テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。そして日々の雑感も。

ボクサー

2019-08-11 | ドラマ
(1970/マーティン・リット監督/ジェームズ・アール・ジョーンズ、ジェーン・アレクサンダー、ロバート・ウェッバー、スキャットマン・クローザース、ハル・ホルブルック/103分)


高校生の頃に封切りで観た映画だ。SCREENで双葉さんが☆☆☆☆(80点)を付けられた映画で、主演の二人もオスカー候補になっていた。但し、当時も感銘は受けなかったし、今回も力作であることは分かるけど感動はしなかった。そういう種類の作品ではないからだが、僕の理解も不十分なんだろう。

監督はマーティン・リット。ポール・ニューマンと組んだ著名な作品が多い人だが、コレ以外に僕が観たのは「ハッド (1962)」くらい。今回プロデューサーが「卒業 (1967)」のローレンス・ターマンだったことに気付く。おまけに撮影は「俺たちに明日はない (1967)」のバーネット・ガフィだ。オープニング・クレジットで彼らの名前を見つけると「ボクサー」もニューシネマ時代の名作だったんだなぁと思えてきた。

ハワード・サックラーという作家の舞台劇の映画化で、映画の脚本も彼が書いている。20世紀初頭のアメリカで黒人として初めてボクシングのヘビー級チャンピオンになったジャック・ジョンソンをモデルに人種差別に立ち向かった男の半生を描いた物語だが、映画を見れば分かるけど、主人公には人種差別に立ち向かうというよりは人権差別に抵抗する意識の方が強かった感じがする。なにしろ物語のスタートが主人公がボクサーとしてほぼ頂点にたった時で1910年だからだ。ジャック・ジョンソンは奴隷の子として産まれてきたらしい。

ジャック・ジョンソンについてはウィキで調べればわかるが、まさに波乱万丈の人生。映画は彼(映画ではジャック・ジェファーソンとなっている)が初めてチャンピオンベルトを獲得する試合を序盤において、その後迫害されていく様を描いている。彼には白人の恋人もいて、彼女との甘い生活とその後の没落にともなう葛藤も重要なシークエンスになっている。(ツタヤには無かった)DVDはゲオで借りたものだが、何故かジャンルは「ラブロマンス」コーナーに入っていた。確かに男女の愛情の変遷が描かれてはいるけれど、そんな甘いもんやおまへんやん。

主人公のジャック・ジェファーソンには舞台でも同じ役を演じていたジェームズ・アール・ジョーンズ。ダース・ベイダーの声が有名だが、「フィールド・オブ・ドリームス」の隠遁生活を送っている作家テレンス・マン役も印象深い。

白人の恋人、エレノア・バックマンにはジェーン・アレクサンダー。ジョーンズと同じく彼女も舞台で主演していて、二人ともトニー賞を獲ったらしい。官憲の尋問に冷静に対処するシーンなんかには彼女の知性が感じられたけど、終盤に近付くにつれて彼女の葛藤が分からなくなった。ジャックと知り合って『初めて女としての喜びを知った』なんてことも言ってたけど、結局はそういうことだったのかなぁ。末路は可哀そうだったけど。

戯曲が元ネタだし同じ作家の脚本だからか、エピソードが締まってるし、場面展開もスムーズ。ロングショットにも耐えれる美しく重量感があるショットも見応えがある。出来栄えとしては★五つなんだろうけど、僕がいまいち理解してないのでお薦め度は★一つ減かな。





・お薦め度【★★★★=友達にも薦めて】 テアトル十瑠
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