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宇宙航空MBAブログ

Aerospace MBA(フランス・トゥールーズ)が考える宇宙航空マネジメントの進化系ブログ

決め手は9月

2007年07月14日 | インターンシップ
 
インターン先のATR(Avion de Transport Regional)社で僕が担当しているのは、主に新市場開拓のためのマーケット分析とビジネス戦略立案だ。その中で何よりも先に行っているのが、既存マーケットの分析である。

ある地域を調査するにあたっては、その地域内にどんなプレーヤーが存在して、それぞれどのような活動をしていて、さらに、将来戦略をどう考えているかをしっかりと見極めなければならない。マーケティングにおいて最も重要なのは、決してある1点だけを見つめないことで、大きな流れの中で今後の潮流を読み取ることが大事だと僕は考えている。

さらに僕が挑んでいる航空機ビジネスにおいては、一定周期で繰り返されるビジネスのトレンドを十分に考慮することが重要だと言われている。この業界はほぼ7年周期で上がったり下がったりするサイクルがあると言われていて、それは過去のデータからもしっかり裏付けられている。たとえ今何十機、何百機と航空機が飛ぶように売れたとしても、数年後には必ずダウンサイクルがやってくる。そのあたりをしっかり読み切らないと、少なくともこのビジネスにおいて長期的な成功はありえない。

また、航空機ビジネスの顧客である航空輸送ビジネスも、極めて周期性のあるビジネスだと言われている。数年おきのサイクルに加え、1年の中でも季節変動の影響を大きく受ける。そのため、各航空会社は全く同じルートを、同じスケジュールで、同じ航空機で一年間ずっと運航するのではなく、季節ごとに大きな変化をつけたオペレーションで挑んでくる。

たとえ僕がある地域の航空会社ひとつを採り上げて、その航空会社がどんな風に航空機をオペレーションしているかを分析したとしても、それはこの一時点におけるその航空会社のビジネスの一形態でしかない。その航空会社のビジネスの戦略の本質を掴むためには、さらに長期間に渡って彼らが実際にどう動いていたかを見なければならない。

しかし、一年間に膨大な数のフライトがあることを考えれば、全てのフライトをこと細かく調査するのは極めて時間のかかる、非効率なやり方だ。少なくともMBAで学んだアプローチの仕方からは程遠い。今求められている正確さのレベルを見極め、最小のエネルギーで最大の成果を生み出すような手段をとるべきなのだ。

そこで僕は、一年の中で最も典型的な1つの月だけを調査して、それを単純に12倍して、年間を通したマーケットの動きだと想定しようと考えた。今は高い位置からマーケット全体を俯瞰すべき段階なので、正確さはそれほど重要な要素ではない。時間をあまりかけることなく、マーケット全体の大きな絵がつかめればそれでいい。問題は、どの月が一番典型的な月といえるのかということだ。

これはもう経験者に聞くしかない。自分で考えても時間がかかるだけで、最も正しい答えにたどり着ける可能性は低い。僕はためらうことなく、ATR社の皆さんに質問することにした。

すると、驚くことに一瞬にして全員から同じ答えが返ってきた。答えは、「9月」。航空ビジネスでは、夏のバカンスシーズンが終わり、冬に向けた準備が始まる前の9月こそが、1年間の中で最も典型的なオペレーションが行われる季節なのだそうだ。もちろん、国や地域によって多少の違いはあるのだろうけれど、それでも9月を見れば一年間を通した大体の平均が見えてくるらしい。実際、プロであるATR社のマーケティング担当者も、ビジネス開発の初期段階ではこの手法を使って分析を行うとのこと。

あっさりと正解が分かったので、僕は膨大なデータの中から9月のデータだけを抽出して、今必死になってマーケットの分析をしている。今週末にこの分析をやり終えて、来週からは次なるステップに移りたい。

(写真はインドのAir Deccan航空のATR機)
 
 

A380に乗る(その2)

2007年07月07日 | インターンシップ
 
僕がラッキーなことに見学させてもらえたのは、試験機として使っているA380だ。ちょうどこの時期に試験がたて混んでおらず、かつ、昼休み明けのリラックスモードな時間帯だったことも幸いして、特別に中を見せてもらうことができた。インターンにはちゃんと本物の航空機を見せてやり、しっかり航空ビジネスの勉強をさせてあげようというエアバス社の親心だったに違いない。Merci!

