、立教の教授の星野さんやメンデルス

      ゾーン学者のピーター・ウォ-トジョーンズさん、音楽学者のラルフ・ヴェナーさん

      そして井上さんが、滅多にきけない貴重なお話をいろいろしてくださった。

      すばらしかったのは、クルト・マズアさんの、ゲヴァントハウスの歴史や、いかにしてメンデル

      スゾーンの作品を守ってきたかという重厚なお話だった。

           

       メンデルスゾーンはユダヤ系だったので、その作品は、ナチスの迫害から守るために、

       ベルリンからすべてを移し、エルベ川を下った炭鉱の地下に隠していたんだそうだ!

       感動!こうやって世界の遺産は守られたのだ!

       ゲヴァントハウス弦楽四重奏団の、ボーイングもすべて伝統にもとづいた徹底した演奏。

       4人の音がまさに一糸乱れず1つの音になり、最後の弓の角度も、綺麗に全員、同じ角度!

       すばらしい四重奏で、今まできいたゲヴァントハウス四重奏団の演奏の中でも、

       特に印象的だった!

           

       写真は「フィンガルの洞窟」

       大好きなフィンガル。2日目のOEKと井上さんのフィンガルは、自由でおおらかで、本当に

       いい演奏だった。いつもは最前列なのに、この日は、席が行ってから決まったので、前から

       13列目。でもいつもは見えなくて想像できいている管やパーカッションの方々もしっかり

       見えて、大満足。各楽器が本当によく響いていた。

                洞窟の情景が、ずっと頭の中に拡がっていた。

       写真はスコットランドの西の洋上に浮かぶ孤島スタッファ。フィンガルの洞窟に行くには、

       ボートをこいで行くんだそうだ。私は一生行くことはないだろうなあ。

       20歳のメンデルスゾーンが実際にみたフィンガルは、彼の目にどう映ったのだろうか。

       

        コンサートのラストは、マズーアさんがOEKを振る交響曲第4番「イタリア」

        井上さんが解説されたように、メンデルスゾーンが開設した古きゲヴァントハウスの歴史と

        20年の若いOEKとの融合!

        「イタリア」の冒頭はあののだめちゃんのテーマソングにもなってますよね(笑)

        これもまた大好きは「イタリア」は、マズーアさんの手にかかると、本当のメンデルスゾーン

        がそこで振っているような、そんな感覚に陥りました。

        ゆったりとしたテンポで、鮮やかにイタリアの音が響き渡って、満席のあたたかいお客さん

        の拍手の中で、本当に幸せな夜を味わいました。

        この企画は、東京・大阪と金沢だけですよね。

        金沢で、こんなすばらしい体験が出来て、本当にうれしかったです。

        このような形の、シンポジウムも、また期待してます

        

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オーケストラアンサンブル金沢第270 回定期公演

2009-12-01 | 音楽

 

                    

                       2009年11月28日(土)

         石川県立音楽堂 
 
             マーラー 交響曲第3番ニ短調
 
           OEKの皆さんが、ヨーロッパ公演だったので、随分定期があいたなあという気も
 
        しながら、ずっと待っていたマーラー3番。
 
        県立音楽堂の舞台に、231人!オケだけでも100名以上のっていたというから、
 
        壮観!
 
        第1楽章は、OEKがメイン。冒頭のホルン8本のユニゾンだけで興奮!トロンボーンソロも
 
        非常に安定感がある。あとの拍手がおおきかったですね。
 
        「牧神(パン)が目覚める、夏が来る」 鮮やかな夏の行進だった!
 
        華やかな楽章はもちろんのこと、2楽章もすごくよかった。
 
        3番のきかせどころはもちろんマーラーを知り尽くした井上さんだからこそ、
 
        すばらしくどこもきめている。
 
        2楽章のテンポがすごくいい。音楽の流れが非常によかった。
  
        ここで席替えで、新日がメイン。OEKのマイケルさんが譜めくりという珍しい光景!
 
        コンサートマスターの崔文洙さん,見た目は葉加瀬太郎さん、弾き方はのだめみたいに
 
       時々背中をのけぞっての演奏だったが、ものすごくいい音だった。やっぱり新日の方々、
 
        マーラーに慣れてる。3楽章の終わりで、井上さんが崔さんにブラボーと贈っていた。
 
        3楽章のポストホルンだけは、はらはらしたけれど、だんだん音も落ち着いて、森の中で
 
        遠くから聞こえる民謡調のヴォカリーズだった。
 
        4楽章のメゾ・ソプラノのキューレンさんのニーチェもすばらしかったし、5楽章のパイプ
 
        オルガンの段からの天使の歌声もよくがんばっていた。
 
        6楽章の入り方が、絶妙。美しい響きにしびれる。
 
        途中で、いつものように目を閉じて、音だけきこうとした瞬間、
 
        井上さんの左手に目が釘付け!音を押さえるようにずっと手のひらでぐっと落とす連続。
 
        231人の音をまとめるって、こんな事なんだ。音楽はそうですよね。出さない場所は、
 
        ずっと押さえる。本当に響きが美しい6楽章!
 
