宇宙航空MBAブログ

Aerospace MBA(フランス・トゥールーズ)が考える宇宙航空マネジメントの進化系ブログ

マネージャーが伝えたいこと

2006年09月06日 | MBA
 
マネージャーが指示を出すときに明確にすべき5項目は昨日のブログで紹介した。しかし、マネージャーには、認識しておかねばならないもう一つの大切なことがあるらしい。それは、“どんなに努力しても伝えたいことの全ては伝わらない”ということを、心の中にはっきりと認識しておくことだ。

分かりやすくモデル化して説明すると、伝えたいと思う内容の全てを100とした場合、自分がそれを頭の中で描き、実際に話し、相手がそれを聞き、理解し、どの程度記憶に留めるかは、大体以下のとおりになるのだそうだ。

 1.what I want to say(言いたいこと):100%
 2.what I say(言ったこと):90%
 3.he (she) hears(聞こえたこと):80%
 4.he (she) listens to(聞いたこと):70%
 5.he (she) understands(理解したこと):60%
 6.he (she) retains(覚えていること):50%

もちろん、個人差があるだろうから、マネージャーのコミュニケーションスキルが高ければそれぞれの数値は100%に近づくし、逆に低ければ50%を下回ることだってある。しかし、自分が“伝えたいこと”と相手が“覚えてくれること”の間にこれだけの差があるということを、最初に心に留めてからコミュニケーションをスタートさせるべきなのだ。

この認識さえ始めにしっかり持っておけば、意識的に“Feedback”や“Reflection”といったテクニックを駆使して、聞き手の理解の度合いを意図的に100%に近づけることだってできる。その逆は上記で書いた数値のとおりだ。

これまで僕は仕事の関係で日本全国で数多くのプレゼンテーションをしてきた。もちろん、聞き手が100%理解してくれているとまでは思ってなかった(当然100%を目指して最大限の努力はした)けど、少なくとも8割くらいはみんな僕の話を記憶して、それなりに納得して家路についてくれているものとばかり思っていた。

それが平均して50%程度とは!どうやら僕は楽観的すぎたようだ。この数値に愕然としてしまった。

この数値を限りなく100%に近づけるため、宇宙航空MBAプログラムのあらゆる機会を使って、僕のコミュニケーションを極限まで磨き上げようと決心した一日でした。

(写真は部屋から見たトゥールーズの空)


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6 コメント

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・・・痛感。 (かなこん)
2006-09-06 13:09:39
教育という現場でも同じことが言えます。人に教えるということは30人の生徒に60通りくらいのメソッドを使って教えなければなりません。それができる先生は少ないですが、それを目指して頑張っている友人を応援しています。 頑張れ、日本の教育!
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教育 (AerospaceMBA)
2006-09-06 20:45:15
>かなこん さん

コメントありがとうございます。生徒一人ひとりに合ったぴたりのメソッドで知識を教授できる教育者なんて、日本中探してもなかなかいないと思いますよ。みんな自分が正しいと思うから何かを人に教えようとするのであって、メソッドに関しても自分が正しい(もしくは一番良い)と思うものを選びがちですよね。

最近は教師養成のためだけの大学院や学校(杉並区など)もできてきたので、日本の教育もよい方向に向かっていくかもしれませんね。
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向上心。 (かなこん)
2006-09-07 02:24:04
お返事ありがとうございます。



「教師」になっても「向上心」の高い人は学術的なことではなく、人との接し方を学ぼうと色々なことに挑戦しています。そこに希望を感じます。



 自分が学ぶ立場であることを忘れてしまった時点で、向上心は格段と下がります。なので、ぜひ教師という立場の方には学ぶ立場の心情を忘れないでほしいものです。



 
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コミュニケーション力の限界について (Sheep)
2006-09-07 13:43:56
私は、コミュニケーションについて専門的に勉強した事が無かったので、今回のテーマは時に興味深いものでした。



日本でも、こちらでもこのような特別な認識の上に業務を遂行するという経験はありませんでした。



その限界を知った上で、新たな戦略を立てる事はとても効果的なことでしょうね。私も、参考にさせていただきたいと思います。



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Unknown ()
2006-09-07 14:22:03
社会の中で一番小さな単位は家族なので、

私は家族が社会の縮図であると思っています。そして人は子供を持つと必ず「教者する立場」になります。

だから50%、またはそれ以下しか覚えていてもらえない、というのは、とても納得してしまいました。

子供を育てることも生徒を教えることも、そして部下を育てることも、すべて「人育て」ですものね。

自覚して臨んでみたいと思います。
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Family (AerospaceMBA)
2006-09-07 17:40:18
>かなこん さん

再びコメントありがとうございます。

「向上心」、とても大切なことですね。日本では人の“現在価値”ではなく、“将来価値”に対して評価を下し、採用や投資を行う傾向にあるので、「向上心」というのは少なくとも日本社会では重要な判断基準になると僕は思っています。



>Sheep さん

コメントありがとうございます。

どこの国のことわざだったか忘れましたが、「本当の勇者は臆病者だ」という言葉があります。“怖さ”とは何かを知ってこそ、本当の意味で勇気を持って何かに挑めるのだと思います。

限界を知っているからこそあえて100%に近づこうと努力する、そんな精神性が人間にはあるのかもしれませんね。



>ひ さん

コメントありがとうございます。

家族、子供、、、僕には思い浮かばなかった観点です。このブログを開設した意義は、こういう双方向での相互触発にもあると考えているので、とても参考になりました。

まだ子供を育てる立場にはないけれど、将来に備えて僕も自覚しておきたいと思います。

(「ってゆうか、その前に結婚相手を見つけろっ!」とツッこまれそうですが。。。)
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