(1975/シドニー・ポラック監督/ロバート・レッドフォード、フェイ・ダナウェイ、クリフ・ロバートソン、マックス・フォン・シドー、ジョン・ハウスマン/118分)
2009年に書いたレッドフォード出演の「アンフィニッシュ・ライフ」の追加記事のコメント欄で話題になった映画で、あれから4年目にして、ゲオにてレンタルDVDを見つけて借りてきました。封切り時からすれば凡そ40年ぶりになりますな。途中でTV放送があったのかどうかも忘れています。
「コードネームはファルコン (1985)」なんちゅう同じくCIAを題材にしたシュレシンジャー作品がありましたが、こちらの主人公ジョー・ターナーのコードネームも鳥の名前(コンドル)でした。
CIAのニューヨーク支部第17課。
高級アパートを改装した様なこじんまりとしたオフィスには8人の職員が勤めていて、表向きの看板は“アメリカ文学史協会”。しかしてその実体は、世に出ている書物を分析してCIAの活動の助けになりそうな情報提供が担当業務の下部組織なのである。
遅刻常習犯のジョーが今朝もバイクで17分遅れで出勤するところがオープニング。その彼がオフィスの玄関から入っていくところを、道路の反対側に止まった車の中から見届けている男がいる。手には顔写真と共に全ての職員の情報を網羅したファイルを持っている。
と、のっけからサスペンス感が漂ってくるわけですが、この後、ジョーが他の仲間達のランチを買出しに行った隙に、オフィスは郵便配達を装った男3人によって襲撃され皆殺しにされる。消音銃を使い、銃弾が外窓に当たらないように配慮するなどまさにプロの仕事。買出しに出る前から降りだした雨のせいで、普段は使わない裏口から出て行ったのがジョーが難を逃れた理由であります。
のんびりと紙袋にサンドウィッチを詰め込んで帰ってきたジョーはびっくり仰天。全員の死亡を確認した後、とりあえず護身用にベテラン受付嬢の引き出しから45口径を借りてオフィスを後にする。通勤用のバイクもそのままに。
一体何があったんだ?
ジョーは通常は禁止されている公衆電話からNY支部に電話をする。警備の担当者は、自宅には戻らず何処か安全な場所に隠れていること、2時間後に上司であるヒギンス少佐に電話することを命じた。
たまたま今日休みだった同僚はどうしたもんかとジョーは彼のアパートを訪ねてみたが、既に彼もベッドで事切れていた。入れ違いで二人の男が同僚の部屋を訪ねて来るし、自分のアパートに帰ってみると、そこにも二人の男がジョーの友達を装って帰りを待っていた。
何なんだ? そいつらは敵か味方か?
2時間後に支部に電話すると、ヒギンスは本部からやってきたというジョーの直轄上司に当たるウィクス課長が会いに行くことを伝える。しかし、疑心暗鬼に陥っているジョーはヒギンスの顔も知らないし、ましてや本部の課長なんて逢った事もないと面会を断る。ウィクスはジョーのファイルに載っている大学時代の友人でCIAニューヨーク支部に勤めているサムを一緒に連れて行くからと、とあるホテルの裏で会う約束をする。時間通りにジョーは路地裏に現れ、サムと言葉を交わそうとするが、その時物陰に隠れていたウィクスがいきなりジョーに向かって発砲するのだった・・・。
原題は【Three Days of The Condor】。ジェームズ・グラディという作家の書いた原作があって、そちらのタイトルは「Six Days of The Condor」らしいです。
「ひとりぼっちの青春 (1969)」で初めてオスカー候補になったシドニー・ポラックの41歳の頃の作品。まさに脂がのった時期だったのでしょう、無駄なショットがなくて、そのショットがどれもクールでカッコイイです。
フェイ・ダナウェイとレッドフォードの彼女の部屋での最初の方のやり取りで、壁に飾った彼女の趣味の写真を見ながらレッドフォードが彼女の心の中を推理するシーンなんか、フェイさんの巧さもあって、短いシーンなのに写真と彼女の表情のモンタージュが濃密な時間を作っていました。
殺し屋のマックス・フォン・シドーとレッドフォードがエレベーターで一緒になるシーンなんかも、サスペンスの醸成が巧い。