さて、A380に実際に乗ってみての感想は、まず一階部分からいうと、思った以上に横幅がとても広くてゆったりとしている。座席が設置されていなかったから余計にそう感じたのかもしれないけど、通常飛行機に乗った時に感じるような圧迫感は全くなかった。これなら長時間の国際フライトでもリラックスして過ごせるはずだ。「空飛ぶホテル」と表現される理由が一瞬で分かった。

そして、2階へと続く階段がまた広い。少なくとも、僕がパリで泊まったホテルの階段なんかより、はるかに広くて立派だ。劇場ほどの豪華さはないものの、これなら乗客が遠慮せず内部を行き来することができると思う。導線の確保はバッチリだ。それに、機内を歩き回るくらいの余裕があれば、エコノミー症候群だってもう問題ではなくなるはずだ。

さらに階段を登って2階へと行くと、こちらは1階と比べてやや天井が低く感じられる。1階が広すぎるから余計にそう感じたのかもしれない。しかし、この2階部分はファーストクラスやビジネスクラスとして贅沢にスペースを使うとのことなので、大した問題にはならないと思う。むしろ、フルフラットシートでベットのように横になって寝ることができるこれらのクラスでは、寝ている時間のほうが長いのだろうから、天井の高さなど必要ないのかもしれない。

僕が乗せてもらったのは試験機なので、実際には内部には全く座席や設備がなかったのだけど、顧客の元にデリバリーされる本物のA380なら写真のようなファーストクラスが設置されることもある。ここまでくると、もうホテルのシングル部屋と言ってもいいと僕は思う。

ただし、1泊100万円近くするということをお忘れなく。ファーストクラスは高いのです。

(写真はA380のファーストクラス。エアバス社が提案するゆとりのあるフライト。)
 

A380に乗る(その1)

2007年07月06日 | インターンシップ
 
仕事でATR社の隣にあるAirbus(エアバス)社に行ったときの話。

ここトゥールーズには、エアバス社の本社や最終組立工場のほか、デザインセンターやテストフライトセンターといった、航空機開発に関する主要施設が全て集中している。敷地内はとてつもなく広く、その一部はそのままトゥールーズ空港の滑走路へとつながっているほどだ。一人で歩いたら僕は間違いなく迷子になる。そのくらい広い。

僕は一仕事終えて同じ部の人と一緒にATR社に帰ろうということになったのだけど、「せっかくなので飛行機でも観ていくか?」と誘われ、そのまま歩いて完成したばかりの航空機が並べられている駐機場へと向かうことになった。駐機場にはATR社のターボプロップ機からエアバス社のジェット機まで、大小様々の航空機が一列に並べられている。

何十機と並ぶ航空機の中でもひときわ目立つのが、エアバス社が開発した超大型総2階建旅客機A380だ。とにかくデカイ!「こいのぼり」シリーズでいうなら、間違いなくA380はお父さん役の黒いヤツだ。手間に見えるATR社のターボプロップ機など、いつも一番下におまけでつけられている「子供こいのぼり」にしか見えない。そのくらい大きなA380が何機も横一列に並んでいるのだから、その壮観さといったらもうたとえようがない。

僕が「うわ~、すごいなあ~!」という顔をして見ていたら、一緒に歩いていたATR社の同僚が、「NOBU、乗ってみたいか?」と一言。え、そんなまさか、完成したてのA380に乗せてもらえるの?しかも、今勤務時間中だし、そんなことしていいの?何より、僕は正社員でもなんでもないし、しかも、エアバス社じゃなくてATR社のインターンなんだけど、本当に大丈夫?

冗談だろうと疑う僕を一人駐機場に残し、彼はエアバス社の事務所へと向かって行った。30秒後、彼は僕のところに笑顔で戻ってきた。なんと、試験機として使っているA380なら見学してもいいとのこと。超ラッキー!頑張ってATR社で仕事を見つけて本当に良かった。航空機メーカーのインターン最高!

A380に実際に乗ってみての感想は、明日のブログで。お楽しみに!

