Akatsuki庵

後活(アトカツ)中!

万葉集と楽茶碗

2020年02月06日 06時26分00秒 | 美術館・博物館etc.

★楽美術館 サイト
 新春展『ことのはの宴』 ※3月8日(日)まで

前回の会期が8月末から12月までと長く、訪れたのが8月末だったので、久しぶりの楽美術館。

「ことのは」について、深く考えずに展示室へ。
まずは当代(16代)の作品に「ほー。さっそく新作が出来てるんだ~」と思って、よくよく見たら「惣吉造」だった。

16代としての作品は今年から出てくるんだろうなぁ。期待。

次に常慶の黒楽平茶碗「黒木」。
14年前、初めて楽茶碗とじっくり向き合った展覧会(※三井の『赤と黒』)でこの茶碗と出会った。
いわゆる、「利休のかたち」ではない形だったので、衝撃を受けてじっと見入ったなぁ。思い出深い一碗。

ふと見ると、解説文に万葉集の歌が。
「あおによし 奈良の山なす 黒木もち 造れる室は 座せど飽かぬかも」 聖武天皇の御歌。
長屋王の屋敷跡で詠んだ云々~と借り出したタブレットの解説の方に書いてあった。(と思う)

へぇ~。この茶碗って、そういうイメージで作られたんだぁ。知らなかったなぁ。

と感動して、次の茶碗に移るとそこでも道入の黒楽「早梅」に万葉集の歌を添えた解説が。

ん? あれ? 要するに今回はお茶碗の銘から、そこにハマる万葉集の歌を探し出して解説に当てたようだ。
(万葉集をめくって、そこに出てくる単語と所蔵の茶碗の銘が一致するものを選んだのかもしれない)

学芸員さん、えらいっ!

令和のはじめに企画する感覚、すてき!

と、感動したものの、この先、すべての和歌を筆記するのはたいへんだぁ。

わー、めんどくさぁ。どーしよう!

と思ったところで、「撮影すればいいじゃん」と思いつく。

昨年あたりから、スマホでの撮影がOKになった楽美術館。
その寛大な判断に感謝しつつ、解説文と茶碗が一緒に映り込むようにして一つ一つ撮らせてもらった。

ちなみに、その写真をblogに掲載することは致しません。あしからず。

バランスが「イイネ」だったのは左入の「横雲」
「横雲の 空ゆ引き越し 遠みこそ 目言離るらめ 絶ゆと隔てや」の歌と茶碗の銅部分にうねる線のイメージがぴったり合う。

得入の黒楽「常磐」 得入といえば赤楽茶碗が印象に残っているので、黒楽は新鮮な気がした。
「八千種の 花はうつろふ 常磐なる 松のさ枝を 我は結はな」という大伴家持の歌。←「令和」の大伴旅人の息子。
大伴氏がすっかり中央から追いやられて、一族として衰退していくのを嘆いた悲しい歌。
得入は楽家を襲名後、若くして世を去った。その薄命と相通じるような。

わかりやすいのは旦入の黒楽「不二」。
堂々とした富士山の絵に合う歌は山部赤人の「田子の浦ゆ うち出でて見れば ま白にそ 富士の高嶺に 雪は降りける」。

そんな感じで楽しんだ。

中二階の茶碗以外の作品群の中では慶入の茶箱のセット一式がすごかった。

直入さんの盃や徳利が展示されていて、「珍しいな」と思った。
いずれも個人蔵。茶碗の合間に作ってはお友達に差し上げたのかしら~。なんて、お人柄を想像してしまったり。

