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エリクソンの小部屋

エリクソンの著作の私訳を載せたいと思います。また、心理学やカウンセリングをベースに、社会や世相なども話題にします。

イオンのパレーシアステスの役割

2014-02-06 06:13:13 | フーコーのパレーシア

 

 イオンもクレウサも、パレーシアステスとして役割を演じました。しかし、2人の役割は同じではない、とのことです。

 

 

 

 

 

 c. イオンのパレーシアステスの役割

 まずはイオンです。イオンのパレーシアステスの役割は、この劇の初めで、イオンとクスートゥスの間でやり取りする、非常に長い場面で明らかです。クスートゥスとクレウサが神殿に願掛けに来た時に、クスートゥスが最初に至聖所に入ったのは、彼が夫であり男だったからです。クスートゥスはアポロに尋ねます。このアポロ神は次のように語ります、「あなたがここを出たときに、最初に出会う人が、あなたの息子になることでしょう」と。もちろん、クスートゥスが最初に出会った人は、イオンです。イオンはアポロ神に仕えるものとして、いつでも神殿の入り口にいるからです。私どもがここで注意しなくてはならないのは、ギリシャ語の表現です。それは、フランス語版や英語版には文字通りには翻訳しきれません。ギリシャ語の言葉はこうです。

 παιδ'  εμου  πεφυηευαι

πεφυηευαιという言葉を使うことは、イオンが「生まれつき」クスートゥスの息子であると言われていることを示します。

 

 

 

 

 

 不思議なことに、イオンは、アポロ神の息子にもかかわらず、クスートゥスの生まれつきのこどもであると、言われます。

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幼いころの記憶の 都合のよい修正 その賛美と拒絶

2014-02-06 05:47:14 | エリクソンの発達臨床心理

 

 ふつうは隠しておきたいだろう、極貧と薄幸の経験を、ルターは大事にしたのでした。

 

 

 

 

 

 断固として申し上げても、言い過ぎにならないのは、ルターは、公人として、マルティンという子ども、自由になりたくてもがく若者、に関するあまり芳しくない報告者である、ということです。つまり、事実の報告者としては芳しくありません。しかし、自分が子どものころを自伝の中で説明することは、どんな場合でも、ある項目を押さえつけて、他の項目を特に選ぶ、という選択する際に働く、無意識のモットーに通じる秘訣が必要です。精神分析がいち早く気付いたのは、あらゆる記憶は、数々のふるいにかけられなくちゃいけない、ということでした。また、いくつもふるいにかけられるので、幼いころの記憶は、靄の中にあって、形が歪み、色が修正されている、ということでした。言葉が発達するときに、一つのふるいができます。学校に上がるときに(エディプス期の後で)、もう一つのふるいができます。こういったふるいも、青年期に自分を確かにする道ができる期間に含めておかなくてはいけません。こういった自分を確かにする道は、一人の個人が歩んできた特定の要素を大いに褒め称えるのに、その他の部分を拒絶するという結果になるものです。

 

 

 

 

 

 青年期にできる、自分を確かにする道は、幼いころの記憶の中で賛美できるところは大いに賛美して自分を確かにする道に役立てるけれども、そうでない部分は、その道を作るために、むしろ捨て去られ、忘れ去られる運命にあるのが、普通です。ルターの場合も、その意味では、極貧や薄幸などという、通常忌み嫌われる過去は、抑圧され、捨て去られ、忘れられるのが普通なのでした。しかし、ルターという人物は、そうしなかった点が、実に偉大なのですね。

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