イオンもクレウサも、パレーシアステスとして役割を演じました。しかし、2人の役割は同じではない、とのことです。
c. イオンのパレーシアステスの役割
まずはイオンです。イオンのパレーシアステスの役割は、この劇の初めで、イオンとクスートゥスの間でやり取りする、非常に長い場面で明らかです。クスートゥスとクレウサが神殿に願掛けに来た時に、クスートゥスが最初に至聖所に入ったのは、彼が夫であり男だったからです。クスートゥスはアポロに尋ねます。このアポロ神は次のように語ります、「あなたがここを出たときに、最初に出会う人が、あなたの息子になることでしょう」と。もちろん、クスートゥスが最初に出会った人は、イオンです。イオンはアポロ神に仕えるものとして、いつでも神殿の入り口にいるからです。私どもがここで注意しなくてはならないのは、ギリシャ語の表現です。それは、フランス語版や英語版には文字通りには翻訳しきれません。ギリシャ語の言葉はこうです。
παιδ' εμου πεφυηευαι
πεφυηευαιという言葉を使うことは、イオンが「生まれつき」クスートゥスの息子であると言われていることを示します。
不思議なことに、イオンは、アポロ神の息子にもかかわらず、クスートゥスの生まれつきのこどもであると、言われます。