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とことん青春!

愛は憎しみより高く、理解は怒りより高く、平和は戦争より気高い。

機動戦士ガンダムUC(ユニコーン) 1話感想 『ユニコーンの日』 (前半)

2010-04-29 16:46:44 | 機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)

人は動物とは違う
人の死は無碍であってはならん
なのに 我々大人は無益な血を流しすぎた
そればかりか 地球を食い潰し 宇宙に掃け口を求めてきた
今こそ人は 自らを律し 尊厳を取り戻さねば
100年前に紡がれた希望を活かすために

何とも渋い作品です。
派手なビジュアルとは裏腹に渋すぎます。
以前、別の記事でも書いたようにこの作品はガンダム0083の対極にある作品です。
0083で描かれた「ガンダムを飾るためのファッションとしての戦争」を否定し、徹底的に「戦争=悪」と描写しています。
CGを多用したド派手な戦闘シーンを描きながらも、その派手さすら「戦争=悪」という鉄則を表現するための手段に過ぎないという事を描写しています。
その事がこの初回の話を見ただけですぐに分かりました。
1時間と長丁場だったので前半と後半に分けて感想を書いていきたいと思います。

◆◆作品の背景◆◆
具体的な感想を書く前に、今作がなぜこのような舞台設定なのかを考えてみました。
この作品の20年程前に『機動戦士ガンダム0083』という空前の大ヒットを記録したOVA作品があるのですが、この0083では戦争を再発させたジオン残党「デラーズ・フリート」のテロ行為を「滅びゆくものの美学」として徹底的に賛美していました。
その事が最も端的に分かるのが、コロニー落着時のアクシズ艦隊指揮官の以下の発言です。

男達の魂の輝きだ

この発言に象徴されるように、デラーズ・フリートのテロ行為そのものが作中においては「絶対的な正義」として、徹頭徹尾、賛美されており、コロニー落としの犠牲となった民間人の死さえもが、彼らの「滅びの美学」によって美化されてしまっているのです。
ゆえに、コロニー落としの犠牲となった民間人の苦しむ姿などは全く描写されません。
そのようなシーンを描写すればデラーズ・フリートのテロ行為を「絶対的な正義」として表現できなくなるからです。

なぜこのような作品が大ヒットしたのかと言うと、当時の時代背景にあるのではないかと思います。
この作品が製作されたのはバブル末期の1991年で日本経済の絶頂期です。
言わば、ノリさえ良ければ共感してもらえる時代です。
デラーズ・フリートの大義が民衆の支持を全く受けていない薄っぺらなものだろうが、アナクロな信念でもって虐殺テロを起こそうが、カッコ良い台詞を連発するキャラを登場させ戦闘シーンを派手に描写するなど、ノリさえ良ければ視聴者に受け入れてもらえる時代です。

そして、時は流れて、20年後の現在。
日本経済は崩壊し、失われた10年・デフレスパイラル・オウム真理教による化学兵器テロ・阪神大震災・酒鬼薔薇聖斗事件・北朝鮮拉致事件・9.11テロ・イラク戦争・年金問題・100年に一度の不況などを経験し、日本はかつてないほどの窮地に立たされている時代です。
もはやノリとハッタリだけでは通用しない時代背景の中で製作されたのがこの『機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)』

この作品で登場するネオジオン残党の「袖付き」をジオン残党の「デラーズフリート」と被らせたり、舞台設定を一年戦争から3年後の世界である0083と同様にネオジオン抗争から3年後の世界にしたり、戦闘シーンを派手に描写したりと、0083と設定面を被らせながらも真逆のテーマを描写しようとする製作者側の強い意思が感じられる次第です。
前置きが長くなりましたが、以下、感想。

◆◆宇宙世紀の始まり◆◆
地球から宇宙に生活の場を移転した人類の記念すべき始めの一歩としての「宇宙世紀」。
その宇宙世紀0001年、地球連邦政府の首相官邸「ラプラス」において地球連邦政府のセレモニーが行われていたが、何者かのテロによってラプラスが壊滅。

そして、時は移り、宇宙世紀0096年。
カーディアスという人物と会話をするこの老人が恐らく宇宙世紀0001年にラプラスを壊滅させたテロの首謀者なのでしょう。
その事が彼の以下の台詞で分かる。

あれから直に100年が経つ
このままでは地球圏は失速する
宇宙世紀の歪みを正してくれる者達の胎動はすでに始まっている
ラプラスの箱を託すに足りる者がここにある事を願う

この発言から察するに、この老人がUC0001年にテロを行った理由は、宇宙世紀そのものが歪みのある時代になると予測していたからなのかもしれませんね。
宇宙と地球の間で対立軸が成立する事になる、と。

カーディアス
私を許すか・・・?

これで一つの世界が終わるかもしれないのです
私以外 誰があなたを許せるのです?