(写真はA380のエンジン。エンジン1個のデカさもハンパじゃない。RR社のHPより。)
 

初ミーティング

2007年07月05日 | インターンシップ
 
今日は朝9時30分からマーケティング部門のミーティングが開催された。前日にFomica副社長から出席するように言われていた僕は、時間に決して遅れないようにと、大渋滞の可能性を考えて念のために朝8時00分に家を出発した。

ATR社までは車を運転して約20分の距離だ。僕の住むIASキャンパスとATR社とは、トゥールーズ市内中心部を挟んでまったく正反対の方角にある。毎日無料の高速道路を使って出勤するのだけど、トゥールーズ最大の企業エアバス社の本社も近くにあるためか、毎朝決まって渋滞に巻き込まれる。

別に何時何分が出勤時間ですとキッチリ決まっているわけではないし、遅く来ても誰も何も言わないようなので(今のところ)、普段はリラックスして気の向くままの時間帯に出勤している。このあたりの緩さがラテン系の会社の良さだ。クリエイティブな発想を刺激するためには、やはりこうでなくちゃいけないと僕は思う。

それほど大きな渋滞に巻き込まれることもなく無事ATR社に到着した僕は、さっそく自分のオフィスへと向かい、パソコンのスイッチを入れた。インターンなので文句は言えないのだけど、貸与されているパソコンはお世辞にも「最先端」とは言い難い。大きさで言えば、大学時代に僕が始めて購入したパソコンと同じくらいの大きさだし、使っているOSはなんとWindows2000だ。ワードもエクセルも、全てオフィス2000となっている。毎日、とても懐かしい画面とアイコンと向かい合って仕事をしているのだ。

ミーティング開始時刻の5分前になったので、僕は自分の部屋を出て会議室へと向かった。きっと僕が一番乗りだろうなあ~と思ってドアを開けたら、なんと会議室の中にはすでにFomica副社長がいた。一番トップが一番最初に来る。日本ではあまり見かけない光景だ。

さらに驚くことに、Fomica副社長自らパソコンとプロジェクターのセッティングをしている。一瞬目を疑ってしまったのだけど、僕は思わず「自分がやります」と申し出てしまった。日本の組織で働いてきた者の性かもしれないが、こういう雑務は下の者がやるものだという固定観念が僕の中にはあった。

Fomica副社長は、これは自分がこれから行うプレゼンの準備だから自分でやると言って、僕の申し出を断った。インターンだからコキ使おうとせず、自分の責務に関することは基本的に自分で全て行う。もちろん、人によるのかもしれないけど、僕はFomica副社長のそういう姿勢に感激した。よし、僕も将来そうなろう。

皆が集まったところで会議は約10分遅れでスタートしたのだけど、ここで衝撃的な事実がFomica副社長から発表された。今日の会議、全てフランス語で行うというのだ。メンバーの一人が僕のことを心配して「NOBU(僕)が参加できないんじゃないですか?」と聞いたところ、Fomica副社長は「大丈夫!NOBUは私とフランス語で面接したから。」と回答。

反論するスキも与えてもらえず、会議はまず僕の自己紹介からスタートすることになった。どう考えても僕のフランス語力の過大評価なのだけど、この空気の中で今さら「そんなのムリです」とは死んでも言えない。もうこれは覚悟を決めて、フランス語を話せるふりをして全てをやり通すしかない。え~い、もうどうにでもなれ!

その後会議は1時間30分に渡って続いた。途中でイタリア語も混じってきたので、理解できたのは全体の50%程度でしかない。本当のビジネスで言えば、当然そんなレベルは失格だ。会議終了後に一番若いマネージャーのOlibieに英語で確認しまくり、なんとか今回はフォローすることができた。

まだ時間はある。なんとかしよう。絶対になんとかしよう。

(写真は僕の机の上に置かれているPC。「何年もの?」とツッコミたい。) 
 

Simple is best

2007年07月04日 | インターンシップ
 
インターン先での僕のスーパーバイザーの一人が、マーケティング部門を統括するFormica副社長だ。先週このFomica副社長から僕に課された課題について、今日僕なりの分析結果をレポートにまとめて報告した。

インターンの僕は比較的自由に自分の時間を使えるのだけど、副社長であるFomica氏はやはり超多忙を極める。まずは彼とのミーティングのアポイントをとるだけで大変だった。

