あなたの知らないところに
いろいろな人生がある あなたの人生が かけがえのないように あなたの知らない人生も また かけがえがない 人を愛するということは 知らない人生を 知るということだ 『ひとりぼっちの動物園』灰谷健次郎著より本の表紙の扉にこう書いてあります。
私は時々、この本を手に取り読み返します。特に子どもたちの前で語る時などは。
それは、「私は、なぜ語るのか」という原点に返ることができる一冊だからです。
この本の中には、あることで、学校に行かなくなったけんちゃんという少年が、動物園の飼育員、亀山さんとの触れ合いを通して、さびしい心から抜け出し、新しい明るい気持ちで一歩を踏み出すまでのことが書かれています。
この亀山さんのけんちゃんに対する、温かい眼差し、優しさ、その言葉が、わたしの胸にぐっときます。そして考えさせられます。わたし達大人はこの目線で子どもたちをみていかなきゃなぁと。
私がこの道を進もうと決心した一つにある出来事があります。それは、1997年の、世の中を震撼させた「神戸連続児童殺傷事件」です。このことをきっかけに、学生の頃からの、絵本が好きだから、近くの図書館や児童館で子どもたちに読み聞かせをという気持ちから「子どもたちの心を守る。命を守る。」という意識に変わりました。
このときの灰谷さんの行動もその思いをゆるぎないものにしました。
灰谷さんは、この事件の加害少年の写真を公開した新潮社に抗議し、そこでの執筆を拒否したのです。そして、新潮社にあるすべての著作の版権を引き揚げたのです。
灰谷さんは、最後まで、子どもたちへの眼差しは優しかった。
私たちにはみんな何かを生み出す力があります。子どもたちの心の芽はもちろん子どもたち自身で育てることができます。でも、できることなら、こどもたちに、ひとりぼっちの心を持たせたくないですね。どこであっても、子どもたちが安心して過ごせる場所を作ってあげたいです。心豊かな成長を願いながら、犯罪や事件や暴力から絶対守らなければならないと思います。
自分の住んでいる半径500メートルくらいはパトロールするつもりの目でいたいです。
こどもたちには、たっぷりいい時間を過ごしてほしい。
大地を踏みしめる時間をたくさんあげたい。
いい空気をすわせてあげたい。
思う存分、ゆっくりといろんなことを想像してほしい。
その時間があれば、未来はもっと明るくなる・・・と思う。