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地球最後の日のための種子 スーザン・ドウォーキン著 (日経新聞)

2010-10-03 05:01:05 | ちょっと 『気になる』 はなし
ノルウェー領スバールバル諸島。北極圏の凍土の地下に巨大な種子貯蔵庫がある。世界から集めた何百万種もの作物の種子が眠る。人類が壊滅的な災厄に襲われた後も、生き残った人々が農業を続けられるようつくられた。



 この「地球最後の日のための貯蔵庫」建設を構想した男、ベント・スコウマンの生涯を軸に、第2次世界大戦後の農業革命の時代を生きた科学者たちを描いた科学ノンフィクションである。

 スコウマンはデンマークの農家に生まれ、米国で植物病理学を学んだ。「緑の革命」を主導した植物学者、ノーマン・ボーローグ博士(1970年ノーベル平和賞受賞)に出会い、世界から飢餓をなくすため、高収量の小麦の新品種の開発などにともに取り組んだ。

 新しい品種を生み出す元手は、過去の品種や原生種にある。たくさんの種をつけ病害虫に強いなど穀物には人間にとって好ましい性質を与える遺伝子が隠れている。多様な品種を世界から集め未来のために保管する種子銀行の重要性をスコウマンは説き続けた。「もし種が消えたら、食べ物がなくなる。そして君もね」がお得意の冗談だった。

 今や種子は希少な資源だ。地球温暖化の進展で穀倉地帯の水不足や新たな病虫害の登場が心配されるなか、未利用遺伝子の潜在価値は高まる。先進国の種子企業は穀物の遺伝子で特許をとり、発展途上国は自国内での原生種の採取などを厳しく規制する。遺伝子や種子の囲い込みが起きている。

 10月半ばに名古屋で生物多様性条約/async/async.do/ae=P_LK_ILTERM;g=96958A90889DE2E6E4EBE6EAE1E2E0E4E2E1E0E2E3E29BE0E2E2E2E2;dv=pc;sv=KNの国際会議が開かれる。「絶滅が心配される貴重な動植物を守れ」という環境保護の掛け声の背後で、生きものという資源をめぐって国や企業の経済闘争が展開する。

 緑の革命は収量増を実現したが、化学肥料と農薬への過度な依存をもたらすなど今は批判の対象でもある。飢餓撲滅の大義を掲げた種子収集も、現代の文脈ではうっかりすると物議の種ともなりかねない。本書は生物多様性の大切さを知る手引きであり、科学者が熱き理想家でいられたころの物語でもある。


(中里京子訳、文芸春秋・1476円)

ノアの箱舟のような感じがする。
世界は永遠の未来が約束されているわけでもない。
毎日、貴重な生物が滅びている。
私たちの未来を守るためにも
必要な事かもしれない。

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