(1992/宮崎駿:監督・脚本/声の出演:森山周一郎=マルコ(ポルコ・ロッソ)、加藤登紀子=マダム・ジーナ、桂三枝=ピッコロおやじ、 上條恒彦=マンマユート・ボス、岡村明美=フィオ・ピッコロ、大塚明夫=ミスター・カーチス/91分)
娘が友達から借りたというDVDを転借して久しぶりに「紅の豚」を観る。今までTVで放送されたのを細切れに何回か観たけれど、通して観るのは今度で2回目だと思う。ジブリの宮崎作品としては「魔女の宅急便」に続く四作目で、この後が「もののけ姫」になる。少年少女がメインで出ないので人気は薄いと思っていたら、公開時には前作の「魔女宅」をしのぐ興行成績を上げたらしい。色々と覚えているシーンが多いのに、何故か中盤のストーリーが消えている映画だった。
時は1920年代の後期、世界大恐慌時代のファシスト党政権下、イタリア。ファシズムを嫌って軍を飛び出し、訳あって顔が豚になっている元イタリア空軍の優秀なパイロットが、国の東側に位置するアドリア海に浮かぶ孤島をねぐらに、空賊(飛行機を使った海賊)退治の賞金稼ぎをしている・・という話。
ウィキペディアには<自らに魔法をかけて豚の姿となり・・>と書いてあるが、映画ではそういう風には語られていなかった。
そういえば、オープニングで島でのんびりと昼寝をしているマルコに空賊退治の依頼連絡が入るんだが、それがなんと電話!勿論有線電話!どういうこと?しかもラジオを聴いてるし!無人島なのになぁ。
因みに、殆どを海の上が舞台の今作の飛行機は水上で離着陸できる飛行艇であります。
序盤で、鉱山会社の給与を狙った空賊を“空飛ぶ豚”のマルコが颯爽と退治するエピソードがあり、主人公や舞台設定の紹介としてまさにつかみはオッケー。空賊の人質に可愛らしい女の子達が大勢出てきて、微笑ましくもユーモラスなシーンもたっぷりだ。そして、飛行艇が飛ぶシーンなんかでよく分かるけど、宮崎監督のカット割りは流れが滑らかでとても素晴らしい。アニメ以外の監督をされても素晴らしい編集をされる方だと思いましたな。
マルコに何かと仕事の邪魔をされている空賊たちは連合を組んで、豚を退治しようと、アメリカ人でお祖母ちゃんの血が四分の一イタリア人のミスター・カーチスに助っ人を頼む。飛行機乗りは飛行機乗りにやっつけてもらおうって訳だ。ミスター・カーチスは云わば敵役で、彼との勝負が終盤のクライマックスにつながるんだが、ジーナへのアプローチなど、どうにもカーチスの描き方が軽いので昔のハリウッドの恋愛冒険活劇みたいな乗りにはならない。
マルコがミラノで機の修理をするシーンで彼を追っているファシストの秘密警察が登場したり、またマルコを庇うイタリア空軍の戦友が出てくるので、むしろこっちのサスペンス色のある冒険アクションを最初は期待してしまったくらいだ。
勿論これは期待はずれ。宮崎監督は<一貫してアニメを児童のために作ることを自らに課してきた>とのことなので仕方のないことなのかもしれないが、それならばこのファシスト関連のエピソードはも少し軽く扱って貰いたかった。或いは、政府軍と空賊を絡めて、お宝の奪い合いみたいなストーリーに発展させるとか。ま、そうなると後30分くらい尺が長くなりそうだけど。
宮崎監督は自画像を書くときには必ず豚の顔にするらしいから、このマルコは正に監督が自らの理想を投影させた主人公なんでしょうな。
その他の登場人物についても書いておきます。
マダム・ジーナ。
マルコの幼馴染でホテル・アドリアーナのオーナー。アドリア海の空賊は誰もが彼女に憧れているという美女だ。3人の恋人は全て戦争や事故で死んでしまったが、いつも傍にいてくれるマルコに悲しみを分かち合ってもらって感謝している。お尋ね者のマルコは夜にしかホテルにはやって来ないが、いつか昼間に彼が来たら、ジーナは彼に恋しようと思っている。
声は加藤登紀子。声も唄も悪くないけど、イメージが・・・。「ハウル」の倍賞さんで観たかったなぁ。
ピッコロおやじ。
ミラノの飛行機製作会社の社長。商魂たくましい眼鏡のチビおやじ。「風立ちぬ」の黒川を思い出させる。アテレコはなんと落語家の桂三枝(今は六代目桂文枝)だが、絵のイメージに合わせた声と喋りで全然三枝らしさを感じさせない上手さだった。
フィオ・ピッコロ。
ピッコロおやじの孫娘で、飛行機作りが大好きなアメリカ帰りの17歳。マルコの愛機のバージョンアップの設計をする。秘密警察に睨まれるといけないので、マルコの脅しによって飛行艇を作ったと思わせる為にマルコの人質となってアドリア海の島に飛ぶ。ジーナに振られたミスター・カーチスがフィオに惚れた為に、クライマックスのマルコとカーチスの決闘では賭けの対象にもなる。カーチスが勝てばフィオは彼の嫁に、マルコが勝てば彼の飛行艇の修理代金をカーチスが払うのだが・・・。
ジブリ作品ではヒロインクラスのキャラクターで、マルコの歳若い恋人役になりそうな少女だが、ラストでマルコの魔法(呪い?)を解くことに。ラストシーンでの後日談のナレーションも彼女である。
