★楽美術館 サイト
新春展 楽歴代展『変わる − 時代・元号・歳・代 −』 ※3月10日(日)まで
代替わりを意識したラインナップだった。
興味深かったのは、同じ作者の代を継ぐ前と継いだ後の展示が幾つかあったこと。
10代・旦入さんは宗二郎時代(12歳)の時の赤楽。満11歳の時の初削りだって。
そう思ってみると、確かにカワイイ。
旦入さんといえば、ツートン(掻き分け茶碗)や潮干狩り(白楽茶碗の見込みに貝殻が置いてある)など個性的な茶碗が思い浮かぶだけに
「これが、歳を重ねて、あーなるのかぁ」と思った。
12代・弘入さん
惣次郎時代の赤楽茶碗はすっごく綺麗な力作。本当に、頑張って丁寧に造ったなぁという印象。
代を継いだ跡の白楽茶碗はとてもやわらか。時は明治。時代の流れに翻弄されつつも、柔軟に乗り切っていくような姿勢が感じられた。
13代・惺入(せいにゅう)さん
黒楽茶碗「八千代」。伝統的な釉薬を破った洋画っぽい釉薬。
大変な苦労しながら明治から昭和へと時代を繋いた方~という印象が強い。
14代・覚入さん
惣吉時代に造られたという赤楽茶碗。解説文に「出征前に造った」とあった。どんな思いを心に秘めて造ったのか、はかりしれないほどの整った茶碗。
出征中に先代の惺入(せいにゅう)さんは没し、復員して後を継がれた。
黒楽「林鐘」は深い深い黒。1959年製作。
思えば、覚入さんは1980年に亡くなられ、その翌年に生まれたのが今度16代を継ぐ篤人さん。(ちなみに、同じ年に当代が15代を襲名)
ウーム。
代々となれば、9代・了入さん、10代・旦入さん、11代・慶入さんの父子孫合作による式三番叟。
了入さん喜寿(77歳)を祝っての競演。 慶入さんはまだ惣吉時代(たしか、19歳ぐらいだったんじゃないかと~)
老練かつおしゃれな了入さんの白楽茶碗、これぞ楽家の!という感じの旦入さんの黒楽茶碗、そして初々しい惣吉時代の慶入さんの赤楽茶碗。
思えば、3代が同時にお茶碗を造れるなんて、本当におめでたいね。
そういえば、4代・一入さんは樵之絵茶碗「山里」だった。
父の道入さんを若い時に亡くしたせいか、お父さんの影響はあまり受けず、むしろ長次郎に回帰する作風になった。
(利休没後100年のブームで長次郎に回帰する作風になったのかと思っていたけれど、そういう背景もあったのね)
8代・得入さんは20歳前後の赤楽茶碗。この茶碗自体は何度も拝見しているけれど、中2階の第二展示室には緑釉のツボツボ透手焙りもあって、
ただ、弱々しいお茶碗だけが残っているわけではなかった!と感心した。
第二展示室は真ん中の香合の展示がおもしろい。
動物とか干支にかけていることがよくあって、今回もそうなんだけど、戌と亥に特化。
長入さんの戌香合と亥香合、旦入さんの戌香合と亥香合、双方のケースを見比べながら鑑賞するとなお面白い。
身と蓋の作り方に特徴がある。
長入さんは身を動物の胴体を斜め切りしいてる。
旦入さんは胴体を大きく四つ足を短くしていて、胴体と足の付け根あたりを水平に切っている。
惺入(せいにゅう)さんの布袋香炉と寿老人香炉、いずれも仁阿弥道八っぽい?
当代が1995年に制作した亥之絵赤楽茶碗がフツーぽくて。
まぁ、千家の初釜に納めたものだから、フツーで当たり前なんだけど。
2階の第三展示室に上がると、やっとここで長次郎。黒楽筒茶碗「杵ヲレ」。久しぶり。
3代・道入さんの赤楽筒茶碗「山人」。明るい朱釉薬でUの字に長細い。若い時の作品らしい。
5代・宗入さんは黒楽茶碗「梅衣」。久しぶり。
また長入さん。制作活動の期間が長いから、年代ごとにいろいろ残っている。
二百之内の1つ赤楽茶碗「姥捨」と古希七十之内の1つ赤楽茶碗。
やはり、年齢によって、作風の変化があるなぁ~
当代の惣吉時代の赤楽茶碗はかわいくて、やさしい。
隣には襲名後の1993年に制作した焼貫黒楽筒茶碗「天阿」。
たしか、還暦展の折り、表千家の北山会館で同時期に開かれていた楽家展でインタビュー映像で
この辺りの変化のエピソードを聴いたっけ~なんて、思い出していた。
あとは表千家の家元からの消息。
ラストは次期16代・篤人さんの黒楽茶碗。「惣吉造」とある。
ご当代のアバンギャルドな作風にかなり影響を受けているような~
実は、第一展示室の初っ端も篤人さんの赤楽茶碗だった。
入ってすぐの四方からぐるっと鑑賞できるところ。
いつも、長次郎茶碗が鎮座しいている特等席だ。
そこに篤人さんの作品が展示してあったから、「えっ!」と思った。
一巡して、〆が篤人さんの黒楽茶碗。
なんか、いいねぇ。
インストグラムでも展示されている茶碗の公開をされているし。
館内タブレットの貸し出しとか、解説文も以前と少し変わってきたり。
楽家も変わっていくんだなぁ~ということが、とても感じられた。
タブレットも以前は重くて、ちょっと不便だったんだけど、
軽量タイプにリニューアルしていた!
