(1998/ヴァルテル・サレス監督/フェルナンダ・モンテネグロ、ヴィニシウス・デ・オリヴェイラ、マリリア・ペーラ、ソイア・ライラ、オトン・バストス、オタヴィオ・アウグスト/111分)
NHK-BS2で放送されたブラジル映画。
リオ・デ・ジャネイロの駅構内で文盲の人達を相手に手紙の代書をしている中年女性と、客として訪れた少年との父親探しのロード・ムーヴィーです。
ロード・ムーヴィーと聞くだけで期待に胸膨らむわけですが、、登場人物の設定やストーリーから「コーリャ 愛のプラハ」や「グロリア(1980)」を思い出しました。反撥していた赤の他人が様々な困難を克服していくうちに肉親以上のかけがえのない存在だと思うようになる、というのはパターン化されてはいるものの、湿っぽさを排除した語り口は期待以上の余韻を残してくれました。
ベルリン国際映画祭で金熊賞を獲り、ジュリエッタ・マシーナ似のフェルナンダ・モンテネグロも女優賞を獲ったとのことであります。
元教師の代書屋ドーラのところに二日続けてやって来た母親アンナと9歳の息子ジョズエ。ケンカ別れした夫ジャズースとよりを戻そうと手紙の代書を頼んだアンナは、その帰りに駅ビルを出たところでバスに轢かれて死んでしまう。
身よりのないジョズエはホームレス状態になり、ドーラは知り合いの警備員に紹介されて、孤児と里親を仲介してくれるというところにジョズエを連れて行く。ドーラには紹介料として1000ドルが入ってくる。
臨時収入で新しいテレビを買うドーラ。前夜、ジョズエと会ったドーラの友人はジョズエの行き先を尋ね、事の経緯を聞く。そんな組織はおかしいし、里親の話は眉唾物だ。ジョズエは殺されて臓器を取られてしまうに違いないと友人は言う。
翌日、ジョズエを無理矢理取り戻したドーラはアパートに帰ることも出来ず、自分を嫌っているジョズエを連れて父親の元を訊ねようとリオを出るのだった・・・。
この後、ジョズエとドーラは反撥しあいながら旅を続け、一文無しになって親切な長距離トラックの運転手に乗せてもらったり、ドーラの腕時計を代金代わりに乗り合いトラックに乗ったりする。
広角レンズを使った撮影はブラジルの乾いた大地の広がりを捉え、ドキュメンタリータッチで点描された街の風景や人々には生活感が滲み出ておりました。
監督のヴァルテル・サレスは、以前から観たいと思っている「モーターサイクル・ダイアリーズ(2003)」をこの後作っている。確かこれもロード・ムーヴィーでした。
▼(ネタバレ注意)
ジョズエの父親が住んでいるという村に着くも彼は引っ越した後で、大酒飲みであった等あまりイイ話は聞かない。次の引っ越し先も突然のように出ていったきりでその後は行方不明だった。
ジョズエも諦めてリオに帰ろうと思った頃、父親の息子だという青年が、自分の父親を捜しているというドーラとジョズエに声をかける。
ジョズエの父親は、アンナと結婚する前に別の女性との間に二人の男の子をもうけていた。その二人は、ジョズエの父が居なくなった後も二人して立派に生活をしていた。ドーラは、父親の友人でたまたま近くに来たので寄ってみたと嘘をつき、ジョズエと共に家に行く。次男は哀しげな瞳をしていて、長男の方は気さくな青年だった。二人ともジョズエには親切だった。
長男は父親がリオから送ってきた手紙を見せて、内容を教えてくれるようにドーラに頼む。半年前に着いたというその手紙は、リオにアンナを捜しに出ていった父親がアンナ宛てに出したものだった。
手紙によると、アンナは9年前にジョズエを身ごもったまま家を飛び出し、反省した父親はアンナを探しにリオへ向かった。アンナの住居を探し当てるも既にそこにアンナは居らず、噂では家に向かったらしいので、すぐに帰るから皆でもう一度やり直そうという手紙だった。リオの代書人に書いてもらった手紙だった。
ジョズエが腹違いの弟である事を話すシーンはなかったが、その夜、二人の兄ちゃんに挟まれて幸せそうに眠っているジョズエを見て、ドーラは翌朝早く家を出てバスに乗ることにする。
ラストシーンは、ドーラの居ないことに気付いて追っていこうとするジョズエと、バスの中でジョズエ宛の手紙を書いているドーラのカットバックです。『手紙など書くことのない私が、ジョズエにだけは手紙を書いています。』『あなたは、私と暮らすより、兄さん達と一緒の方が幸せだわ。』『でも、私のことも忘れないで・・・』
ジョズエには父親探し以上の旅となり、自身も両親と死別して家族の居ないドーラにとっても新しい家族が誕生した旅でもありました。
▲(解除)
ベルリン国際映画祭の受賞以外にも、98年のアカデミー賞では主演女優賞(フェルナンダ・モンテネグロ)、外国語映画賞にノミネートされ、LA批評家協会賞では女優賞を、ゴールデン・グローブ賞では外国映画賞を受賞したとの事です。
脚本賞をあげてもイイくらいの本なんですけどねぇ。
何年か先には必ずもう一度観てみようと思うに違いない秀作でありました。
・「セントラル・ステーション」鑑賞後記はコチラ。
NHK-BS2で放送されたブラジル映画。
リオ・デ・ジャネイロの駅構内で文盲の人達を相手に手紙の代書をしている中年女性と、客として訪れた少年との父親探しのロード・ムーヴィーです。
