最近のブログでは僕のATR社での勤務を反映してか、フランスだけではなくイタリアに関連した内容の記事も多い。会社自体はフランスにあってフランス人のほうが多いと思うのだけど、僕のボスはほとんどがイタリア人だということもあって、僕はどちらかというとイタリア人のマネジメント観を叩き込まれている気がする。日本とは全く異なる異質な考え方に直接触れることができて、イタリア人独特のセンスに感銘を受けっぱなしの毎日だ。
彼らが極めてCreative(創造的)に仕事を進めていることは前にも書いたのだけど、そのCreativeなスタイルが効果に結びつく要素として、僕はATR社内のある重要な特徴に気付いた。それは、計画されたミーティングが極めて少なく、かつ、突発的なミーティングが非常に多いのだ。
計画されたミーティングというのは、部門内の定例会議のほか、あらかじめ何月何日の何時からどこに集合して何について話し合うかが決まっているような会議のことをいう。いわば、自分の手帳に予定として書き込まれているミーティングのことだ。
それに対して突発的なミーティングというのは、全くスケジュールに入っていなかったにも拘らず、急に社内の誰かから呼び出しを受け、指定された部屋で特定のテーマに的を絞って意見を出し合うスタイルのミーティングだ。僕もアジア太平洋地域に関するテーマが上がっているときには、急に呼び出されることがある。
こういう突発的にスタートするミーティングというのは、当然僕としても資料も何も用意していないのだけど、その分過去の事例や業界のトレンドに縛られることなく、想像力の翼をいっぱいに伸ばして自由に発言することができる。その結果、出てくるアイデアも自然とDifferentiation(差別化)の方向にベクトルが働き、今まで思いつかなかったような斬新な戦略が頭に浮かんでくるのだ。
もちろん、計画された定例会議などに臨むときはしっかりと準備をして、どんな質問にも答えられるようにしておくのが当たり前だ。しかし、それでは過去の自分の常識のレベルを決して超えることができない。もう一ランク上の新しい考えに辿り着きたかったら、決して準備をしてはいけないのだ。自分の潜在的な才能と異質なものに触れることで発生する新たなChemistry(ケミストリー)を信じ、誰にも何にも縛られることなく、思いきって自由な発想の世界へと飛び込んでいく必要がある。
僕がヨーロッパ宇宙航空の中心地Toulouse(トゥールーズ)にやって来た目的の一つは、これまでにない宇宙航空の新しい用い方を発見し、日本の宇宙航空ビジネスに新しいドライバーをもたらすことにあった。そのための鍵が、今少しづつ見えてきている気がする。