ピアノと海と花との生活 Ⅱ

~創造する芸術~

サグラダ・ファミリアは楽器だったのか Ⅱ

2006-09-03 | 建築

                                   

石の聖書

  ガウデイは、バルセロナの街中を、すばらしい音楽のコンサートで楽しませたかったのです。

  それこそが、ガウデイが遠い将来の夢として、思い描いていたこと。

  そして、ガウディは、街中に音を響かせる壮大な楽器を創ることに、

  情熱をかたむけました。

  そのため、ガウディが考え出したのが「鐘塔(しょうとう)」 です。

鐘塔とは?

  ガウディの創りたかった鐘塔とは、

  このサグラダ・ファミリアの写真を見ると、奇妙な塔に、たくさんの小窓が見えます。

  この4本の塔 鐘塔に84の鐘を吊るすつもりでした!

  この鐘の詩作は、ガウディのアトリエの1枚の写真から発見されました。

  筒型で、上の部分と下の部分が少し拡がっていて、形でいうと楽器のクラリネットのようなもの。

  弟子の書いた書物の中の、ガウディの言葉から、

  ’それは直線部分と、下のほうがゆるやかに拡がっている形が望ましい’と、

  判明し、番組ではそのプロジェクトチームが作られました!

彫刻家 外尾悦郎氏

  以前、ネスカフェのCMに出演なさってましたねえ。

  外尾氏は24年間、サグラダ・ファミリアの生誕の門の建設の責任者で、

  生誕の門は、彼がほとんど完成させました。

  奥様は、比石妃佐子さんといって、アルベニスなどスペイン音楽を演奏されるピアニストです。

    アルベニスの孫に当たる方が、比石さんの演奏がすばらしいと絶賛。彼女は各地で演奏していらっし

  ゃって私も大フアンです!

  外尾氏は、生誕の門の鐘塔が、楽器であったということは間違いないと、確信していました。

     人間の創り出した芸術、彫刻、建築、音楽を含めて、

    すべてのものが含まれていないと、駄目だ。

    サグラダ・ファミリアのすべての造りが、音に集約している!

音楽家 久石 譲氏

  彼も、ガウディに刺激された一人、グエル公園をテーマにして、曲をつくったこともあるそうです。

  久石氏が、番組全体をとおして、サグラダ・ファミリアの秘密を探り、

  最終的に、未来のバルセロナの街に拡がる音楽をつくります。

未来の楽器としてのサグラダ・ファミリア

  鐘塔は、何箇所かで仕切られていて、

  真ん中の2本の塔をつなぐ回廊に、ガウディは、そこに子供の聖歌隊をたたせるつもりでした。

  壁を背にして、反ドーム型の湾曲した天井、これが反響板となり、

  合唱の声が、礼拝堂の中に響き渡る、効果的な構造です。

  すべての小窓は同じつくり、そこから、音が街中に響く!

  ガウディは実際に鐘を試作し、約2キロはなれたグエル公園からその音をきいていた!

プロジェクトチーム

  ① ガウディの鐘の製作  約2メートルの長さ、下のほうが少し拡がった鐘を造る

                   →富山県高岡市 老子製作所  元井氏

   ②  84の鐘の音をコンピューターで合成

              鐘は上のほうがチューブラベル(’のど自慢’の鐘のようなもの)

                 下のほうがカリヨン(教会の鐘)

              上のチューブラベル、直線の長さを少しずつ短くすることで音階ができる

                  →中央大学、戸井教授

  ③  鐘の配置を決定する

                  鐘塔の中はらせん状になっている 

                  鐘をらせん状に配置

                  →建築家 沢田直樹氏

  ④  実際の音のシュミレーションをつくる

                  →音響メーカー BOZZ

曲の完成!

  この壮大なプロジェクトで、未来のバルセロナに響く音楽!

  それは、番組の最後に、未来の完成図と現在の風景の合体した影像の中に、

  鮮やかに響き渡りました!