ロード・ムーヴィーと聞くだけで期待に胸膨らむわけですが、、登場人物の設定やストーリーから「コーリャ 愛のプラハ」や「グロリア(1980)」を思い出しました。反撥していた赤の他人が様々な困難を克服していくうちに肉親以上のかけがえのない存在だと思うようになる、というのはパターン化されてはいるものの、湿っぽさを排除した語り口は期待以上の余韻を残してくれました。
ベルリン国際映画祭で金熊賞を獲り、ジュリエッタ・マシーナ似のフェルナンダ・モンテネグロも女優賞を獲ったとのことであります。
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元教師の代書屋ドーラのところに二日続けてやって来た母親アンナと9歳の息子ジョズエ。ケンカ別れした夫ジャズースとよりを戻そうと手紙の代書を頼んだアンナは、その帰りに駅ビルを出たところでバスに轢かれて死んでしまう。
身よりのないジョズエはホームレス状態になり、ドーラは知り合いの警備員に紹介されて、孤児と里親を仲介してくれるというところにジョズエを連れて行く。ドーラには紹介料として1000ドルが入ってくる。
臨時収入で新しいテレビを買うドーラ。前夜、ジョズエと会ったドーラの友人はジョズエの行き先を尋ね、事の経緯を聞く。そんな組織はおかしいし、里親の話は眉唾物だ。ジョズエは殺されて臓器を取られてしまうに違いないと友人は言う。
翌日、ジョズエを無理矢理取り戻したドーラはアパートに帰ることも出来ず、自分を嫌っているジョズエを連れて父親の元を訊ねようとリオを出るのだった・・・。
この後、ジョズエとドーラは反撥しあいながら旅を続け、一文無しになって親切な長距離トラックの運転手に乗せてもらったり、ドーラの腕時計を代金代わりに乗り合いトラックに乗ったりする。
広角レンズを使った撮影はブラジルの乾いた大地の広がりを捉え、ドキュメンタリータッチで点描された街の風景や人々には生活感が滲み出ておりました。
監督のヴァルテル・サレスは、以前から観たいと思っている「モーターサイクル・ダイアリーズ(2003)」をこの後作っている。確かこれもロード・ムーヴィーでした。
▼(ネタバレ注意)
ジョズエの父親が住んでいるという村に着くも彼は引っ越した後で、大酒飲みであった等あまりイイ話は聞かない。次の引っ越し先も突然のように出ていったきりでその後は行方不明だった。
ジョズエも諦めてリオに帰ろうと思った頃、父親の息子だという青年が、自分の父親を捜しているというドーラとジョズエに声をかける。
ジョズエの父親は、アンナと結婚する前に別の女性との間に二人の男の子をもうけていた。その二人は、ジョズエの父が居なくなった後も二人して立派に生活をしていた。ドーラは、父親の友人でたまたま近くに来たので寄ってみたと嘘をつき、ジョズエと共に家に行く。次男は哀しげな瞳をしていて、長男の方は気さくな青年だった。二人ともジョズエには親切だった。
長男は父親がリオから送ってきた手紙を見せて、内容を教えてくれるようにドーラに頼む。半年前に着いたというその手紙は、リオにアンナを捜しに出ていった父親がアンナ宛てに出したものだった。
手紙によると、アンナは9年前にジョズエを身ごもったまま家を飛び出し、反省した父親はアンナを探しにリオへ向かった。アンナの住居を探し当てるも既にそこにアンナは居らず、噂では家に向かったらしいので、すぐに帰るから皆でもう一度やり直そうという手紙だった。リオの代書人に書いてもらった手紙だった。
ジョズエが腹違いの弟である事を話すシーンはなかったが、その夜、二人の兄ちゃんに挟まれて幸せそうに眠っているジョズエを見て、ドーラは翌朝早く家を出てバスに乗ることにする。
ラストシーンは、ドーラの居ないことに気付いて追っていこうとするジョズエと、バスの中でジョズエ宛の手紙を書いているドーラのカットバックです。『手紙など書くことのない私が、ジョズエにだけは手紙を書いています。』『あなたは、私と暮らすより、兄さん達と一緒の方が幸せだわ。』『でも、私のことも忘れないで・・・』
ジョズエには父親探し以上の旅となり、自身も両親と死別して家族の居ないドーラにとっても新しい家族が誕生した旅でもありました。
▲(解除)
ベルリン国際映画祭の受賞以外にも、98年のアカデミー賞では主演女優賞(フェルナンダ・モンテネグロ)、外国語映画賞にノミネートされ、LA批評家協会賞では女優賞を、ゴールデン・グローブ賞では外国映画賞を受賞したとの事です。
脚本賞をあげてもイイくらいの本なんですけどねぇ。
何年か先には必ずもう一度観てみようと思うに違いない秀作でありました。
・「セントラル・ステーション」鑑賞後記はコチラ。
・お薦め度【★★★★★=大いに見るべし!】
巡礼者の間をジョズエを追って走るシーンや、ラストのバスで手紙を書く彼女の姿に涙です。
オリヴェイラ少年も元靴磨きとは思えない見事な演技でした!
それは初耳でした。
>巡礼者の間をジョズエを追って走るシーンや、ラストのバスで手紙を書く彼女の姿に涙です
あのラストシーンは・・・