強いて言えば、解説文がもうちっと詳しいとウレシイ。
次回は何かな~
楽しみ、楽しみ。
★楽美術館バックナンバーリスト
2018年10月 開館40周年 秋季特別展『光悦考』
2018年5月 『開館40周年記念特別展 能と樂茶碗 幽玄と侘び ? 形の奥にある美意識』
2018年1月 『開館40周年 樂美術館 新春セレクション』
2017年11月 『名碗 ロシアを旅した樂 樂美術館版 エルミタージュ、プーシキン美術館帰国展』
2017年7月 『楽って何だろう』
2017年4月 『茶碗の結ぶ「縁」』
2017年1月 『茶のために生まれた「樂」という、うつわ展。』
2016年10月 『三代 樂道入・ノンカウ展』
2016年6月 『樂歴代~長次郎と14人の吉左衞門~』
2016年1月 『樂歴代 優しいすがた』
2015年10月 『本阿弥光悦 光悦ふり・様式と展開』
2015年3月 『樂歴代 装飾への荷担・抑制と解放』
2014年12月 特別展・宗入生誕350年 パート2『初源への視線 樂家五代宗入と三代道入、四代一入、九代了入、十五代吉左衞門』
2014年9月 『元禄を駆け抜けた雁金屋の従兄弟ども 「樂家五代宗入と尾形乾山」』
2014年7月 『親子で見る展覧会「シリーズ 樂ってなんだろう」―手捏ねと轆轤制作―』
2014年5月 『定本 樂歴代』
2014年2月 『樂歴代 干支・動物たちの新春 日常の風物、いろいろな物語、干支、吉祥の動物たち』
2013年10月 『利休/少庵/元伯/千家の時代 と長谷川等伯「松林架橋図襖」修復完成記念特別展示』
2013年3月 『楽歴代名品展 楽家歴代が手本としてきた伝来の茶碗』
2013年1月 『楽歴代 春節会』(第二、第三展示室)
2013年1月 『楽歴代 春節会』(第一展示室)
2012年10月『工芸 肌をめでる。樂茶碗の陶肌 茶の湯釜の鉄肌 一閑・宗哲の漆肌』
2012年8月 『季節を感じよう!! 夏祭りと茶の湯』
2012年3月 『樂歴代の名品 秘蔵の長次郎を見る』
2012年2月 『京の粋 樂家初春のよそおい』
2011年10月 『樂と永楽そして仁清 京の陶家 「侘と雅」の系譜』
2011年8月 「樂焼のルーツは、なんと! カラフルな中国の焼き物」
2011年5月 「樂美術館コレクション-樂歴代とその周縁」
2011年2月 「特別展樂吉左衞門還暦記念� 個展「天問」以後今日まで」
2010年11月 『楽吉左衛門還暦記念展』
2010年5月 春季特別展『楽歴代展』
2009年11月 重要文化財新指定記念特別展『長次郎二彩獅子像+勢揃い京の焼き物 侘と雅』
2009年8月 「『楽焼のはじまり、そして今』親子で見る展覧会/シリーズ「楽ってなんだろう」
2009年5月 春期特別展『樂歴代』
2008年10月 開館30周年記念特別展『長谷川等伯・雲谷等益 山水花鳥図襖&樂美術館 吉左衞門セレクション』
2008年8月「楽茶碗を焼く」
2008年5月「楽家の系譜」
2008年3月「動物の意匠」
2007年11月「元伯宗旦」
2017年4月 『茶碗の中の宇宙 樂家一子相伝の芸術』 東京国立近代美術館
2017年1月 『茶碗の中の宇宙 樂家一子相伝の芸術』 京都国立近代美術館
2016年7月 『吉左衞門X 樂吉左衞門 樂篤人 樂雅臣 ― 初めての、そして最後の親子展 ―』 佐川美術館
2010年11月 特別展『千家十職 楽家の茶碗-極められた赤と黒の美-』 表千家北山会館
2006年9月 「赤と黒の芸術 楽茶碗」(三井記念美術館)
新春展 楽歴代展『変わる − 時代・元号・歳・代 −』 ※3月10日(日)まで
代替わりを意識したラインナップだった。
興味深かったのは、同じ作者の代を継ぐ前と継いだ後の展示が幾つかあったこと。
10代・旦入さんは宗二郎時代(12歳)の時の赤楽。満11歳の時の初削りだって。
そう思ってみると、確かにカワイイ。
旦入さんといえば、ツートン(掻き分け茶碗)や潮干狩り(白楽茶碗の見込みに貝殻が置いてある)など個性的な茶碗が思い浮かぶだけに
「これが、歳を重ねて、あーなるのかぁ」と思った。
12代・弘入さん
惣次郎時代の赤楽茶碗はすっごく綺麗な力作。本当に、頑張って丁寧に造ったなぁという印象。