  すべて鐘の音で出来た、カタロニアの民謡のメロディー。

  それは、何故か懐かしく、涙が出そうな美しい響きでした。 

ガウディの残した言葉

  『朝日の差し込む東側の「生誕の門」、

   昼間の光の中のいっぱいの「栄光の門」から、

   未来の街の人たちがはいってくる。

   聖歌隊たちは、礼拝堂に響き渡る声で、歌うだろう。

   そしてその声に合わせて、鐘がすばらしい音で唱和するだろう!』

ガウディの残した、遺産 サグラダ・ファミリア、その壮大な未来の姿が、

すばらしい音楽とともにあったのだと知り、

ますます感慨を新たにしました。

次回は『盗まれた名画』の予定です。

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次回もいつになるかわかりませんが、お知らせします。

お楽しみに! 


サグラダ・ファミリアは楽器だったのか Ⅰ

2006-08-27 | 建築

 

サグラダ・ファミリアとは

    スペインが生んだ天才建築家ガウディ(1852-1926)が生涯をかけて製作したサグラダ・ファミ

   リアの建設が始まったのが、1882年、ガウディの死後もガウディのその意志を引き継いで、建

   設は続けられていますが、いまだその完成の時を迎えていません。

   これは、ガウディの生誕150年である2002年に、テレビ朝日が企画した番組 「ガウディミステ

   リー サグラダ・ファミリアは楽器だったのか」をもとに、私なりにまとめたものです。

サグラダ・ファミリアの完成の姿

   このサグラダ・ファミリアは、1882年にビリャールがネオゴシック建築物として開始したプロジェ

      クトを、1883年にガウディが受け継ぎ、全生涯を傾けたんですね。

      ガウディは『巨大な石の聖書』として、『生命のあふれた森』としてこの大事業に命を吹き込み

       ました。

     ガウディは、設計図も書かずにアトリエで模型図をつくって、試行錯誤を繰り返しながら、事業

      をすすめました。

    でも、1915年のスペイン市民戦争で、その模型が失われ、後世に残された人間が、そのかけ

    らをつなぎ合わせて、ガウディの意志を受け継いでいます。

      2002年時点で8本ある柱は完成時に18本に、4本ずつ12本、それはキリストの12使徒を表

       し、それぞれの門に4人の福音者、中央にマリアの塔、そして170メートルのキリスト像が出来

       文字通り『巨大な石の聖書』が完成するという未来の姿です。

生誕の門

   ガウディが、生前みずからの手でほぼ完成させたのは、’生誕の門’のみです。

    サグラダ・ファミリアは日本語で’聖なる家族’キリストとその父ヨゼフ、母マリアの彫刻が中央

    におかれています。そしてその周りにキリストの生誕を表す彫刻群が散りばめられています。

    それで巨大な’石の聖書’といわれているのです。

受難の門

   今は影も形もない’受難の門’

    ガウディが亡くなったのは、1926年、教会にミサに向かう途中でした。、路面電車にひか

    れ、晩年身なりに気をつかわなかったため、貧民の為の病院に運ばれ、それで手当てが

    遅れたために、三日後に息を引き取ったと言われています。 

   そのとき、彼のポケットから受難の門のスケッチが出てきました。

   そのスケッチと模型のかけらをつなぎ合わせて、1952年に工事は始まりました。

   将来の礼拝堂である、その内部の柱は、驚くべきことに!木の形です。

   上のほうで枝分かれして、葉っぱのようになっています。

石の聖書 生命があふれる森

   内部は広く、森の中にいるような親密さがあります。

    光にあふれて、自然光が差し込んで来る。教会の従来のイメージからはほど遠い、自然の

    空間を創造したのですね。

    中央の廊下から祭壇に向かうと、そこは幅45メートル、奥行き90メートル、1万人の人が

    集まる巨大な空間が現れます。

    将来、教会を訪れる人は、この受難の門をくぐって、礼拝堂にはいっていくのですね。

    でも、この巨大な空間が、人のためにではなく、違う目的で創られたのではないか、という

    数々の点があります。

   そして、その謎を解く鍵が、ガウディの弟子の書いた本から見つかったのです!

次回はいよいよ、サグラダ・ファミリアが楽器だったのかという真理に迫ります!

お楽しみに!

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