1月の北朝鮮の核実験を受けて、国連安保理は決議第2270号を採択しました。
国連の北朝鮮制裁決議案に続き、
日本でも、米国でも独自の制裁を追加しました。
【写真:「The Economist」2016年5月28日版表紙】
過去の決議が見過ごしていた部分まで網羅する強力な制裁と評価される
決議第2270号に加え、
その国の安保状況や事情に合わせた独自の制裁を発効することは、
2270号がカバーできていない穴まで埋め、
北朝鮮への制裁・圧迫をさらに完璧なものにするためでしょう。
しかし、若干惜しいところは、
いずれも、北朝鮮籍の主要人物・機関・船舶などを規制対象とし、
その規制対象と本国との取り引きを禁止するものでした。
(日本の独裁制裁は、北朝鮮籍じゃなくても朝鮮総連や核・ミサイル開発に関わった人も含む)
この場合、「第3国経由」という穴が生じてしまいます。
そんな中、米国は北朝鮮を「資金洗浄の懸念先」と指定し、
北朝鮮の金融機関が第三国を経由して
アメリカの金融機関と取引することも禁止する措置に踏み切りました。
テレビ朝日系(ANN) 6月2日(木)11時58分配信
米政府はこの決定に先立って、
3月16日、北朝鮮労働者が海外で稼ぐ外貨が北朝鮮の核開発に転用される可能性を危惧して、
労働者派遣に関与する者に対し制裁を科すことができる大統領令を出しました。
東亜日報 March. 18, 2016 07:26
この大統領令のポイントは、
「労働者派遣に関与する者」の範囲に
北朝鮮と取り引きをする第三国の者も含まれるということ。
実際にこの大統領令の制裁対象に中国が含まれましたね。
いわば「セカンダリー・ボイコット」を適用するとの米国の意志を表した
初めての制裁でしたが、
北朝鮮労働者の海外派遣に続けて、今回は金融に関してもですね。
イランに対して「セカンダリー・ボイコット」制裁の効果があったと判断したのでしょうか、
北朝鮮に対しても全方位制裁の方向に動いています。
*セカンダリー・ボイコットとは、
核活動と関係のない一般的な経済の活動でも制裁対象国と取引する第3国の全ての企業、個人などに制裁を加える強力な制裁。決議第2270号においても適用が議論されましたが、最終的に採択されませんでした。
前回、中国の衣類生産工場に北朝鮮労働者がたくさん雇用されており、
その中国工場にCalvin Kleinなどのアメリカ企業が
下請けを出していることについて伝えましたが、
(Calvin Klein、Burberry、Ralph Lauren、Levi's、Forever 21、ZARAの共通点は?
こんな中国工場をどんどん制裁対象に加えていけば、
またこのようなパターンの第3国の金融機関も対象にしていけば、
北朝鮮に流れる資金のじゃぐちをほぼ完全にしめることができると期待します。
ちなみに、
前回お伝えした中国の衣類工場の件についきまして、
当工場(美島服装有限公司)は、報道のあと、
ホームページで協力会社と宣伝していた有名ファッションブランド名を削除したそうです。
(「自由アジア放送」韓国語版の5月25日報道)
また、この工場と取り引きしていた英「バーバリー」は、
次のように発表したようです。
「バーバリーは、高い水準の倫理綱領を下請け業者にまで適用しており、
定期的な監査を行って強制労働や奴隷関係、人身売買、そして政府後援など
規定を違反する一切の雇用事例を防止している。
もし、このような事例が見つかる場合、
直ちに正すか、契約を破棄する」
一方、日本の企業も
朝鮮総連系の中国工場で生産された商品を販売していたことが明らかになりました。
もちろん、この工場には北朝鮮の労働者がたくさん働いています。
産経新聞 6月1日(水)7時55分配信
日本では、「セカンダリー・ボイコット」を適用していないため、
まだ北朝鮮の労働者によって第三国で生産された製品の輸入は認められています。
上の記事でも指摘しているように、
北朝鮮労働者が組織的に働く第三国からの輸入は野放しになっています。
イトーヨーカ堂とAOKIは同工場製衣料の販売の適否について、それぞれ「法令を順守している。直接の取引先から『工場の生産体制に問題ない』と報告を受けている」「工場の詳細を把握していない」としている。
法令上問題がないため、
イトーヨーカ堂やAOKI側がそう言うことは、間違ってはいません。
ただ、少し残念というか。。。
企業に思想や倫理などの問題で批判するわけにはいきませんし。
日本も第三国を経由しての取り引きを規制する措置が追加されるといいですね。
また、韓国も中国工場への依存度が高いため、
こういったケースが多いと思われます。
まず、韓国でできることから探してできることからやっていきたいと思います。