12月28日、帰り道にラジオニュースで
「慰安婦問題合意」の便りをお聞きしました。
日韓の建設的な関係発展において
長い間足かせとなっている懸案だったし、
北朝鮮人権のために活動をする者として
これも女性の人権に関わる問題なので、常に関心はあったんですが
ニュースを聞いて心の中は
安堵半分、不安半分でした。
政府同士では「合意」という望ましい結果にたどり着きましたが
長い間お互い反感が固く蓄積されてきた両国国民の目には
これが素直に受け入れられるのかということでした。
私は、北朝鮮の問題で活動をしている者なので
日韓の歴史問題について意見を言うほどの知識も何もありませんが、
一人の女性として、一人の韓国国民として言わせていただくのなら
両国が良い方向で、本当に「未来志向」に進むためには
国民の理解と協力が必要と思います。
マスコミの表現を借りて言えば、
政府は「政治的決断」を下し、解決への意志を表明したので、
国民は良心的で成熟した「フォローシップ」を発揮するときではないかと思ったのです。
私が直観的に心配した通り、
合意のニュースが流れた28日の夕方から
韓国のネット上は火がついたように過熱してました。
韓国が負けた、日本が負けた、なんでそれを譲ったのか…
しかし、私みたいな一般市民の頭で考えると、
一国の外相というすごく頭がよくて色んな専門家からバックアップされている人たちが
完全に自国に不利なことばかり言って、
「はい、それで合意しましょう~」としたとは思えません。
合意の内容的には得るものがあれば譲るものもあるはずです。
私は、両国がずっと駆け引きを続ける状態から
手を繋いで一歩進む状態に変わろうとした意志そのものに拍手を送りたいと思いました。
実際に真っ先に米国政府は公式に歓迎の意を表明しましたし、
世界のメディアや日韓問題専門家らも
この合意への意志自体は評価しており、
今後の慎重で誠実な実行で健全な未来を作っていく礎にすべきと言っていました。
欧米メディア「歴史的合意」…慰安婦妥結を評価
「両国が歴史的な合意に達した」―英BBC
「両国は数十年に及ぶ論争に突破口を開いた」―米紙ワシントン・ポスト
「最も打開が難しい感情的な問題が画期的な合意によって解消されるだろう」―米紙ニューヨーク・タイムズ
「日韓関係の雪解けは、中国と北朝鮮に対抗する上で、日韓を重要なパートナーと見る米政府にも歓迎されるだろう」―米紙ウォール・ストリート・ジャーナル
また、朝鮮半島専門家の慶応大名誉教授「小此木」教授は、
「合意内容は細部まで詰められ、プロの外交だと感じた」
「11月初めの首脳会談で日韓が同じボートに乗り、「外交漂流」を防ごうと強い政治決断をした結果だ。だが、年内決着を目指した、そのスピード感には驚かされた」
「安倍晋三首相、朴大統領の相互不信は官僚機構を縛り、メディアはナショナリズムを強め、国民感情を刺激してきた。下から関係を積み直すのは難しく、その意味でトップ同士の意向による今回の妥結には、重要な意味がある」
と評価し、
「日韓関係が新時代に入ることを確信している」と意気込みを語った。合意を土台にして、未来志向の新時代にふさわしい両国関係をいかに築いていくのか。政府だけでなく、国民レベルでも新たな対話が必要だ」
と述べています。
タイトルにも書いたように、
今回の合意は「解決」「終結」ではなく
完全解決に向けた枠組みを作ったにすぎません。
今後、この合意を両国が誠実に履行し、
元慰安婦たちの名誉を回復し、これまでの心の傷を癒やすために取り組み、
それから派生する世論を説得するために努力し、
国民間の根本的な和解に至るまで
引き続き頑張らないといけないのです。
また、韓国と日本は今後これから協力すべき懸案がたくさんありますが、
ある意味、慰安婦問題を円満に解決していく経験は
将来の両国関係に貴重な財産になると信じています。
【社説】慰安婦問題 日韓の合意を歓迎する
毎日新聞2015年12月29日
日本にとって韓国は最も重要な隣国である。外交はそもそも互いに譲り合わなければ成り立たない。今回の合意内容について、どちらが多く譲ったかの「勝ち負け論」に陥ることなく、日韓の新時代を切り開く基礎にすべきである。
日韓新時代、育むのは市民 慰安婦問題合意
朝日新聞 2015年12月29日
戦後70年のいま、両国が過去ばかりに縛られているわけにはいかないことははっきりしている。先行きが見通せない北朝鮮情勢、環境や資源など地球規模の課題、国内の少子化や高齢化、広がる格差――。共通する課題に取り組む隣国同士が手を取り合う必要性は増している。
産声を上げたばかりの合意はこれから、多くの試練にさらされるだろう。それらを乗り越え、中身を充実させていくのは政治家だけの役割ではない。今後、どんな隣国関係を作っていくのか。それを考え、育んでいくのは市民である。