16代が襲名して、楽美術館はもっと親しみやすい美術館になることを期待させる、楽しい展覧会だった。

★楽美術館バックナンバーリスト
 2019年8月 『樂歴代 魂を映じて Mirrors into the Soul-Raku Tea Bowls through the Ages-』
 2019年7月『樂焼って何だろう? 茶碗 肌 ぬくもり』
 2019年3月『富士をみる』
 2019年1月 『変わる−時代・元号・歳・代−』
 2018年10月 開館40周年 秋季特別展『光悦考』
 2018年5月 『開館40周年記念特別展 能と樂茶碗 幽玄と侘び ? 形の奥にある美意識』
 2018年1月 『開館40周年 樂美術館 新春セレクション』
 2017年11月 『名碗 ロシアを旅した樂 樂美術館版 エルミタージュ、プーシキン美術館帰国展』 
 2017年7月 『楽って何だろう』
 2017年4月 『茶碗の結ぶ「縁」』
 2017年1月 『茶のために生まれた「樂」という、うつわ展。』
 2016年10月 『三代 樂道入・ノンカウ展』
 2016年6月 『樂歴代~長次郎と14人の吉左衞門~』
 2016年1月 『樂歴代 優しいすがた』
 2015年10月 『本阿弥光悦 光悦ふり・様式と展開』 
 2015年3月 『樂歴代 装飾への荷担・抑制と解放』
 2014年12月 特別展・宗入生誕350年 パート2『初源への視線 樂家五代宗入と三代道入、四代一入、九代了入、十五代吉左衞門』
 2014年9月 『元禄を駆け抜けた雁金屋の従兄弟ども 「樂家五代宗入と尾形乾山」』
 2014年7月 『親子で見る展覧会「シリーズ 樂ってなんだろう」―手捏ねと轆轤制作―』
 2014年5月 『定本 樂歴代』
 2014年2月 『樂歴代 干支・動物たちの新春 日常の風物、いろいろな物語、干支、吉祥の動物たち』
 2013年10月 『利休/少庵/元伯/千家の時代 と長谷川等伯「松林架橋図襖」修復完成記念特別展示』
 2013年3月 『楽歴代名品展 楽家歴代が手本としてきた伝来の茶碗』
 2013年1月 『楽歴代 春節会』(第二、第三展示室)
 2013年1月 『楽歴代 春節会』(第一展示室)
 2012年10月『工芸 肌をめでる。樂茶碗の陶肌 茶の湯釜の鉄肌 一閑・宗哲の漆肌』 
 2012年8月 『季節を感じよう!! 夏祭りと茶の湯』
 2012年3月 『樂歴代の名品 秘蔵の長次郎を見る』
 2012年2月 『京の粋 樂家初春のよそおい』
 2011年10月 『樂と永楽そして仁清 京の陶家 「侘と雅」の系譜』
 2011年8月 「樂焼のルーツは、なんと! カラフルな中国の焼き物」
 2011年5月 「樂美術館コレクション-樂歴代とその周縁」
 2011年2月 「特別展樂吉左衞門還暦記念� 個展「天問」以後今日まで」

 2010年11月 『楽吉左衛門還暦記念展』
 2010年5月 春季特別展『楽歴代展』
 2009年11月 重要文化財新指定記念特別展『長次郎二彩獅子像+勢揃い京の焼き物 侘と雅』
 2009年8月 「『楽焼のはじまり、そして今』親子で見る展覧会/シリーズ「楽ってなんだろう」
 2009年5月 春期特別展『樂歴代』 
 2008年10月 開館30周年記念特別展『長谷川等伯・雲谷等益 山水花鳥図襖&樂美術館 吉左衞門セレクション』
 2008年8月「楽茶碗を焼く」
 2008年5月「楽家の系譜」
 2008年3月「動物の意匠」
 2007年11月「元伯宗旦」

 2017年4月 『茶碗の中の宇宙 樂家一子相伝の芸術』 東京国立近代美術館
 2017年1月 『茶碗の中の宇宙 樂家一子相伝の芸術』 京都国立近代美術館
 2016年7月 『吉左衞門X 樂吉左衞門 樂篤人 樂雅臣  ― 初めての、そして最後の親子展 ―』 佐川美術館
 2010年11月 特別展『千家十職 楽家の茶碗-極められた赤と黒の美-』 表千家北山会館
 2006年9月 「赤と黒の芸術 楽茶碗」(三井記念美術館)


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