忙中閑話

四季の移ろい、花鳥風月を楽しみつつ
趣味はミニチュア木工、電子工作、旅行など

アベノミクスへの不安

2013-03-13 | 随想
 このところ方々で道路工事をやっている。だいたい毎年この時期は年度末となるため工事が多いものだが、今年はやたら目に付く。昨日も隣町のショッピングモールまでの15kmほどの間で3箇所も工事をやっていた。

 安倍内閣の景気浮上策-いわゆる”アベノミクス”で13兆円補正予算が追加されほとんどが公共投資に向けられるという。今日出くわした道路工事は県道なので県の予算だろうが国の予算が回っていることは間違いない。補正予算の財源は赤字国債である。その結果、国の債務-借金-は初めて1000兆円を超えることになるそうだ。実に税収の30年分に当たり、0歳児を含めた国民一人当たり830万円の借金とになる。

 公共事業は再生産のない、いうならただの浪費である。高速道や橋を作り、狭い道路を拡張する、歩道を広げるといったことはくらしが便利にはなるが付加価値を生まない。本来、十分に歳入があっての予算の中でやることだ。電化製品のエコポイント、車のエコ減税、住宅減税などなどいつまで一時的な景気対策を続けるのだろう。

 国の債務が1000兆円と膨大になってもそれはほとんどが国民からの借金であって、海外からの債務が多かったギリシャのように国が破綻するようなことはまだないという。そして国民の総貯蓄額は国の債務よりまだはるかに多いのでまだ赤字国債は発行できるという。

 だけどこの話は一見まともにきこえるがだがやはりおかしい。
どこか以前落語で聞いた話の内容に似ている。

 熊さんと八っつぁんが一斗樽の酒を仕入れて祭りで売って一儲けしようとした。が、二人で祭りの会場まで運ぶ途中でどちらかが少し呑みたくなり、手元に小銭があるから少し呑ませてくれという。そうすると、もう一方がその受け取った小銭で呑ませてくれという。かくて小銭が熊さん、八っつぁんの間を行き来する度に樽の酒は減ってゆき、最後にはその小銭と空になった樽だけが残る―という話である。

 さしずめ一斗樽の酒は我々の預金だろうか。国債という形となって汲みだされ、いつの間にかあるはずの預金がなくなっている。
性質(たち)が悪いのは樽酒なら残量が判るがこの場合は預金総額が我々には判らないこと。自分の預金額(負債額)は判るが、他人の預金額(負債額)などは判るはずがない。
かくて政府や金融関係者は我々には見えない「国民の預金総額」なるものを持ち出してまだ大丈夫という。

 理屈では自分が遣いもしない預金が減ることはない。しかし預金というものは所詮数字であって実体はない。いうならば日本銀行券というただの紙切れにしか過ぎない。
現在、物価上昇率年2%目標といっており、これが毎年達成されれば10年で20%も物価が上昇する。預金の実質価値は現在の80%まで下がることになる。20年なら約物価上昇50%で預金の実質価値は67%、約2/3まで下がる。それにつれ国の借金も実質目減りをすることにはなるが・・・。
過去の大戦後のドイツ、そして最近ではブラジルの激しいインフレ。日本でも戦後激しい貨幣価値の下落を経験している。

そもそも目標の物価上昇率2%というのもおかしい。物価が上がると景気が上がり給料が上がる、という単純図式だが、これも「風吹いて・・・桶屋が儲かる」に見える。

現在の状態は「負のスパイラル」状態といわれる。物が売れないから給料が下がる、給料が下がり購買力が落ちるのでますます物が売れなくなり価格が下がる、すると給料が更に下がって物価が下がる---というスパイラル図式。確かにこれは一理ある。

 では物価があがると給料が上がるかというとそんなことはない。順序が逆なのだ。給料が上がって物価が上がるのが筋。事実、高度成長のときがそうだった。毎年ベア(ベースアップ)が繰り返され、同じ比率で物価も上昇した。バブルがはじけてベアが止まると物価上昇もなくなり、負のスパイラルに陥った。

 給料を上げるため物価を上げようと言うのはまやかしでしかない。そもそも日本の賃金が高いために国内メーカーの国際競争力が無くなり、その結果生産拠点が海外にシフトしたのではなかったか。これから先給料が上がるとますます競争力はなくなってしまうことになる。

 円安になったから輸出メーカーの採算性があがる、株価が上昇したので景気が回復するというのもおかしい。いまやこれらはマネーゲームの世界であり、経済指標ではなくなってきている。世界中で物流量の何倍ものマネーが動いているから、政治家のちょっとしたひと言や世界情勢のなんでもない動きが憶測を呼びそれだけで上下する。株価や為替は長期のスパンなら経済動向を反映するのだが、今のような状態は一時的なものでしかない。

 いいものをより安く作るというのでは日本はもはや勝負できない。日本でしか作れないもの、技術を含めて、そんなものが早く出現することを切に願う。
 

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