11月30日に採択された、
北朝鮮による5回目の核実験に対する国連制裁決議第2321号には、
史上初で「現職の大使」を制裁対象に指定する内容もありました。
その主人公は、駐エジプト北朝鮮大使「パク・チュンイル」。
パク氏は外交官の身分を悪用し、
北朝鮮の不法な武器取り引きにおいて重要なルートである
「朝鮮鉱業開発貿易会社(KOMID)」の活動をエジプト内で支援していると疑われてきました。
今回の制裁決議で、現職の大使とは初めて制裁対象となりましたが、
彼が決議の直前に急遽平壌に戻ったことが明らかになりました。
どうやら、エジプト政府側の意向が働いたようです。
北朝鮮、駐エジプト大使を急きょ帰国させた理由は
(東亜日報、December. 07, 2016 08:31)
これまでエジプトは北朝鮮と親交を維持している国の一つでしたが、
最近アメリカとの関係改善を狙っているため、
エジプト内に国連制裁対象となった大使が存在することが負担になったからだということです。
徐々に外交の側面で手足が切られていく中、
北朝鮮当局は、キューバの社会主義革命家と知られるフィデル・カストロの死去を受け、
非常にハイレベルのマナーで弔意を表し、
キューバとの友好関係を強調しようとしました。
北韓高官 キューバのラウル・カストロ氏と面会
(KBS World、2016-12-06 13:55:29)
しかし、キューバも
2015年7月にアメリカとキューバの首都にそれぞれ大使館を再開設することで
アメリカとの国交を正常化させていて、
現在は西側の諸国との協力を進める、
いわば「実用主義路線」を取っています。
果たして、キューバは「実利」と「昔ながらの戦友」のうち
どちらを選ぶでしょうか。
エジプトみたいに、北朝鮮との深い関係を負担に思えるのではないでしょうか。
北朝鮮を制裁することも、結局北朝鮮が国際社会で活動をしにくい環境を作る、
つまり、「孤立させる」ということなんですが、
いちいち制裁項目として定めるには限界もあって、
それを各国がきちんと守るかどうかもその国の意志にかかっています。
そういう意味で、北朝鮮と親交を持つ国を見方にして、
自発的に北朝鮮を捨ててもらうという戦略が重要です。
政治外交学的な知恵が必要なところです。