テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。そして日々の雑感も。

17歳の肖像

2013-11-11 | 青春もの
(2009/ロネ・シェルフィグ監督/キャリー・マリガン=ジェニー、ピーター・サースガード=デイヴィッド、ドミニク・クーパー=ダニー、ロザムンド・パイク=ヘレン、アルフレッド・モリナ=ジェニーの父ジャック、カーラ・セイモア=ジェニーの母マージョリー、エマ・トンプソン=校長、オリヴィア・ウィリアムズ=スタッブス先生、マシュー・ビアード=グラハム/100分)


 1961年、ロンドン郊外に住む女子高生ジェニーは16歳の一人っ子。母親は夫にも娘にも優しいが、父親は成績優秀な娘にはなんとしてもオックスフォードに入ってもらわなくてはと何かと煩い。ジェニーも大学に進みたい気持ちはあるが、感受性豊かなお年頃でもあるし、色々とやりたいことがあるのに我慢をしている状態なのだ。特にフランスには憧れていて(芸術の都パリ、自由の国フランス!)、部屋でジュリエット・グレコのレコードを聞くのが楽しみだった。なのに父親はシャンソンを聴くことにさえ文句を言ってくる。大学入試にはメリットがあると音楽の部活動には賛成なのに、音楽会に行くことも反対するオヤジなのだ。
 父親曰く『学校の音楽は勉強だが、それ以外の音楽は道楽だ』

 ある雨の日、ジェニーが部活動の帰りに大きなチェロを抱えて濡れながらバス停に佇んでいると、一台の車が近づいてきた。先ほどバス停の横を横断する親子連れを(クラクションも鳴らさず)辛抱強く待っていた車だ。
 助手席の窓を開けて男が声を掛けてくる。スーツを着た30代とおぼしき紳士だった。
 車に誘われるかと思ったら、男は君のチェロが雨に濡れてダメになってしまわないかと心配なんだと言う。勿論、不審者に思われるかもしれないというのを見越した上での言葉だが、ジェニーはチェロを乗っけると持ち逃げされるかもしれないと返事をし、それではお金を先に渡しておこうと男は言う。
 ジェニーはチェロを車の後部座席に入れ、自分は車の横を歩く。男はここでも辛抱強くジェニーの意思を尊重して、ゆっくりと車を進めた。やがて、彼女は男を信用し助手席に乗ることにした。
 男の名前はデイヴィッド。中に乗ると、車は値段の高そうなクラシックカーだった・・・。

*

 事前にこのお話がハッピーエンドには終わらない事、デイヴィッドが白馬に乗った王子様でもない事を知っていたので、あれですが、何も知らずに観ていたらデイヴィッドを「昼下りの情事」のフラナガンみたいな役どころと勘違いする人もいるでしょうね、最初の方で。
 優しい物腰と眼差し。無理強いをしない話し方。
 序盤のジャズクラブでのデイヴィッドの台詞に対するダニーのリアクションで、彼等の胡散臭さは直ぐに感じられますけどね。

 ま、そんなことより、この映画の魅力は主演のキャリー・マリガンですな。
 賢くて、感受性が豊かで向上心もある十代の少女の、大人の世界に入っていく喜びと不安を見事に表現していました。そして挫折と再起まで。
 オードリー・ヘプバーンの再来とか言われたそうですが、おとぎ話の「ローマの休日」のアン王女がいつでも美しく可愛いのとは違って、実話を基にした青春物語のジェニーは不細工に見える時と綺麗に見える時とがあって当然。つまりそれくらい存在感があったということ。オスカーノミネートが納得でした。
 パリのシーンの彼女が特別美しかったのは、映像がまさしくおとぎ話の様な演出をしていたからでしょうネ。

 原題は【An Education】。実際は、色々な人がそれぞれのお勉強を為されたやに理解しました。

 2009年のアカデミー賞で作品賞、主演女優賞、脚色賞(ニック・ホーンビィ)にノミネート。
 英国アカデミー賞でも、作品賞、助演男優賞(モリナ)、監督賞、脚色賞、衣装デザイン賞などにノミネートされ、見事キャリー・マリガンが主演女優賞を獲ったそうです。ハリウッドとは違う、イギリス映画らしい苦い後味が残りましたな。

*

 (↓Twitter on 十瑠より~一部修正あり)。
中古DVDを買っていた「17歳の肖像」を観る。1961年の英国が舞台の青春映画だが、主演のキャリー・マリガンの演技で見応えあり。後で特典映像を見ると、監督は女性らしい。ハリウッド女性映画のダラダラした感じは無くて、勘所を押さえた演出も見応えあり。
 [11月 08日 以下同じ]

「17歳の肖像」、1回目のお薦め度は★三つに近い四つ。もう一回は観たいので、文句無しの四つになる可能性大だ。キャリーちゃんは不細工に見える時と綺麗に見える時とがあるが、それよりも感情表現が素晴らしいね。オスカーノミネートが納得だった。

「17歳の肖像」の監督はデンマークの人らしい。ロネ・シェルフィグ。この人は要注意だな。今後の活躍に。

「17歳の肖像」の2回目を観る。★四つ決定。後味は単純に爽やか~とは言えない気分で、人によったらヒロインに嫌悪感を持つ人もいるかも知れない。でも、あれが現実でしょう。英国の女性ジャーナリストの回顧録を基にした話らしいし。3回目は監督とキャリーとピーターの解説つきを早送りで観た。
 [11月 09日 以下同じ]

監督の解説で、撮影しながら結局編集でカットしたシーンが結構あったことを知る。街中で主人公の二人が会話をするシーンでは、望遠レンズで撮って二人以外の風景をぼやかせる事にしたと言っていた。成る程、望遠にはそういう効果もあるのか。

キャリー・マリガンの映画デビューはジョー・ライトの「プライドと偏見」。末娘を演じていたらしいが、記憶には残らなかったな。そういえば、「プライドと偏見」で姉妹の長女ジェーンに扮していたのがロザムンド・パイクだった。ジェーンは大人しくて賢明な女性だったけど、ヘレンは無教養の女だった。

ジェニーがピーター達に連れられて初めて競売会場に行くエピソードがある。せりが始まる大事な瞬間に、興味も関心も無いヘレンは会場に連れられて来ていた余所のワンちゃんを見に行く。ほんの一瞬だけど、ヘレンの教養と意識の低さを感じるショットだった。

ジェニーの父ジャックを演じていたアルフレッド・モリーナは、あの「ショコラ」の村長さんをしていた人だった。どっちも融通の利かない堅物オヤジだったけど、こっちのお父さんは終盤でイイ人になって良かった。あっ、そういえばあの村長も最後は・・・だったな。





・お薦め度【★★★★=友達にも薦めて】 テアトル十瑠

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2 コメント

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弊記事までTB&コメント有難うございました。 (オカピー)
2014-01-17 20:32:58
>この映画の魅力は主演のキャリー・マリガン

それに尽きると思います。
英国映画ならではの爽やかさがある女優と思いましたね。
当時僕はケアリーと表記していました。今はキャリーにしています^^

>単純に爽やか~とは言えない

そうでしょうね。
僕が爽やかと感じたのは、つき詰めていくと、多分キャリー・マリガンの印象なのだと思います。
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オカピーさん (十瑠)
2014-01-18 09:24:08
TB返し&コメント、サンクスです。

マリガン嬢は、この後も着実にキャリアを伸ばしておられるようで、しかも単にアイドル的な役柄ではないのがよろしいですね。

ロネ・シェルフィグ監督作品は他にも良作があるとの事。やはりそうでしたか
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