        そこから自然に、舞台いっぱいに音が拡がり、炸裂し、井上さんが連れて来られたサンク
 
        ト・ペテルブルク・フィルのティンパニー奏者,ヴィクトル・カナトフさんの硬質ないい音が
 
        響き渡ってクライマックス。
 
        あっという間の1時間40分でした。
         
        マーラーは、特にCDできくのと生のオケをきくのは、大差がある。
 
        そのことをよくわかってはいたのに、100人を越すオーケストラと大合唱団とが、聴き手と
 
        同じ時間と空間を共有して、そこに炸裂する芸術を目の当りにすると、もう圧倒され、鮮烈
 
        な音の連続に、目がくらみそうでした。
 
        本当に幸せなマーラーの日でした。
      
        
      
             

グスタフ・マーラー

2009-12-01 | 音楽

 

    

      マーラーの音楽は不思議だ。管弦楽とは?交響曲とは?と考えるが、

      ソナタ形式の枠組みもあてはまらないようで、実はマーラーをきいていると、ベートーヴェン
 
      の交響曲がわかったりする。
 
       上の絵は、私の大好きなクリムトの『音楽Ⅰ』だが、マーラーの音楽は、クリムトの絵
 
      に似ていると思う。実際2人は、ウィーンで仲のよい友人だったのだ。
 
      マーラーはグスタフ・マーラー(1860~1911)、クリムトはグスタフ・クリムト(1890~1909)
 
      で名前が同じ、亡くなったのも、マーラーは喉が連鎖球菌にやられたのが原因、クリムトは突
 
      然脳卒中でらしいが、同じ頃に人生を閉じた。
 
       クリムトの官能的な絵は、マーラーの音楽にとてもよく似ている。
 
      クリムトは、1902年の分離派大展覧会のとき、ベートーヴェンのフリーズを作り、
 
      開幕のときに、第9のテーマを、トロンボーンの合奏にするようマーラーに説得したらしい。
 
      おもしろいなあ。
 
 
               
 
           クリムトの伝記に
 
          「世紀末と呼ばれた時代を、その時代が準備した深い無意識、それはクリムト
 
          の深い感受性がかぎつけた 」というくだりがあったが、今回の定期のプログラムに
      
          は、響 敏也さんが、「マーラーは自然の景色を音楽に閉じ込めた」という文と,
 
                    「マーラーと夏目漱石が似ている」とも書かれていた。これも納得できる。
 
          上の写真は1907年、マーラーが47歳のときのもの。何気ない表情が素敵。
 
          マーラーというと、私は大好きなビスコンティの映画『ベニスに死す』
 
          のマーラー像のイメージが強いのだが、実物の方がずっと素敵。
 
          しかし、マーラーの音楽には、なぜあの様なトランペットが鳴り響き、軍隊の音が
  
          多いのだろうか。
 
 
              

                  伝記によるとマーラーはボヘミア、現在のチェコのユダヤ人の家系で、少年時代の

       マーラーは家の近くのオーストリアの兵営からきこえてくる軍隊の音をいつもきいていた。
 
       その住民はチェコ語とドイツ語を話す確立が、半々で、
 
       3番の交響曲の最初のモチーフは不思議だなあと思っていたら、ソにシャープが
 
       ないのは、その町で歌われていたボヘミアの民謡か、ユダヤ教の礼拝のエコーらしい。
 
       でも、マーラーの音楽が、当時の人々に理解されるのにすごく時間がかかった、という
 
       事実は、彼の音楽の中に、阻害感や虚無感、瞑想的なもの、それと正反対な攻撃的、
 
       情熱的な要素が入り混じっているからだろう。
 
 
                  
 
        今回井上さんが、OEKと新日で3番を演奏してくださるので、
 
       フランクフルトラジオシンフォニーの全曲、15枚組のCDを買い、きいていた。これはジャケット
 
       が全部クリムトの絵(上は1903年にマーラーが指揮したアムステルダムのコンセルトへボ
 
       ウのアール・ヌーヴォー風のプログラムの表紙。美しい!)
 
       井上さんのロイヤル・フィルとの4番、6番も買った(あとは高くて買えません!)
 
       すごくいいです。
 
       スコアを見るのも大好きなので、マラ3のポケットスコアも、手に入りうれしかった。
    
       以前ヤマハの講師をしていた時に、生徒さんの発表会は、エレクトーンとシンセ何台か
 
       で、クラシックの曲を演奏するというもので、12人の1クラスで、ショスタコーヴィチの5番
 
       の4楽章をやったことがあった。
        
       たった12人にパートを振り分け、弦や金管や木管に分けるのが、バランスが悪く、何度も泣
 
       きながら書き換えて、本番はそういう音が出てきてすごくいい演奏になった。
 
       次の年は、20人くらいで、「フィンランディア」やったなあ。これは楽しかった。
 
       あとエレクトーンで1人で、右手と左手とベースでスコアを振り分けて、ベースにティンパ
 
       ニーなどもってこれるので、’1人シンフォニー’ができ、このアレンジの作業はは大好き
 
       でいつもやっていた。
   
       バルトークの「管弦楽のための協奏曲」とか大会で弾いてたなあ。楽譜作りも凝りまくって
 
       楽しかった。
 
        それで、今回久しぶりにスコアを見ながら、マーラーをきき楽しんでいた。
 
             
 
        でもここでも難あり(笑)せっかくスコアをみてきいていっても、本番の時は、実際の音の
 
       ほうが楽しいので、きいているときは、楽譜はすべて忘れてしまいます(笑)
 
        今回のマーラーは、時間も忘れるくらい存分に実感し、心酔しました。
 
        総勢234人のオケと合唱のメンバーを、1時間20分、休みなしに振るのって、
 
       どれほどの集中力なんでしょう。
 
       この壮大な音を、定期で実現してくださった井上さんに、本当に感謝します。
 
       昨日は富山公演でしたね。金沢と富山で、3番がきけたことは、私たちは本当に幸せだった
 
       と思います。
 
       富山との合同企画も、すごくいいと思います。
 
       しょっちゅう東京へいけない私たちのために、北陸で是非マーラー、ショスタコーヴィチ、
 
       ブルックナーやってください!
 
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