テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。そして日々の雑感も。

七年目の浮気

2010-02-15 | コメディ
(1955/ビリー・ワイルダー 監督/トム・イーウェル、マリリン・モンロー、イヴリン・キース、ソニー・タフツ、ロバート・ストラウス/104分)


 地下鉄の通風口の上に立ったマリリンのスカートが風に煽られて、美しいおみ脚が魅惑的な太ももまで露わに・・というシーンが有名なビリー・ワイルダーのコメディであります。真夏のニューヨークは蒸し風呂のような暑さなので、マリリン扮する女性が単に涼んでいたというシーンだったんですが、漠然とあれは劇中のアクシデントだと思い込んでおりやした。まぁ、男性の前でなんと大胆な。
 「3年目の浮気」なんて歌謡曲にまでパクラれてしまったタイトルの原題は【THE SEVEN YEAR ITCH】。七年目の痒み?ソウル・バス、デザインのオープニングのタイトルバックでは、“ITCH”の文字がさも痒いところを掻いているかようにピクピクと動きまして、『まぁ、何処が痒いんでしょうねぇ?イヤらしいですねぇ』なんて日曜洋画劇場の淀川さんが言ったとか言わないとか、そんなあやふやな思い出まで浮かんでしまいました。
 家族が外出やらで一人居間に取り残されたオジさん(←私めであります)の、数十年ぶりの再会です。マリリンって何度見ても可愛いなぁ♪

*

 高度経済成長下の真夏のニューヨーク。せっせと働くご主人をしり目に蒸し暑いコンクリートジャングルを抜け出て、奥様連中はサマー・バカンスに突入の子供を連れて北の避暑地に長期のお出かけ。日本のサラリーマンにも覚えのある方は多いでしょうが、そんな不景気とは無縁の時代のお話であります。
 元々はブロードウェイのヒット舞台劇とのこと。その舞台でも主役を演じたトム・イーウェルが、出版社の妄想癖旺盛な編集者に扮し、一人残ったアパートの上階に突然やって来たセクシーな女性と知り合うことになり・・・という話。

 グラビア女優のような設定の女性に当時ディマジオと結婚したばかりのマリリン・モンロー。撮影現場に見学に来ていたディマジオが、例のスカートがふわりのシーンを見て激怒し、わずか9ヶ月の結婚生活にピリオドをうったとか。ま、そのシーンだけでなく、彼女の役柄自体が、いわば男性の妄想が生んだセックス・シンポル的なものでしたから、亭主としては心中穏やかでないのは同じ男性として容易に理解できますな。

 トムさんのアパートは元々大家さんの2階建てを上下に分けたモノで、トムさんの部屋には上階に繋がらない階段がある。マリリンはその2階の住人が、これまたサマーバケーションで留守の間借りているわけだが、塞がれた階段の開口を彼女がトンカチ片手に「開いちゃった」なんて言いながら上から降りてくるシーンもあり、なんともまぁ、実に都合のいい妄想であります。あっ、いや、これは劇中では妄想ではありませんでした。

 映画は、事ある毎に活発になるトムさんの妄想を挿入して大いに笑えるものの、浮気は浮気で終わったという、お行儀の良い結末。
 同じく大ヒット舞台劇の映画化、プレミンジャーの「月蒼くして(1953)」を思い出しましたが、そういえばヒロインはあのカマトトちゃんよりもっと理解に苦しむ女性でしたな。上の部屋にはクーラーが無く、睡眠不足が続いているとはいえ(なんと無邪気に!)知り合ったばかりの既婚者の部屋に泊まらせてとな。
 『撮影が明日なのにお肌が荒れちゃって~』
 ま、作品自体が男性の妄想が生んだようなものですからネ。(笑)

 1955年のゴールデン・グローブでトム・イーウェルが男優賞(コメディ/ミュージカル)を受賞。英国アカデミー賞ではマリリンが女優賞(国外)にノミネートされたそうです。
 マリリンが可愛いから★一つおまけしちゃおう




・お薦め度【★★★=マリリンファンなら、一見の価値有り】 テアトル十瑠

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6 コメント

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ウォルター・マッソーならば (まいじょ)
2010-02-15 14:13:44
マリリン・モンローなしではこの映画は成立しないと思われるほど「はまり役」ですが、舞台でやったというトム・イーウェルは映画ではちょっと演技過剰という気がしました。ワイルダー監督が提案したウォルター・マッソーが演じていれば、もっと飄々とした面白さが出たと思います。
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初めまして。 (ドラゴン)
2010-02-15 14:16:54
初めまして。ツイッターでフォローさせていただいている、つついつつです。オカピーさんのブログでも最近、ドラゴンっていう名前でお邪魔させていただいている大学一回生の男です。以後宜しくお願いいたします。
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Unknown (宵乃)
2010-02-15 14:28:14
お、淀川節ですね、ありがとーございます♪
映画を知らなくてもこのシーンは知っているというマリリンの有名シーンですが、劇中ではポスターほどにはめくれてなかったですよね。カットされたのかな?

>そういえばヒロインはあのカマトトちゃんよりもっと理解に苦しむ女性でしたな。

そうそう(笑)今観てもこれは・・・というキャラクターをよく演じられましたよね。ポスターのシーンといい、からだ張ってたんだなぁと妙に感心しました。
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まいじょさん (十瑠)
2010-02-15 16:56:01
お久しぶりですねぇ。

>ウォルター・マッソー

当時はまだ新人だったんですね。
確かにワイルダーではレモンではなくマッソー向きの役でした。言われるようにマッソーで見たい気もします。
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ドラゴンさん、いらっしゃい (十瑠)
2010-02-15 17:01:56
オカピーさんとこにもいらっしゃってますか。そうですか。アソコは更新頻度が半端無いですから。それに鋭い切り込みが勉強になりますよ。

「おかしな夫婦」は不良品でしたか? 残念ですね。
あれは映画館で観てとても面白くて、是非とも再見したいんですが、今のところ待ちぼうけです。

コチラこそ、よろしくお願いします。
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宵乃さん (十瑠)
2010-02-15 17:10:12
はい♪
淀川さんの解説、これは記憶にありました。

そうそう。
ポスターの印象があって、アクシデントみたいな感じなんですが、実は風に当たって涼もうとしてたんですよね。いやーっ、色っぽい^^

>からだ張ってたんだなぁと妙に感心しました。

昔、彼女の伝記本を読みましてね。その印象だと彼女はAB型ぽいです。繊細なのか、いい加減なのか分からないような、日本で言うところのぷっつん系の女優さんでもあったような、そんな風に感じました。
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