レッドフォードとは「雨のニューオリンズ (1965)」、「大いなる勇者 (1972)」、「追憶 (1973)」と息もぴったしの相性らしく、この作品の十年後、やはりレッドフォード主演の「愛と哀しみの果て (1985)」でアカデミー監督賞を獲りました。
ウィクスに発砲されて孤立無援になったジョーが、偶然逃げ込んだ洋服屋で見かけて拉致する女性がフェイ・ダナウェイ扮するキャシー・ヘイル。
ブルックリンのアパートに一人暮らし。彼氏がいて、スキーのリゾート地で彼女を待っているところでした。
壁に飾った写真はどれも人気(ひとけ)のないもの哀しげな風景ばかりで、ジョーに心の内を見透かされてついホロリときてしまう。バーモントで待っている彼氏にはそこまで理解されたことがなかったんでしょうな。今では控えめなベッドシーンも彼女が演じると色っぽかった。
にわか“スパイの女”になってジョーの手助けをするシーンとか、ターミナル駅でのお別れシーンも、翌76年に「ネットワーク」で主演オスカーを受賞する彼女ならではの存在感のあるヒロインでした。
ヒギンスにはクリフ・ロバートソン、「ペーパー・チェイス」のジョン・ハウスマンがここではCIAの幹部の役。どちらも渋かった。
クールなキャメラは、「フレンチ・コネクション (1971)」、「エクソシスト (1973)」などでオスカーにノミネートのオーウェン・ロイズマン。フェイさんと一緒の「ネット・ワーク」、ポラックの「トッツィー (1982)」の撮影でもオスカー候補になったようです。
脚本は緻密に出来てるけど、ミステリアスな展開なので2回は観たくなる映画です。
通信会社出身という設定のジョーが、電話回線を利用して謎を追求するところとかマニア(何のマニアか知りませんが)には堪えられないでしょう。
CIAのNY支部がWTCビルの中にあるので、「9.11」で無くなった二つのビルが何度も出てきます。
お薦め度は★四つ。あえて言わせてもらえば、デイヴ・グルーシンの音楽がシリアスな場面でも軽い感じだったりするところがマイナスかな。
(↓Twitter on 十瑠 より抜粋)
「if もしも‥‥」は録画したし、2度目を観る気がしばらく出てきそうにないので、ゲオに「いつか晴れた日に」を夕べ返して、「コンドル」を借りる。
[5月 5日 以下同じ]
「コンドル」っつったってハワード・ホークスのじゃないよ。75年のシドニー・ポラックの方だ。主演はレッドフォード。40年ぶりだ。当時は面白く見たけど、さて今見るとどうかなぁと静かな早朝に観出したけど、やっぱ面白いね。ミステリー・サスペンスだからもう一度は観なきゃいかん。
4年前に別の映画のコメントのやり取りで共演がフェイ・ダナウェイだったことを思い出したんだけど、この頃のフェイさんてホントに色っぽいね。骨ばったごつごつしたイメージがあったのに、この映画のキャシーが普通の女性だったせいか、「華麗なる賭け」のヴィッキーよりも余計に色っぽく感じた。
これもレッドフォードのワイルドウッドがプロダクションに関わっているみたい。クレジットされてた。翌年の「大統領の陰謀」もワイルドウッドの製作だったもんね。
そうそう、製作といえば、総指揮にディノ・デ・ラウレンティスの名前が出てきたのには驚いたね。なんか、レッドフォードと結びつかなくて。
CIAの裏モノ。その他の共演者に「ペーパー・チェイス」のジョン・ハウスマンとか、クリフ・ロバートソンとか出てて、しかもマックス・フォン・シドーが殺し屋って・・・なんて豪華なんだ。アカデミー賞で編集賞にノミネートされたみたいだけど、確かにこの編集は切れてる。
※ ネタバレ備忘録はコチラ。
2009年に書いたレッドフォード出演の「アンフィニッシュ・ライフ」の追加記事のコメント欄で話題になった映画で、あれから4年目にして、ゲオにてレンタルDVDを見つけて借りてきました。封切り時からすれば凡そ40年ぶりになりますな。途中でTV放送があったのかどうかも忘れています。
「コードネームはファルコン (1985)」なんちゅう同じくCIAを題材にしたシュレシンジャー作品がありましたが、こちらの主人公ジョー・ターナーのコードネームも鳥の名前(コンドル)でした。
