韓国で先週公開されて静かに上映中の映画があります。
前回、この映画に関するコラムも載せましたが
北朝鮮の実情を描いているドキュメンタリー映画
「Under the Sun」です。
【参考】
[Premium Chosun]映画「Under the Sun」に現れた平壌の表と裏(2016/2/24)(韓国語・日本語)
商業映画でもないし、
世界的に人気の「シビルウォー:キャプテン・アメリカ」も韓国で公開され
それほど話題を呼んだりはしていませんが、
私がこの映画の広報大使とさせていただいております。
残念にも日本では公開されていないようですが、
この映画の制作過程をお伝えするだけでも
日本のみなさんに北朝鮮の実体を理解していただけると思います。
【写真】「Under the Sun」韓国公開を迎え、来韓してインタビューを受けているビタリ・マンスキー監督(出処:STARNEWS)
「Under the Sun」は、ロシアの有名なドキュメンタリー映画監督「ビタリ・マンスキー」さんが
北朝鮮当局とロシアの支援を受けて制作したドキュメンタリー映画です。
当初は、8才の少女「ジンミ」の1年を描きながら
金日成の生誕記念イベントを準備する過程を見せる計画でした。
しかし、監督は北朝鮮当局が提案したシナリオをそのまま完成する代わりに、
完璧な家族の姿を演出するために
いちいち介入して捏造を図る北朝鮮関係者の姿も
ありのまま盛り込んでこの映画を作り上げました。
北朝鮮では金日成を太陽ごとき存在と扱っているし、
金日成の生誕日を「太陽節」と呼んでいることを考えれば、
「Under the Sun」という映画のタイトルは
「太陽の下」で犠牲になっている北朝鮮住民の辛さを描くという意味で
付けられたんじゃないかと想像してみます。
この映画は
第59回サンフランシスコ国際映画祭「ゴールデンゲート賞」競争部門にノミネートされ、
第40回香港国際映画祭でドキュメント映画競争審査委員賞を受賞しました。
ロシアでも上映する予定でしたが、
北朝鮮の強い反発と妨害で中止となったそうですが、
4月27日に世界初で韓国で公開されました。
公開日に合せて韓国を訪れたビタリ・マンスキー監督のインタビューがありましたが、
この様子を伝える韓国の「スターニュース」よれば、
「撮りたかったのは一つも撮ることができなかったと言える。
100%北朝鮮当局の統制の下で撮影をしたからだ」
と監督は打ち明けました。
また、
「このような条件、状況の中で作業したことは一度もない。
世界のどこでもこんなことはなかった」
と強調しました。
監督は、統制なしで撮れた唯一の場面は
ホテルの窓を通して眺めた外の風景だったと話しています。
そして、最後の「ジンミ」が泣く姿も。
その場面が撮れたから今の映画が可能だったし、
このような(北朝鮮当局を騙してシナリオになかったシーンを撮る)やり方で映画を作るしかなかったとも言っています。
金日成の生誕記念イベントの裏で見られる北朝鮮の実体は、
今月予定している党大会にも現れるでしょう。
政権への支持も弱まりつつあり、国際社会からの圧力も強まっている中、
北朝鮮は政権の妥当性を主張するために
今回の党大会で
核実験やミサイル発射を大きな功績と称え、
金正恩自身の肩書きも金正日や金日成並みのレベルまで引き上げると見られています。
妥当性が貧弱であるほど
その反動として党大会を豪華に開催しようとするだろうから
住民たちの苦痛は前にも増してひどいものになると想像しています。
率直に言うと、
このような映画を見なくてもみんなが知っていることなんですが、
たまには、私たちがその深刻さを忘れたり鈍くなったりするんじゃないかと思います。
そういった意味で、こんな映画は一人でも多くの方々に観てほしいです。
また、日本にも公開されたらいいですね。
泣いたばっかりに粛清されちゃうね。