(1960/ビリー・ワイルダー監督・共同脚本/ジャック・レモン、シャーリー・マクレーン、フレッド・マクマレイ、レイ・ウォルストン、デヴィッド・ルイス、ジャック・クラスチェン/125分)
初めて観たのは多分中学生くらいだったと思うが、そんなガキんちょにこの映画の男女の機微が分かるはずもなく、ドコが名作?ってな具合の印象しかなかった。以来、何度か観る機会はあったものの、面白さが分かったのは大分後だった。
NHK放送を録画しての久しぶりの鑑賞。やっぱり面白い。今回は脚本の巧さ、エピソードの構成と繋がり、さてこの後はどうなる?と観る者に思わせる語りの巧さに感心した。
従業員3万人超の大手生命保険会社の平社員C・C・バクスター、通称バド(レモン)は、5時20分に終業のベルが鳴っても1~2時間は一人デスクに座って残業することにしている。自分のアパートを4人の上司の浮気の場所として提供しているからだが、その噂が人事部長のシェルドレイク(マクマレイ)の耳に入り呼び出される。
人事評価に手心を加えてくれている上司達のおかげで昇進の話かと喜び勇んで部長室に入ったバドだったが、シェルドレイクは噂を確認した上で、自分にもアパートの鍵を貸すようにと言う。結婚12年目のシェルドレイクも不倫大好き男だったのだ。4人が5人に増えるだけ。し方なくシェルドレイクの申し出に応じるバドだったが、なんと部長のお相手は、バドが日頃から気に入っている社内エレベーターガールのフラン(マクレーン)だった・・・。
ご存じ、1960年のアカデミー賞で作品賞、監督賞、脚本賞(ワイルダー、I・A・L・ダイアモンド)などを受賞した名作で、主演のジャック・レモン、シャーリー・マクレーンもそれぞれノミネートされた。
バドはシェルドレイクの不倫相手が意中の女性フランとは知らないので、いつ彼がその事に気付くかというのが気になるし、所詮浮気の一つでしかないシェルドレイクとフランの仲がどうなっていくのかも気になる。
普通の人が演じたら平社員の悲哀がヒシヒシと感じられる設定の主人公なのに、レモンが演じている為に少しばかり度の過ぎたお人好し程度にしか見えず、態度もそんなに卑屈になっていないのでサラッと見ていられるのがイイ。
バドがアパートを上司に貸しているのは、後にシェルドレイクに説明する内容ではこうだった。
一年前、バドは退社後に経理学校に通っていて、そんな折り、NYでパーティーに出る用事があった別の街の同僚が、正装に着替えるのにバドのアパートを貸してくれと言ってきた。すると急にパーティーが増えてきて、一人に貸した手前他の人を断るわけにもいかず次々とアパートを貸すことになった。
どこまで本当の話なのか甚だ疑わしいし、彼が出世のために積極的に上司に働きかけたとは思えないので、きっかけは浮気好きな上司の一人の嘘ではないでしょうか。
フランが自虐的に話したように、世の中には利用する人間と利用される人間がいる。もしかして上手くやれば出世の糸口になるかも知れないとバドも考えたのでしょうな。
お人好し過ぎた為に罰も当たるが、最後には“メンシュ”になったバド。あの後、彼は本当に引っ越ししたんだろうか?
多彩な登場人物を生かした緻密な脚本。バドの隣に住む医者夫婦が面白い。
NHKの解説者が言っていたように小道具の生かし方も巧い。茹でたスパゲッティのお湯切りをするテニスラケットが有名だが、アパートの鍵と重役用トイレの鍵、卓上カレンダー、バドの新しい帽子、睡眠薬、剃刀の刃、カード、シャンパンの音、などなど。僕が気に入ったのは、フランのコンパクトの鏡と100ドル紙幣の入った封筒。ストーリー転換のキーポイントであり、関わった人物の心情が色々とつまった小道具でした。
台詞の中に「失われた週末」という言葉を使うワイルダーの茶目っ気。シェルドレイクとフランが付き合い出すきっかけが「七年目の浮気」と同じく奥さんの長期避暑中だったというのも因縁めいて可笑しかったし、マリリン・モンロー似の女性がそれらしく物まねしながら出てくるのも笑えた。
アカデミー賞では、ダニエル・マンデルの編集賞とエドワード・G・ボイルの装置賞(白黒)、アレクサンドル・トローネルの美術監督賞も受賞したとのこと。
遠近法を生かしたバドのオフィスも、実は奥の方は張りぼてだそうです。
隣人の医者役はジャック・クラスチェン。
上司の一人で、冒頭でモンロー似の女をモノにしようと夜中に電話をかけてくるのがレイ・ウォルストン。「スティング」で偽の競馬実況をアナウンスする詐欺師でした。
※kikiさんの素敵な記事はコチラ。ネタバレしてますので未見の方はご注意下さい。
※十瑠のネタバレ追加記事はコチラ。
初めて観たのは多分中学生くらいだったと思うが、そんなガキんちょにこの映画の男女の機微が分かるはずもなく、ドコが名作?ってな具合の印象しかなかった。以来、何度か観る機会はあったものの、面白さが分かったのは大分後だった。