ラプラスの箱がどのような仕掛けになっているのかは分かりませんが、世界を破滅に追い込む強大な力を持っているとの事。
その許されない箱を作ったのがこの老人という事になるのでしょうね。

◆◆戦後の世界◆◆
一年戦争が歴史の授業になっているこの時代。
しかも、ノーマルスーツを着ての授業って斬新だと思いますね。

戦後もジオン残党を名乗る者達は幾多の戦乱を引き起こしてきた
スペースノイドの自治独立を叫ぶ彼らの根底には
ギレンザビの思想に通じる選民主義が今も根強く潜んでいる
ジオン・ダイクンの提唱したジオニズム
いわゆるニュータイプ思想は結果的に彼らのような反乱分子を生む危険な思想であったという事だ

この授業において語られているのが、デラーズ・フリートの起こした戦争である事が何気に熱いですよ。
やはり、作中ではデラーズ紛争と今作の戦争を対比させようとしていますね。
彼らの思想は危険な思想であった、と。

しかし、飾られたザクの残骸を見て大喜びする生徒の姿などはポケ戦のアルのような感じですね。
もはや戦争は過去の遺物であり、その戦争で使用された兵器はむしろ興味を掻き立てられる憧れの対象に過ぎない、と。

だが、バナージだけはザクの残骸を神妙な面持ちで見つめるのでした。

◆◆生きている実感無きバナージ◆◆
バナージってさ たまに遠くを見るような顔をするよね
多分それどこかを見ている訳ではなくて
どこにいるのかなって考えている時だと思う

お父さんの事?
いや 自分がさ
何をしてもその時を本当には過ごせていないような

自分が今この時を生きている実感が無く、何となく日々の生活をこなすだけで終わってしまっているとするバナージ。
今を生きている事を実感できないという事は、「今を生きていない事」と同義です。
ここでの「今を生きていない事」とは未来に目を向けられていない状態の事を指します。
なぜなら、未来とは今この時を懸命に生きる事によって切り開いていくものだからです。

また、今とは過去の積み重ねによって成立するものです。
よって、「今を生きていない事」とは過去の積み重ねを否定する事であり、過去への執着を捨て切れていない状態である事を意味します。
したがって、現状のバナージは過去に執着し未来に目を向けられていない状態だから、今を生きている実感が無いのだと思います。
その事によって、自らの居場所までもを見出せずにいる、と。

この会話で行方不明らしき父親の話が出てきた事を考えても、父親との生別という過去がバナージの「今を生きられない」要因になっている可能性があります。
ゆえに、バナージが「今を生きている事」を実感するためには父親との生別という過去を受け入れる必要があるのです。

そして、バナージの目前を一瞬だけ通過したユニコーンを見て、心の底に沈殿していた記憶が薄っすらと蘇ったバナージ。
この彼の記憶が鮮明になる時が過去を受け入れる上での第一ステップになるのでは、と感じる次第。
また、カーディアスがユニコーンのアナハイム実習施設前を通過してしまった事に対して

もし誰かの目に触れたとしても一瞬の幻にしか見えんだろうさ

と言っているのですが、バナージはユニコーンを幻ではなくて現実として認識している点が興味深いです。
この現実を実感し認識する能力こそが、今作で描かれるニュータイプの定義になるのではないかと妄想する訳ですが。

◆◆ユニコーン◆◆
名称はRX-0でラプラスプログラムを搭載しているとの事。
このラプラスプログラムがラプラスの箱と密接に関連してきそうな感があります。
世界を破滅に導く力を持ったラプラスの箱の機能を発動させる力を持ったMSなのではないかと。
ラプラスの箱は実体として存在するものではなくてラプラスプログラムの発動によって生まれる可能性を示す存在なのかもしれない、と勘繰ってもいます。

◆◆ニュータイプ◆◆
ニュータイプとしての素養があるバナージ。
宇宙空間に放り出されたオードリーを認識し助けるためにプチモビで激走。
ってか、宇宙空間って気圧がゼロに近いから、ノーマルスーツ無しの普段着の状態だと、体内の水分が沸騰して一瞬で死に至るだろ(汗)。
有り得ない描写ですが、物語上、バナージとオードリーを引き会わせるための演出なので、ここでツッコミを入れるのは野暮というもの。
オードリーはターミネーターだったという解釈で酌量しましょう(笑)。

ってか、オードリー・バーンって名前はオードリー・ヘプ・バーンから取ったんじゃないかな。
オードリーはあまりにも気品高すぎますしね。
貴族の娘のような印象を受けます。
しかし、護身術も心得ておりただの世間知らずのお嬢様ではなかった。

◆◆バナージの実感◆◆
急がないと取り返しのつかない事になる
今ならまだ止められる!

止められるって何を?
戦争

このシーンでバナージがアナハイム実習施設内で見たザクの残骸を回想した事が何気に熱いですよ。
歴史の授業でしか知らなかった戦争が「本物の戦争」として実感し得る存在へと変化する事になるオードリーとの会話でしたね。

◆◆オードリーの立場◆◆
帰りましょう ご自分の立場をお考えに
立場を考えればこそ ここに来たのです
無駄な事はお止め下さい
今の私達にラプラスの箱は使いこなせません
それがどのようなものだろうとフルフロンタルに利用され無用な争いの火種になるだけです
あなたなら分かるでしょ?

分かりません
私は命令に従うだけ

このマリーダとの会話でも分かるように、オードリーはネオジオン残党を揺るがすだけの強大な権限を持っている模様。
10代中盤の少女でありながら、これだけ祭り上げられる存在という事はネオジオン残党のトップの娘という線が妥当かな、と。
ってか、オードリーが子供の頃に住んでいた田舎ってアクシズの事なんじゃないかな。
10年前、彼女が子供の頃はUC0086で丁度、ネオジオンは決起する前で地球圏から遠く離れたアクシズを拠点にしており、その後、ハマーンをトップに立ててアクシズから地球圏に帰還する事になった訳ですから。
そして、自らを根無し草と称する事からもバナージと同じく確固たる居場所が無い模様。
カーディアス卿が脅威に感じる存在である事からもただものではないのでしょう。

とりあえず、長くなるので今回はここまで。
後半の感想に続く。



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