代を継いだ跡の白楽茶碗はとてもやわらか。時は明治。時代の流れに翻弄されつつも、柔軟に乗り切っていくような姿勢が感じられた。
13代・惺入(せいにゅう)さん
黒楽茶碗「八千代」。伝統的な釉薬を破った洋画っぽい釉薬。
大変な苦労しながら明治から昭和へと時代を繋いた方~という印象が強い。
14代・覚入さん
惣吉時代に造られたという赤楽茶碗。解説文に「出征前に造った」とあった。どんな思いを心に秘めて造ったのか、はかりしれないほどの整った茶碗。
出征中に先代の惺入(せいにゅう)さんは没し、復員して後を継がれた。
黒楽「林鐘」は深い深い黒。1959年製作。
思えば、覚入さんは1980年に亡くなられ、その翌年に生まれたのが今度16代を継ぐ篤人さん。(ちなみに、同じ年に当代が15代を襲名)
ウーム。
代々となれば、9代・了入さん、10代・旦入さん、11代・慶入さんの父子孫合作による式三番叟。
了入さん喜寿(77歳)を祝っての競演。 慶入さんはまだ惣吉時代(たしか、19歳ぐらいだったんじゃないかと~)
老練かつおしゃれな了入さんの白楽茶碗、これぞ楽家の!という感じの旦入さんの黒楽茶碗、そして初々しい惣吉時代の慶入さんの赤楽茶碗。
思えば、3代が同時にお茶碗を造れるなんて、本当におめでたいね。
そういえば、4代・一入さんは樵之絵茶碗「山里」だった。
父の道入さんを若い時に亡くしたせいか、お父さんの影響はあまり受けず、むしろ長次郎に回帰する作風になった。
(利休没後100年のブームで長次郎に回帰する作風になったのかと思っていたけれど、そういう背景もあったのね)
8代・得入さんは20歳前後の赤楽茶碗。この茶碗自体は何度も拝見しているけれど、中2階の第二展示室には緑釉のツボツボ透手焙りもあって、
ただ、弱々しいお茶碗だけが残っているわけではなかった!と感心した。
第二展示室は真ん中の香合の展示がおもしろい。
動物とか干支にかけていることがよくあって、今回もそうなんだけど、戌と亥に特化。
長入さんの戌香合と亥香合、旦入さんの戌香合と亥香合、双方のケースを見比べながら鑑賞するとなお面白い。
身と蓋の作り方に特徴がある。
長入さんは身を動物の胴体を斜め切りしいてる。
旦入さんは胴体を大きく四つ足を短くしていて、胴体と足の付け根あたりを水平に切っている。
惺入(せいにゅう)さんの布袋香炉と寿老人香炉、いずれも仁阿弥道八っぽい?
当代が1995年に制作した亥之絵赤楽茶碗がフツーぽくて。
まぁ、千家の初釜に納めたものだから、フツーで当たり前なんだけど。
2階の第三展示室に上がると、やっとここで長次郎。黒楽筒茶碗「杵ヲレ」。久しぶり。
3代・道入さんの赤楽筒茶碗「山人」。明るい朱釉薬でUの字に長細い。若い時の作品らしい。
5代・宗入さんは黒楽茶碗「梅衣」。久しぶり。
また長入さん。制作活動の期間が長いから、年代ごとにいろいろ残っている。
二百之内の1つ赤楽茶碗「姥捨」と古希七十之内の1つ赤楽茶碗。
やはり、年齢によって、作風の変化があるなぁ~
当代の惣吉時代の赤楽茶碗はかわいくて、やさしい。
隣には襲名後の1993年に制作した焼貫黒楽筒茶碗「天阿」。
たしか、還暦展の折り、表千家の北山会館で同時期に開かれていた楽家展でインタビュー映像で
この辺りの変化のエピソードを聴いたっけ~なんて、思い出していた。
あとは表千家の家元からの消息。
ラストは次期16代・篤人さんの黒楽茶碗。「惣吉造」とある。
ご当代のアバンギャルドな作風にかなり影響を受けているような~
実は、第一展示室の初っ端も篤人さんの赤楽茶碗だった。
入ってすぐの四方からぐるっと鑑賞できるところ。
いつも、長次郎茶碗が鎮座しいている特等席だ。
そこに篤人さんの作品が展示してあったから、「えっ!」と思った。
一巡して、〆が篤人さんの黒楽茶碗。
なんか、いいねぇ。
インストグラムでも展示されている茶碗の公開をされているし。
館内タブレットの貸し出しとか、解説文も以前と少し変わってきたり。
楽家も変わっていくんだなぁ~ということが、とても感じられた。
タブレットも以前は重くて、ちょっと不便だったんだけど、
軽量タイプにリニューアルしていた!