マーケティング部門は全部でたった8人しかいない。すなわち、この8名で全世界の航空機マーケットを見ている。日本の感覚ではとても考えられないけど、一人一人が担当するのは国ではなく、大陸なのだ。地球全体を8人でカバーする。僕の目からみると、この事実だけでも最初は驚きだった。一つの国、一つの言語だけに精通しているだけじゃ間違いなく通用しないビジネスだ。

Fomica副社長から出された課題は、過去数年分のデータに基づいて、ある地域の今後の航空機の潜在需要を予測しろというもの。将来のトレンドを大胆に予測するとはいっても、実は需要予測は詳細な情報分析と綿密な計算を必要とする、とても神経を使う作業だ。今回はFomica副社長が僕の腕試しをしているだけだと思うので、僕の分析結果が本番で使われることはないと思う。しかし、実際にはこの分析結果に基づき、何億円というお金の配分が決まっていくのだ。

僕はまず、Aerospace MBAで習ったことの総復習から始めた。五感を使って体に叩き込んだつもりでも、忘れてしまっている大事なことがあるかもしれない。経営戦略とマーケティング、そして、オペレーション戦略の授業ノートを中心に、これまでの9ヶ月間を振り返った。

驚いたことに、MBAで習った科目は全部で23科目もあるのだけど、どの科目にも共通して“最重要!”と指摘されていたことがあった。それは、「Keep it as simple as possible」(できる限りシンプルにする)ということだ。物事を可能な限りシンプルに保つことで、誰にも容易に理解できるようにし、関わる人の誤解やミスを少なくし、間違いだと分かればすぐにそれを修正し、良い結果が出ればそれを素早く全体へと広げていくことができる。シンプルさに勝る武器はないのだ。

僕はFomica副社長への報告にあたって、全てのデータを可能な限りシンプルに表現することを心がけた。分析結果をあれもこれも示すのではなく、僕が最も必要だと考える結論と、それを最も強くサポートしてくれるデータだけに絞ってレポートを仕上げた。

僕からのレポートの説明を聞き終わったFomica副社長は、一言、「Excellent!」(素晴らしい!)と言って、僕に対して出した課題に合格点をくれた。彼の経験によれば、MBAを取りたて学生はとにかく分析にのめりこんで、分析したという事実に満足してしまうが、僕のレポートは最初の30秒間で僕が伝えたいこと、そして、僕が一番懸念していることを十分に理解できたのだそうだ。彼ほどの経験があればこそなせる技だと思うけど、日々多忙な業務スケジュールをこなさなければならない企業エグゼクティブにとっては、こういったシンプルだけどしっかり本質を突いた説明スタイルが一番ウケるようだ。

Simple is best! Simple is best! Simple is best!

決して忘れないように、何度でも頭の中に叩き込んでおこうと思う。

ということで、腕試しに合格点をもらえた僕は、ATR社のある地域のマーケティング担当に無事就任することができたのでした。明日からも頑張ります。

(写真はATR社が製造する航空機。ATR-42とATR-72の2種類のみ。)
 

タバコの時間

2007年07月03日 | インターンシップ
 
フランス人もイタリア人も本当によくタバコを吸う。男性でも女性でも関係なく、ちょっと仕事をしたら「じゃあ、タバコを吸いに行ってくる」と言い残して外に出ていき、そのまま長~い休憩タイムとなることが多い。時間の長さ、頻度、どちらをとっても日本の比ではない。

別に彼らが仕事に手を抜いているわけじゃない。データの整理の仕方や彼らの社内でのコミュニケーションのとり方などを見ていると、日本の典型的なやり方よりもかなり効率的に物事は進んでいると思う。言い換えれば、単位時間あたりの生産性は、僕達日本人よりもはるかに高いのではないかという気がする。

だからこそ、ATR社は全従業員たった600人程度にも関わらず、全世界に航空機を販売することができるのだ。フランス人、そして特にイタリア人のこの「ラクしてしかも得をする」という生き方、日本では決して経験することができなかったものだ。ATR社で働くことができて本当によかった。

話をタバコに戻すと、僕はできる限りこの「タバコの時間」に付き合うことにしている。僕はタバコを吸う人間じゃないし、むしろ、タバコの煙は大嫌いなほうだ。しかし、タバコを吸わない僕でも誘われると、「コーヒーを飲む」という理由をつけて一緒に外に出るのだ。

