Akatsuki庵

後活(アトカツ)中!

光悦考

2018年10月26日 06時05分14秒 | 美術館・博物館etc.
★楽美術館 サイト
 開館40周年 秋季特別展『光悦考』 ※9月2日(日)~12月9日(日)

今年2月、ご当代による光悦研究が1冊の本として出版された。
光悦考
樂 吉左衞門
淡交社


これに因んだ展覧会のようだ。
本阿弥光悦(1558-1637)を考える上で、その生きた時代は外せない。

つまり、安土桃山時代。
始まりは信長が上洛した1568年からとも、室町時代が滅んだ1573年からとも言われるが、おしまいは豊臣家が滅んだ1615年まで。

楽家はこの間、長次郎から常慶、道入の時代。

同時に織部茶碗が安土桃山時代に生まれ滅んでいった。

というわけで第一展示室は光悦が茶碗を造り出すまでの時代と背景~という感じのラインナップ。

長次郎の黒楽茶碗「萬代」は個人蔵ゆえ、めったにお目にかかれない。
これ単独だと感想って、とくにないんだけど、近くにあった瀬戸黒茶碗がよりごっつく見え、織部筒茶碗も黒く見えた。

その隣にあった団子之絵織部茶碗は赤くて、これはこれで赤楽を意識したのかなぁ。。。という感じ。

そして、光悦の身近にいた常慶の黒楽茶碗「黒木」。これは歪みが加えてあって、常慶も織部を意識していたのかなぁ。
道入は計算してお茶碗のデザインを考えたのかな。黒楽筆洗形茶碗「花橘」を見ていると、より造形っぽさが感じられた。

道入は釉薬も試行錯誤していた。黒楽平茶碗「燕児」では釉薬は未完成。
同じ黒楽茶碗「残雪」で真っ白なあわっとした蛇蝎釉が強い印象を発していた。

その中で、たぶん同じ土だろうなぁと察せられる光悦茶碗が登場。

黒楽茶碗「朝霧」。全体的に厚みがあるように見え、タブレットで見る高台は丸くて、フツーの高台に見える。

黒楽茶碗「水翁」は親指?で前後をついて小さな歪みを生じさせている。さっそく芸術っぽくなっている?

かと思えば、黒楽茶碗「東」は楽家の、というか道入茶碗と似ているようにも見えた。

第一展示室は光悦の初期の頃の茶碗かしらん~と思いつつ、第二展示室へ。

ここは光悦の影響を受けた楽家の人々~という感じかしら。

左入の赤楽茶碗「桃里」。以前見た時はそんなに意識しなかったけれど、光悦を片隅に置くと
形が光悦茶碗と似てる~とも思える。

雨雲写黒楽茶碗というのもあった。

了入の光悦形黒楽茶碗に赤楽桃形茶碗、緋緘写赤楽茶碗(←本歌見てないから何とも言えない)。

黒楽茶碗「村雲」は展示期間から外れていて、再会は叶わず。
代わりの当代の焼貫茶碗をスルーして、逆側へ。

昨年から今年にかけて黒楽茶碗「青山」によく会うなぁ。(5月に金沢で「此花」と並んでいるのを見た)

光悦の飴釉楽茶碗「園城」、正面の縦線がすごい。同じく飴釉楽茶碗の「何以生」も同じ高台なんだって。
(どちらも個人蔵)

飴釉楽茶碗「立峯」(追銘「五月雨」)はゆるい三角形でおもしろい。

道入の黒楽四方馬上盃形茶碗「スソ野」もユニーク。単独ではたぶん立っていられなそう。

光悦の書状も興味深い。
筆跡が光悦らしさがあったかどうかは忘れてしまったけど、江戸の知人宛てに「常慶と道入が江戸に下るので、よろしく」
という内容らしい。顔の広さと楽親子を大事に思っているのがわかる。

そう思いながら、第三展示室へ。

光悦の赤楽筒茶碗「志くれ」、口造が凸凹ぽい。個人蔵なので、一期一会の出会いになりそう。

久しぶりに赤楽茶碗「乙御前」を拝見した。
個人蔵だからね。ちょうど10年前の「森川如春庵の世界」で見て以来だろうか。→こちら

白楽茶碗の「冠雪」は楽美術館所蔵なので、何度か拝見している。益田鈍翁も所持したという。
これまでは真打のように最後で拝見する~という感じだったけれど、
今回は幾つか光悦茶碗を拝見した後での再会だったので、「これが光悦の一つの到達点だったんだなぁ」と思った。

思えば、国宝「不二山」と同じような形だなぁ。
形は似ていても、土が志野っぽくて、季節に例えると秋と冬くらいの違いがある。

相国寺所蔵の加賀光悦も展示期間がずれて拝見できず。残念。

代わりに飴釉楽茶碗「紙屋」が拝見できた。

形もぷっくりしていて変わってるし、何よりも釉薬がねー。
飴釉薬でも黒と飴がまだらになっていてヒョウ柄のよう。奇抜すぎて、光悦茶碗の中でも変わり種?のような気がする。
めり込んだ高台は「乙御前」や「熟柿」に通じるものもあり、光悦らしいところなんだけど。

そして、書状が2通。
どちらも業務連絡。「ちゃわん四つほど(の土を所望)」「此ちゃわんのくすり(を所望)」といずれも依頼する内容。

鷹峯から出したのでしょうかね。

のれんの字を書くくらいだから、相当に親密だったんだろうなぁ。

最後はご当代、吉左衛門さんの焼貫黒楽茶碗「猫割り手」(1985年制作)

解説を読んで、思わず吹き出してしまった。

楽家の作業場で野良猫と飼い犬が大げんかを始めたそうな。
それで、猫が茶碗を割ってしまった!