NHK放送を録画しての久しぶりの鑑賞。やっぱり面白い。今回は脚本の巧さ、エピソードの構成と繋がり、さてこの後はどうなる?と観る者に思わせる語りの巧さに感心した。
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従業員3万人超の大手生命保険会社の平社員C・C・バクスター、通称バド(レモン)は、5時20分に終業のベルが鳴っても1~2時間は一人デスクに座って残業することにしている。自分のアパートを4人の上司の浮気の場所として提供しているからだが、その噂が人事部長のシェルドレイク(マクマレイ)の耳に入り呼び出される。
人事評価に手心を加えてくれている上司達のおかげで昇進の話かと喜び勇んで部長室に入ったバドだったが、シェルドレイクは噂を確認した上で、自分にもアパートの鍵を貸すようにと言う。結婚12年目のシェルドレイクも不倫大好き男だったのだ。4人が5人に増えるだけ。し方なくシェルドレイクの申し出に応じるバドだったが、なんと部長のお相手は、バドが日頃から気に入っている社内エレベーターガールのフラン(マクレーン)だった・・・。
ご存じ、1960年のアカデミー賞で作品賞、監督賞、脚本賞(ワイルダー、I・A・L・ダイアモンド)などを受賞した名作で、主演のジャック・レモン、シャーリー・マクレーンもそれぞれノミネートされた。
バドはシェルドレイクの不倫相手が意中の女性フランとは知らないので、いつ彼がその事に気付くかというのが気になるし、所詮浮気の一つでしかないシェルドレイクとフランの仲がどうなっていくのかも気になる。
普通の人が演じたら平社員の悲哀がヒシヒシと感じられる設定の主人公なのに、レモンが演じている為に少しばかり度の過ぎたお人好し程度にしか見えず、態度もそんなに卑屈になっていないのでサラッと見ていられるのがイイ。
バドがアパートを上司に貸しているのは、後にシェルドレイクに説明する内容ではこうだった。
一年前、バドは退社後に経理学校に通っていて、そんな折り、NYでパーティーに出る用事があった別の街の同僚が、正装に着替えるのにバドのアパートを貸してくれと言ってきた。すると急にパーティーが増えてきて、一人に貸した手前他の人を断るわけにもいかず次々とアパートを貸すことになった。
どこまで本当の話なのか甚だ疑わしいし、彼が出世のために積極的に上司に働きかけたとは思えないので、きっかけは浮気好きな上司の一人の嘘ではないでしょうか。
フランが自虐的に話したように、世の中には利用する人間と利用される人間がいる。もしかして上手くやれば出世の糸口になるかも知れないとバドも考えたのでしょうな。
お人好し過ぎた為に罰も当たるが、最後には“メンシュ”になったバド。あの後、彼は本当に引っ越ししたんだろうか?
多彩な登場人物を生かした緻密な脚本。バドの隣に住む医者夫婦が面白い。
NHKの解説者が言っていたように小道具の生かし方も巧い。茹でたスパゲッティのお湯切りをするテニスラケットが有名だが、アパートの鍵と重役用トイレの鍵、卓上カレンダー、バドの新しい帽子、睡眠薬、剃刀の刃、カード、シャンパンの音、などなど。僕が気に入ったのは、フランのコンパクトの鏡と100ドル紙幣の入った封筒。ストーリー転換のキーポイントであり、関わった人物の心情が色々とつまった小道具でした。
台詞の中に「失われた週末」という言葉を使うワイルダーの茶目っ気。シェルドレイクとフランが付き合い出すきっかけが「七年目の浮気」と同じく奥さんの長期避暑中だったというのも因縁めいて可笑しかったし、マリリン・モンロー似の女性がそれらしく物まねしながら出てくるのも笑えた。
アカデミー賞では、ダニエル・マンデルの編集賞とエドワード・G・ボイルの装置賞(白黒)、アレクサンドル・トローネルの美術監督賞も受賞したとのこと。
遠近法を生かしたバドのオフィスも、実は奥の方は張りぼてだそうです。
隣人の医者役はジャック・クラスチェン。
上司の一人で、冒頭でモンロー似の女をモノにしようと夜中に電話をかけてくるのがレイ・ウォルストン。「スティング」で偽の競馬実況をアナウンスする詐欺師でした。
※kikiさんの素敵な記事はコチラ。ネタバレしてますので未見の方はご注意下さい。
※十瑠のネタバレ追加記事はコチラ。
・お薦め度【★★★★★=大いに見るべし!】
レモンを好きになったのは、「お熱いのがお好き」からかなぁ。
一番好きなのは「おかしな二人」と「おかしな夫婦」ですけどね。なにせ、この二つは映画館で観たモノですから
なるほど、アレがヒントになったのか。
「七年目の浮気」でラフマニノフが使われていたのは気付いてましたが、フランと部長の浮気のきっかけも同じだったのはそういう事でしたか。
イイ映画は良い触発にもなるという、興味深いお話、ありがとうございました^^