宇宙航空MBAブログ

Aerospace MBA(フランス・トゥールーズ)が考える宇宙航空マネジメントの進化系ブログ

アウトソーシング戦略

2006年11月22日 | MBA
 
エアバス社は航空機製造メーカーだが、航空機の製造に必要な全ての部品を自前で製造しているわけではない。機体に用いる鋼材は鋼材メーカーから買うだろうし、タイヤはタイヤメーカーなどから買っているはずだ。

すなわち、どの企業もビジネスを遂行する上で、どの部分は自社で責任を持って遂行し、どの部分は他社に任せるかの意思決定を必ずしているのだ。この他社に任せる部分を企業のOutsourcing(アウトソーシング)戦略という。

このアウトソーシングという概念が注目を浴びたのは、1980年代に米コダック社が自社のデータベースサーバーを一括してIBM社に委託したことに始まる。それまでは自社で責任をもって管理するのが当たり前と思われていたデータベースの管理を外部の専門業者に委ねることによって、コダック社は実に大幅なコスト削減に成功したのだ。

それから数十年、今日ではアウトソーシングは単なるコスト削減の手段のみならず、マーケットの中で競争優位を確立するための重要な戦略的手段となっている。戦略的アウトソーシングなくして、企業はもう勝ち残れない時代といってもいい。

今日授業でインド出身のKali教授が紹介してくれた面白いアウトソーシングモデルを紹介したい。健康診断などで撮るX線写真に関する話だ。

アメリカではX線写真を撮った場合、医師がその写真についてレポート(所見)を書いて患者にフィードバックすることがあるのだそうだ。しかし、このレポートを書くという作業、高級取りのアメリカ人医師にやらせると莫大なコストがかかる。

そこでITが発達した現代においては、アメリカで撮影したアメリカ人のX線写真をインターネット経由でインドまで送り、時間単価の安いインドの医師に英語で所見を書いてもらい、再度アメリカまで送りかえしてもらうという、なんとも手間のかかるオペレーションを実際にやっているのだそうだ。

僕なりに分析した結果、このアウトソーシングモデルを可能にしたのは主に以下の5つの要因だと思う。

 ①レポートを書くという、Face-to-faceのコンタクトを必要としないサービスであったこと
 ②インターネットという瞬時にして国境を越える強力なツールが出現したこと
 ③インド人医師の医療レベルが高いこと
 ④インド人医師が概ね英語に堪能であること
 ⑤インド人医師の労働コストがアメリカ人医師に比べて格段に安いこと

ビジネス環境もテクノロジーも国際情勢も、全てが日々変化し続けている。最新の情報に注意を払って何が今この瞬間のベストプラクティスなのかを常に考え続けていないと、すぐに時代に取り残されてしまうのだ。
 


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