宇宙航空MBAブログ

Aerospace MBA(フランス・トゥールーズ)が考える宇宙航空マネジメントの進化系ブログ

バチカン航空

2007年08月29日 | 宇宙航空産業

今日面白いニュースを聞いた。バチカン航空に関するニュースだ。

バチカンといえば、カトリックの総本山であって、ローマ教皇がいる場所として有名だ。イタリアのローマ市内にあるもののイタリア国内ではなく、一つの国家として独立した存在が認められている。歩いて国内の一周旅行ができる、とても不思議な場所だ。

そのバチカンに航空会社が誕生したらしい。それがバチカン航空だ。といっても定期運行の航空会社ではなく、チャーター機を運行する航空会社らしい。つまり、旅行会社や企業などが1フライトまるごと航空会社からサービスを買い上げて、その個々の座席を個人客に販売する航空ビジネスだ。

バチカン航空の特徴は、そのフライト路線の選択にある。キリスト教の聖地に的を絞ってフライトを提供しているのだ。具体的には、前にもこのブログで紹介した「奇跡の水」で有名なフランスのルールドや、巡礼路の最終目的地として有名なスペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラなど、キリスト教徒なら誰でも一生に一度は訪れてみたいと思う都市に的を絞ってビジネスを展開している。

しかも、このバチカン航空はLow Cost Airline(ローコスト航空会社)のビジネスモデルを採用している。すなわち、航空チケット自体は驚くほど安いのだけど、可能な限りサービスを標準化してオペレーションコストを削減するとともに、1フライトに多くの乗客を乗せることで利益を確保する仕組みだ。イギリスのイージー・ジェットやアイルランドのライアン・エアーなどがこのモデルを採用している。

バチカン航空の経営ビジョンは、できる限り低価格で聖地へのフライトを提供することで、一人でも多くのキリスト教徒に巡礼の夢を叶えてあげることらしい。組織の目的と公衆の利益が一致した、とても素晴らしいビジョンだと思う。このビジョンなら誰も反対することができないし、ひょっとしたら本当は少しくらいチケットの値段が高くても、この航空会社を利用する人が多くなるかもしれない。

それに、もしキリスト教の熱心な信者であれば、他の航空会社にチケット代を支払うくらいならば、お布施の意味もこめてこの航空会社を利用する人だっているだろう。ヨーロッパにおけるキリスト教の人口を考えると、このバチカン航空の潜在的な顧客層は馬鹿にはできない。すごい数になると思う。

日本ではどうだろうか。高野山航空とか本願寺航空とかを作ったら、信者の方はこの航空会社を好んで利用するだろうか。安全面の懸念が多少あるにせよ、「高野山航空で行く熊野詣の旅」とかいったら、僕は思わず「おっ」と飛びつく人がいそうな気がする。

それに、まもなく団塊世代の大量退職を迎える時期だ。お金と時間を大量にもてあましたアクティブシニア層向けの企画として、高野山航空はイケる気がする。

久々に日本に誕生する新規航空会社、「高野山航空」。ビジネスモデルを考えて、ぜひビジネスプランに落とし込んでみたい。

(写真はトゥールにあるChenonceau城へ向かう道で撮った一枚)


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4 コメント

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需要があるでしょうね (美砂)
2007-08-29 22:21:09
高野山航空、伊勢航空などは・・・私達の計り知れない数の信仰をする方々に利用されることでしょう。
日本では、今団塊の世代の定年に向けて、色々な企画が展開しています。“お遍路”など一種のブームです。人は心や魂に目を向けていることが、自分の心の声を聞くことが出来るとして、ブームなのです。高野山航空などが、出来た暁には・・・白い衣装の方々が枚挙し、ツアーは日本だけではなく、スペインのサンチャゴなどをハイキング代わりに巡礼するのも近い日です。どうぞ事業展開に日本のお金持ちを対象にしてください。年金に期待が出来ない日本。みんな、持っているお金の使い道を考えています、大型ハイビジョンテレビを購入する以外に。
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お遍路さん (AerospaceMBA)
2007-08-30 07:19:23
>美砂 さん
コメントありがとうございます。
そうか、お遍路さんがありましたね。日本中から旅人が集まってくるし、季節を問わず一定のトラフィックがあるような気がします。問題は近くに適当な空港がるかどうかですねえ。お寺の近くに空港。。。あるかなあ~。

でも、いっそのこと空港に着陸せずに、飛行機に乗ったまま四国88箇所を巡るという企画のほうが、案外めんどくさがり屋のシニア層にウケるかもしれません。あ、もっと言えば、人工衛星で宇宙から撮影した画像で88箇所巡りができるかもしれませんね。「宇宙から世界遺産を見よう!」みたいな企画が昔ありました(今もある?)から、シニア層の宇宙ファンを開拓する企画としてアリかもしれません。

こうやってコミュニケーションの中から新しいアイデアが生まれる瞬間が僕は大好きです。Merci!
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バチカンすごいですね (valvane)
2007-08-31 00:38:20
世界最小国でありながら、独自の航空会社を保有するなんて。しかもいきなり、長距離国際線、それも特にドル箱路線ってわけでもないところに参入って、なかなか出来ませんよね。カトリック教徒でなくても使えるなら、私も聖地巡礼は好きなので、利用してみたいです。
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バチカン (AerospaceMBA)
2007-08-31 05:16:49
>Valvane さん
コメントありがとうございます。
カトリックの資本力が背景にあるのは間違いないですね。彼らは銀行家としても一流ですから。
おそらく、利用に際して「踏み絵」はないと思うので、バチカン航空を利用することは可能だと思いますよ。機内でのミサとか聖歌隊の合唱サービスとかあったら面白いですね。結婚式もできるかもしれません。
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