楽さん、真っ青。でも、夫人が銀漆で継いだところ、前もより味わいがあるいい茶碗になったとか。

それで、今では来客をもてなす際の一服として重宝されているそうな。

確かに、銀の継ぎが大胆で楽しいお茶碗。

ご当代の中では「梨花」に継いで好きになりそう。

最近、楽美術館での滞在が長くなっている。以前は30分くらいだったのに、最近は1時間コースだ。

解説が興味深いことを書いてくれるので、ついつい読み込んじゃうのと
最近ではタブレットで展示品をただ見るだけではわからない、別角度の画像とかも紹介しているので
そちらと見比べてたり。

その上でメモをとっているので、どうしても時間がかかってしまう。

まぁ、それも楽しみではあるけれど。

お手洗いのお花もホトトギスとか秋の茶花がきれい。


玄関脇で謎の物体発見!


★余談
楽美術館を訪れる際、ほぼ必ず通る一条通り。
古来、いろんな時代に歴史に名を遺す人物にかかわりがあった場所だ。

以前は、小松帯刀の屋敷跡とか藤原道綱母の邸宅があったという石碑があった。

が、最近の研究で小松の屋敷はもっと北、お花畑の辺りだったと判明、石碑は撤去された。
そして、気づけば道綱母の石碑もなくなっていて、その場所に別の看板と石碑が建っていた。


歴史も忙しいナ。

★楽美術館バックナンバーリスト
 2018年5月 『開館40周年記念特別展 能と樂茶碗 幽玄と侘び ? 形の奥にある美意識』
 2018年1月 『開館40周年 樂美術館 新春セレクション』
 2017年11月 『名碗 ロシアを旅した樂 樂美術館版 エルミタージュ、プーシキン美術館帰国展』 
 2017年7月 『楽って何だろう』
 2017年4月 『茶碗の結ぶ「縁」』
 2017年1月 『茶のために生まれた「樂」という、うつわ展。』
 2016年10月 『三代 樂道入・ノンカウ展』
 2016年6月 『樂歴代~長次郎と14人の吉左衞門~』
 2016年1月 『樂歴代 優しいすがた』
 2015年10月 『本阿弥光悦 光悦ふり・様式と展開』 
 2015年3月 『樂歴代 装飾への荷担・抑制と解放』
 2014年12月 特別展・宗入生誕350年 パート2『初源への視線 樂家五代宗入と三代道入、四代一入、九代了入、十五代吉左衞門』
 2014年9月 『元禄を駆け抜けた雁金屋の従兄弟ども 「樂家五代宗入と尾形乾山」』
 2014年7月 『親子で見る展覧会「シリーズ 樂ってなんだろう」―手捏ねと轆轤制作―』
 2014年5月 『定本 樂歴代』
 2014年2月 『樂歴代 干支・動物たちの新春 日常の風物、いろいろな物語、干支、吉祥の動物たち』
 2013年10月 『利休/少庵/元伯/千家の時代 と長谷川等伯「松林架橋図襖」修復完成記念特別展示』
 2013年3月 『楽歴代名品展 楽家歴代が手本としてきた伝来の茶碗』
 2013年1月 『楽歴代 春節会』(第二、第三展示室)
 2013年1月 『楽歴代 春節会』(第一展示室)
 2012年10月『工芸 肌をめでる。樂茶碗の陶肌 茶の湯釜の鉄肌 一閑・宗哲の漆肌』 
 2012年8月 『季節を感じよう!! 夏祭りと茶の湯』
 2012年3月 『樂歴代の名品 秘蔵の長次郎を見る』
 2012年2月 『京の粋 樂家初春のよそおい』
 2011年10月 『樂と永楽そして仁清 京の陶家 「侘と雅」の系譜』
 2011年8月 「樂焼のルーツは、なんと! カラフルな中国の焼き物」
 2011年5月 「樂美術館コレクション-樂歴代とその周縁」
 2011年2月 「特別展樂吉左衞門還暦記念� 個展「天問」以後今日まで」

 2010年11月 『楽吉左衛門還暦記念展』
 2010年5月 春季特別展『楽歴代展』
 2009年11月 重要文化財新指定記念特別展『長次郎二彩獅子像+勢揃い京の焼き物 侘と雅』
 2009年8月 「『楽焼のはじまり、そして今』親子で見る展覧会/シリーズ「楽ってなんだろう」
 2009年5月 春期特別展『樂歴代』 
 2008年10月 開館30周年記念特別展『長谷川等伯・雲谷等益 山水花鳥図襖&樂美術館 吉左衞門セレクション』
 2008年8月「楽茶碗を焼く」
 2008年5月「楽家の系譜」
 2008年3月「動物の意匠」
 2007年11月「元伯宗旦」

 2017年4月 『茶碗の中の宇宙 樂家一子相伝の芸術』 東京国立近代美術館
 2017年1月 『茶碗の中の宇宙 樂家一子相伝の芸術』 京都国立近代美術館
 2016年7月 『吉左衞門X 樂吉左衞門 樂篤人 樂雅臣  ― 初めての、そして最後の親子展 ―』 佐川美術館
 2010年11月 特別展『千家十職 楽家の茶碗-極められた赤と黒の美-』 表千家北山会館
 2006年9月 「赤と黒の芸術 楽茶碗」(三井記念美術館)

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