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CIAのニューヨーク支部第17課。
高級アパートを改装した様なこじんまりとしたオフィスには8人の職員が勤めていて、表向きの看板は“アメリカ文学史協会”。しかしてその実体は、世に出ている書物を分析してCIAの活動の助けになりそうな情報提供が担当業務の下部組織なのである。
遅刻常習犯のジョーが今朝もバイクで17分遅れで出勤するところがオープニング。その彼がオフィスの玄関から入っていくところを、道路の反対側に止まった車の中から見届けている男がいる。手には顔写真と共に全ての職員の情報を網羅したファイルを持っている。
と、のっけからサスペンス感が漂ってくるわけですが、この後、ジョーが他の仲間達のランチを買出しに行った隙に、オフィスは郵便配達を装った男3人によって襲撃され皆殺しにされる。消音銃を使い、銃弾が外窓に当たらないように配慮するなどまさにプロの仕事。買出しに出る前から降りだした雨のせいで、普段は使わない裏口から出て行ったのがジョーが難を逃れた理由であります。
のんびりと紙袋にサンドウィッチを詰め込んで帰ってきたジョーはびっくり仰天。全員の死亡を確認した後、とりあえず護身用にベテラン受付嬢の引き出しから45口径を借りてオフィスを後にする。通勤用のバイクもそのままに。
一体何があったんだ?
ジョーは通常は禁止されている公衆電話からNY支部に電話をする。警備の担当者は、自宅には戻らず何処か安全な場所に隠れていること、2時間後に上司であるヒギンス少佐に電話することを命じた。
たまたま今日休みだった同僚はどうしたもんかとジョーは彼のアパートを訪ねてみたが、既に彼もベッドで事切れていた。入れ違いで二人の男が同僚の部屋を訪ねて来るし、自分のアパートに帰ってみると、そこにも二人の男がジョーの友達を装って帰りを待っていた。
何なんだ? そいつらは敵か味方か?
2時間後に支部に電話すると、ヒギンスは本部からやってきたというジョーの直轄上司に当たるウィクス課長が会いに行くことを伝える。しかし、疑心暗鬼に陥っているジョーはヒギンスの顔も知らないし、ましてや本部の課長なんて逢った事もないと面会を断る。ウィクスはジョーのファイルに載っている大学時代の友人でCIAニューヨーク支部に勤めているサムを一緒に連れて行くからと、とあるホテルの裏で会う約束をする。時間通りにジョーは路地裏に現れ、サムと言葉を交わそうとするが、その時物陰に隠れていたウィクスがいきなりジョーに向かって発砲するのだった・・・。
原題は【Three Days of The Condor】。ジェームズ・グラディという作家の書いた原作があって、そちらのタイトルは「Six Days of The Condor」らしいです。
「ひとりぼっちの青春 (1969)」で初めてオスカー候補になったシドニー・ポラックの41歳の頃の作品。まさに脂がのった時期だったのでしょう、無駄なショットがなくて、そのショットがどれもクールでカッコイイです。
フェイ・ダナウェイとレッドフォードの彼女の部屋での最初の方のやり取りで、壁に飾った彼女の趣味の写真を見ながらレッドフォードが彼女の心の中を推理するシーンなんか、フェイさんの巧さもあって、短いシーンなのに写真と彼女の表情のモンタージュが濃密な時間を作っていました。
殺し屋のマックス・フォン・シドーとレッドフォードがエレベーターで一緒になるシーンなんかも、サスペンスの醸成が巧い。
レッドフォードとは「雨のニューオリンズ (1965)」、「大いなる勇者 (1972)」、「追憶 (1973)」と息もぴったしの相性らしく、この作品の十年後、やはりレッドフォード主演の「愛と哀しみの果て (1985)」でアカデミー監督賞を獲りました。
ウィクスに発砲されて孤立無援になったジョーが、偶然逃げ込んだ洋服屋で見かけて拉致する女性がフェイ・ダナウェイ扮するキャシー・ヘイル。