なぜ嫌いな煙を我慢してまで「タバコの時間」に付き合うか。それは、我慢しても余りあるほどの価値ある情報が、この「タバコの時間」から得られるということが分かったからだ。

「タバコの時間」は基本的に何もすることがない時間だ。普段は忙しくてインターンの相手をしている暇などなさそうな人でも、タバコの時間だけは僕のどんな質問にも答えてくれる。むしろ、話がしたいからどんどん質問してくれという感じで、「もっと知りたいことは無いのか?これは知ってるか?」と逆に僕を質問攻めにしてくるほどだ。知識の引出しをフルオープンで僕の好奇心を満たしてくれる、それが「タバコの時間」なのだ。

今日の収穫も大きかった。ATR社のエンジニアリング部門の人と一緒になったので、思い切ってATR社の次世代旅客機の開発計画について聞いてみた。ATR社は今すごい勢いでどんどん成長していっているので、この成長期の潤沢なCash(お金)を使い、今こそ次世代の旅客機シリーズの開発に着手すべきではないか、というのが僕の意見だった。

社内情報を含むので回答については公開できないのだけど、なるほど、そういう風に考えることもできるのかあ~、フムフムという感じ。MBAでは決して習わなかった、とても実践に即した経営判断の仕方だ。またまた勉強になってしまった。

このあたりがインターンシップの本当の価値だと僕は思う。

(写真は米デルタ航空のATR機)
 

新CEO

2007年06月29日 | インターンシップ
 
僕がインターンとして勤務しているATR社(Avion de Transport Regional)では、この6月にCEO(最高経営責任者)が交代した。新CEOの名はStephane Mayer氏。なんと若干44歳の超若手CEOだ。僕と一回りちょっとしか年齢が違わない。僕は今インターンで、彼は今CEO。果たして、あと十数年で彼の地位まで僕は登りつめることができるだろうか。少なくとも日本で働いている限りはちょっとムリそうだ。

フランスは超エリート階級社会なので、年齢に関係なく政府幹部や企業幹部に若手が登用されることが多い。そのためのに特別に選抜された人材を教育する機関として、グランゼコールが存在する。もちろん、新CEOのMayer氏は、ナポレオンが創設したフランスNo.1の理工系グランゼコールを卒業している。すなわち、エコール・ポリテクニック出身なのだ。

さらに彼は、社会科学系のグランゼコールでFinance(ファイナンス)やEconomics(経済学)の学位をも取得しているらしい。理工系の知識に加え、ヒト・モノ・カネのマネジメント知識も豊富な人のようだ。また、3年前からはEADS Socataという小型航空機メーカーのCEOを勤めており、すでに経営トップとしての経験も十分にある。

さらに驚いたのは、彼はパイロットでもあることだ。商業運航を行うことはできないものの、プライベートで実際にコックピットに座り、フライトを楽しんでいるそうだ。一体どこまですごい人物なのだろう。本当にすごい人は、「スゴイ!」のレベルが一ケタ違う。

ということで、僕はこれからの4ヶ月、新CEOの下で頑張ります。若干44歳でヨーロッパを代表する航空機メーカーのCEOに抜擢されるような人材が、一体どんなことを考えて企業を経営していくのか、この目でじっくりと観察していきたいと思います。

(写真は僕の部屋で撮ってもらった一枚。CEOへの道は遠い。。。)
 

語学の壁

2007年06月28日 | インターンシップ
 
ATR社勤務2日目にして、いきなり語学の壁にぶち当たっている。昨日までは英語とフランス語を中心になんとか生活してこられたのだけど、今日からはフランス語とイタリア語が中心で、加えて、スペイン語まで飛び交うような環境に暮らしている。ヨーロッパの多国籍企業で勤務する以上ある程度覚悟はしていたものの、ここまで別世界に飛び込んでしまうことになるとは思いもしなかった。

まず、最初の壁は人事関係の手続き。これが全てフランス語。新たに結ぶ労働契約書や給与振込用の銀行口座の登録など、全てがフランス語で書かれ、担当者からフランス語で説明を受ける。僕のフランス語のレベルでそれらの内容を全部理解できると本気で思っているのだろうか。もうこれはATR社を信じてそのままサインするしかない。ええい、どうにでもなれっ!(本当は良くないけど)