強いて言えば、解説文がもうちっと詳しいとウレシイ。
次回は何かな~
楽しみ、楽しみ。
★楽美術館バックナンバーリスト
2018年10月 開館40周年 秋季特別展『光悦考』
2018年5月 『開館40周年記念特別展 能と樂茶碗 幽玄と侘び ? 形の奥にある美意識』
2018年1月 『開館40周年 樂美術館 新春セレクション』
2017年11月 『名碗 ロシアを旅した樂 樂美術館版 エルミタージュ、プーシキン美術館帰国展』
2017年7月 『楽って何だろう』
2017年4月 『茶碗の結ぶ「縁」』
2017年1月 『茶のために生まれた「樂」という、うつわ展。』
2016年10月 『三代 樂道入・ノンカウ展』
2016年6月 『樂歴代~長次郎と14人の吉左衞門~』
2016年1月 『樂歴代 優しいすがた』
2015年10月 『本阿弥光悦 光悦ふり・様式と展開』
2015年3月 『樂歴代 装飾への荷担・抑制と解放』
2014年12月 特別展・宗入生誕350年 パート2『初源への視線 樂家五代宗入と三代道入、四代一入、九代了入、十五代吉左衞門』
2014年9月 『元禄を駆け抜けた雁金屋の従兄弟ども 「樂家五代宗入と尾形乾山」』
2014年7月 『親子で見る展覧会「シリーズ 樂ってなんだろう」―手捏ねと轆轤制作―』
2014年5月 『定本 樂歴代』
2014年2月 『樂歴代 干支・動物たちの新春 日常の風物、いろいろな物語、干支、吉祥の動物たち』
2013年10月 『利休/少庵/元伯/千家の時代 と長谷川等伯「松林架橋図襖」修復完成記念特別展示』
2013年3月 『楽歴代名品展 楽家歴代が手本としてきた伝来の茶碗』
2013年1月 『楽歴代 春節会』(第二、第三展示室)
2013年1月 『楽歴代 春節会』(第一展示室)
2012年10月『工芸 肌をめでる。樂茶碗の陶肌 茶の湯釜の鉄肌 一閑・宗哲の漆肌』
2012年8月 『季節を感じよう!! 夏祭りと茶の湯』
2012年3月 『樂歴代の名品 秘蔵の長次郎を見る』
2012年2月 『京の粋 樂家初春のよそおい』
2011年10月 『樂と永楽そして仁清 京の陶家 「侘と雅」の系譜』
2011年8月 「樂焼のルーツは、なんと! カラフルな中国の焼き物」
2011年5月 「樂美術館コレクション-樂歴代とその周縁」
2011年2月 「特別展樂吉左衞門還暦記念� 個展「天問」以後今日まで」
2010年11月 『楽吉左衛門還暦記念展』
2010年5月 春季特別展『楽歴代展』
2009年11月 重要文化財新指定記念特別展『長次郎二彩獅子像+勢揃い京の焼き物 侘と雅』
2009年8月 「『楽焼のはじまり、そして今』親子で見る展覧会/シリーズ「楽ってなんだろう」
2009年5月 春期特別展『樂歴代』
2008年10月 開館30周年記念特別展『長谷川等伯・雲谷等益 山水花鳥図襖&樂美術館 吉左衞門セレクション』
2008年8月「楽茶碗を焼く」
2008年5月「楽家の系譜」
2008年3月「動物の意匠」
2007年11月「元伯宗旦」
2017年4月 『茶碗の中の宇宙 樂家一子相伝の芸術』 東京国立近代美術館
2017年1月 『茶碗の中の宇宙 樂家一子相伝の芸術』 京都国立近代美術館
2016年7月 『吉左衞門X 樂吉左衞門 樂篤人 樂雅臣 ― 初めての、そして最後の親子展 ―』 佐川美術館
2010年11月 特別展『千家十職 楽家の茶碗-極められた赤と黒の美-』 表千家北山会館
2006年9月 「赤と黒の芸術 楽茶碗」(三井記念美術館)
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