ブルックリンのアパートに一人暮らし。彼氏がいて、スキーのリゾート地で彼女を待っているところでした。
壁に飾った写真はどれも人気(ひとけ)のないもの哀しげな風景ばかりで、ジョーに心の内を見透かされてついホロリときてしまう。バーモントで待っている彼氏にはそこまで理解されたことがなかったんでしょうな。今では控えめなベッドシーンも彼女が演じると色っぽかった。
にわか“スパイの女”になってジョーの手助けをするシーンとか、ターミナル駅でのお別れシーンも、翌76年に「ネットワーク」で主演オスカーを受賞する彼女ならではの存在感のあるヒロインでした。
ヒギンスにはクリフ・ロバートソン、「ペーパー・チェイス」のジョン・ハウスマンがここではCIAの幹部の役。どちらも渋かった。
クールなキャメラは、「フレンチ・コネクション (1971)」、「エクソシスト (1973)」などでオスカーにノミネートのオーウェン・ロイズマン。フェイさんと一緒の「ネット・ワーク」、ポラックの「トッツィー (1982)」の撮影でもオスカー候補になったようです。
脚本は緻密に出来てるけど、ミステリアスな展開なので2回は観たくなる映画です。
通信会社出身という設定のジョーが、電話回線を利用して謎を追求するところとかマニア(何のマニアか知りませんが)には堪えられないでしょう。
CIAのNY支部がWTCビルの中にあるので、「9.11」で無くなった二つのビルが何度も出てきます。
お薦め度は★四つ。あえて言わせてもらえば、デイヴ・グルーシンの音楽がシリアスな場面でも軽い感じだったりするところがマイナスかな。
*
(↓Twitter on 十瑠 より抜粋)
「if もしも‥‥」は録画したし、2度目を観る気がしばらく出てきそうにないので、ゲオに「いつか晴れた日に」を夕べ返して、「コンドル」を借りる。
[5月 5日 以下同じ]
「コンドル」っつったってハワード・ホークスのじゃないよ。75年のシドニー・ポラックの方だ。主演はレッドフォード。40年ぶりだ。当時は面白く見たけど、さて今見るとどうかなぁと静かな早朝に観出したけど、やっぱ面白いね。ミステリー・サスペンスだからもう一度は観なきゃいかん。
4年前に別の映画のコメントのやり取りで共演がフェイ・ダナウェイだったことを思い出したんだけど、この頃のフェイさんてホントに色っぽいね。骨ばったごつごつしたイメージがあったのに、この映画のキャシーが普通の女性だったせいか、「華麗なる賭け」のヴィッキーよりも余計に色っぽく感じた。
これもレッドフォードのワイルドウッドがプロダクションに関わっているみたい。クレジットされてた。翌年の「大統領の陰謀」もワイルドウッドの製作だったもんね。
そうそう、製作といえば、総指揮にディノ・デ・ラウレンティスの名前が出てきたのには驚いたね。なんか、レッドフォードと結びつかなくて。
CIAの裏モノ。その他の共演者に「ペーパー・チェイス」のジョン・ハウスマンとか、クリフ・ロバートソンとか出てて、しかもマックス・フォン・シドーが殺し屋って・・・なんて豪華なんだ。アカデミー賞で編集賞にノミネートされたみたいだけど、確かにこの編集は切れてる。
※ ネタバレ備忘録はコチラ。
・お薦め度【★★★★=スパイサスペンスの好きな、友達にも薦めて】
ポラックの才もよく出てましたし
配役もベストでした。
↓懐かしきコチラの方も
書かれておりますが
あの冒頭急襲シーンの巧さは
忘れられません。傑作!
http://blog.livedoor.jp/kagome_2005/archives/50339157.html
「マラソン・マン」は「大統領の陰謀」のゴールドマンの脚本らしいですから、ちゃんと見なきゃいかんですな。多分未見です。
それと、先日200円で買った「ザ・インタープリター」がポラックだったことも忘れておりました。いい買い物したなぁ。
>あの冒頭急襲シーンの巧さは忘れられません。
この映画のベスト・シーン賞でしょうね。
次がシドーとレッドフォードが鉢合わせでするエレベーターのシーン。
もう一つがフェイさんとの最初の夜のシーンでしょうか。
結構忘れていたので、3回も観てしまいましたがな。