次に、ATR社の社員証を発行してもらうのが大変だった。自分でセキュリティ・オフィスに電話をして、写真撮影のアポイントを取り、申請書に必要事項を記入した上で、時間ちょうどに担当者の部屋に行く。この最初の「電話でアポイントをとる」、というのが僕にとっては至難の業で、電話だと身振り手振りでの説明ができないので、僕の話すフランス語をあまり良く理解してもらえない。結局、ちょっとズルをして英語を交え、ようやくアポを取ることに成功した。

それから、休憩時間のコーヒー自動販売機前での会話タイム。これまたフランス語かイタリア語だ。フランス語ならなんとなく話の内容が50%くらい理解できるのだけど、イタリア語になるともうさっぱり分からない。もう笑ってごまかすしかない。でも、それもなんか典型的な日本人っぽくてイヤなので、フランス語を今勉強中なのでフランス語を教えてくれ、と試しに言ってみたら、結構みんなやさしく教えてくれた。トゥールーズ在住の人は本当に皆やさしい。パリだったらきっと無視されて、一人ぼっちになっていたかもしれない。トゥールーズに本社がある企業に採用してもらえて本当に良かった。

僕のATR社でのインターンシップは、まだあと4ヶ月もある。今の僕のフランス語のレベルでは、間違いなく社内のでの円滑なコミュニケーションに支障をきたしそうだ。早急になんとかせねば!

よし、あと1ヶ月でなんとかしよう。頑張ろう!
 

ATR社勤務スタート

2007年06月27日 | インターンシップ
 
パリ航空ショーから戻った僕は、今週からインターン先であるATR社(Avion de Transport Regional)での勤務をスタートしている。昨年の7月に日本を出発してフランスに来て以来、本格的に仕事をするのはほぼ1年ぶりだ。それに、海外の大学で学んだことは何度かあるものの、海外の会社で勤務をするのは、僕にとってこれが初めての経験だ。ワクワク感とともに、ドキドキ感が今の僕の体の中に充満している。

ヨーロッパの企業というと、とても優雅でスマートに仕事を進めるというのが、これまでの僕のイメージだった。事業規模のわりに社員の数は極めて少なく、少数精鋭を貫き、それぞれの社員が相応の責任と裁量権を持って仕事をしている。仕事に対する考え方もサバサバしていて、できるものはできるし、できないものはできない。他人の仕事は他人の責任で、自分は自分の仕事を100%達成するために全力を尽くす。そんな感じのイメージだ。

まだ働き始めたばかりなので、これらの僕のイメージが本当に当たっているのかどうかは分からない。しかし、ただのインターンにも関わらず僕に用意された部屋の豪華さにまず驚いた。マネージャー候補を採用するためのMBAインターンということこで、特別に配慮されているらしい。

こんなに広い部屋を使っていいなんて、ヒラ社員から部長クラスまでまとめて大部屋所帯が当たり前の日本では到底考えられない。それに、日本ではどう考えても役員クラスにならないと使わせてもらえないような豪華な机と椅子を使わせてもらっている。トゥールーズというフランスの地方都市に本社があるとはいえ、職場環境の違いにまずビックリした。ここでならいい仕事ができそうな気がする。

仕事の内容については、「秘密保持契約」というものにサインをしているので、このブログの中で大々的に公表することはできない。しかし、僕がこのATR社で行う仕事は、数年後に大きな成果となって皆さんの前に必ず現れると僕は信じている。そのために僕は、MBA最後のこの貴重な4ヶ月間使って、ATR社のために全精力を傾けて仕事をするのだ。地位も名誉もお金も何もいらない、とにかく、ATR社の利益ために全ての能力とエネルギーを注ぐ覚悟だ。それが、あえてリスクをとってまで僕を採用してくれたATR社への恩返しだ。

さっそく、マーケティング担当のFormica副社長から、1週間以内に仕上げろ!というミッションを一つ与えられた。まずは僕の腕試しといったところだろう。

ヨーロッパの多国籍企業で、果たして僕の実力がどこまで通用するのか。なんだか、僕も楽しみになってきた。

(写真はATR社が僕に用意してくれたオフィス。こんなスゴイの初めて。)