マルコの声が森山周一郎。古い洋画ファンにはフランスの名優ジャン・ギャバンの吹き替えとして懐かしい感じの人だけど、このマルコも男っぽい渋さがカッコイイ。
飛行機同士の空中戦を観ていたら、大昔に読んでいた少年漫画を思い出しました。「0戦はやと」、「0戦太郎」そして「紫電改のタカ」。昔は戦争を描いた漫画も沢山あったんですよね。
相手のバックをとる。なんかレスリングみたいですけどバックをとられたらおしまい、そんなシーンを思い出しました。
娘が友達から借りたというDVDを転借して久しぶりに「紅の豚」を観る。今までTVで放送されたのを細切れに何回か観たけれど、通して観るのは今度で2回目だと思う。ジブリの宮崎作品としては「魔女の宅急便」に続く四作目で、この後が「もののけ姫」になる。少年少女がメインで出ないので人気は薄いと思っていたら、公開時には前作の「魔女宅」をしのぐ興行成績を上げたらしい。色々と覚えているシーンが多いのに、何故か中盤のストーリーが消えている映画だった。
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時は1920年代の後期、世界大恐慌時代のファシスト党政権下、イタリア。ファシズムを嫌って軍を飛び出し、訳あって顔が豚になっている元イタリア空軍の優秀なパイロットが、国の東側に位置するアドリア海に浮かぶ孤島をねぐらに、空賊(飛行機を使った海賊)退治の賞金稼ぎをしている・・という話。
ウィキペディアには<自らに魔法をかけて豚の姿となり・・>と書いてあるが、映画ではそういう風には語られていなかった。
そういえば、オープニングで島でのんびりと昼寝をしているマルコに空賊退治の依頼連絡が入るんだが、それがなんと電話!勿論有線電話!どういうこと?しかもラジオを聴いてるし!無人島なのになぁ。
因みに、殆どを海の上が舞台の今作の飛行機は水上で離着陸できる飛行艇であります。
序盤で、鉱山会社の給与を狙った空賊を“空飛ぶ豚”のマルコが颯爽と退治するエピソードがあり、主人公や舞台設定の紹介としてまさにつかみはオッケー。空賊の人質に可愛らしい女の子達が大勢出てきて、微笑ましくもユーモラスなシーンもたっぷりだ。そして、飛行艇が飛ぶシーンなんかでよく分かるけど、宮崎監督のカット割りは流れが滑らかでとても素晴らしい。アニメ以外の監督をされても素晴らしい編集をされる方だと思いましたな。
マルコに何かと仕事の邪魔をされている空賊たちは連合を組んで、豚を退治しようと、アメリカ人でお祖母ちゃんの血が四分の一イタリア人のミスター・カーチスに助っ人を頼む。飛行機乗りは飛行機乗りにやっつけてもらおうって訳だ。ミスター・カーチスは云わば敵役で、彼との勝負が終盤のクライマックスにつながるんだが、ジーナへのアプローチなど、どうにもカーチスの描き方が軽いので昔のハリウッドの恋愛冒険活劇みたいな乗りにはならない。
マルコがミラノで機の修理をするシーンで彼を追っているファシストの秘密警察が登場したり、またマルコを庇うイタリア空軍の戦友が出てくるので、むしろこっちのサスペンス色のある冒険アクションを最初は期待してしまったくらいだ。
勿論これは期待はずれ。宮崎監督は<一貫してアニメを児童のために作ることを自らに課してきた>とのことなので仕方のないことなのかもしれないが、それならばこのファシスト関連のエピソードはも少し軽く扱って貰いたかった。或いは、政府軍と空賊を絡めて、お宝の奪い合いみたいなストーリーに発展させるとか。ま、そうなると後30分くらい尺が長くなりそうだけど。
宮崎監督は自画像を書くときには必ず豚の顔にするらしいから、このマルコは正に監督が自らの理想を投影させた主人公なんでしょうな。
その他の登場人物についても書いておきます。
マダム・ジーナ。
マルコの幼馴染でホテル・アドリアーナのオーナー。アドリア海の空賊は誰もが彼女に憧れているという美女だ。3人の恋人は全て戦争や事故で死んでしまったが、いつも傍にいてくれるマルコに悲しみを分かち合ってもらって感謝している。お尋ね者のマルコは夜にしかホテルにはやって来ないが、いつか昼間に彼が来たら、ジーナは彼に恋しようと思っている。
声は加藤登紀子。声も唄も悪くないけど、イメージが・・・。「ハウル」の倍賞さんで観たかったなぁ。
ピッコロおやじ。
ミラノの飛行機製作会社の社長。商魂たくましい眼鏡のチビおやじ。「風立ちぬ」の黒川を思い出させる。アテレコはなんと落語家の桂三枝(今は六代目桂文枝)だが、絵のイメージに合わせた声と喋りで全然三枝らしさを感じさせない上手さだった。
フィオ・ピッコロ。
ピッコロおやじの孫娘で、飛行機作りが大好きなアメリカ帰りの17歳。マルコの愛機のバージョンアップの設計をする。秘密警察に睨まれるといけないので、マルコの脅しによって飛行艇を作ったと思わせる為にマルコの人質となってアドリア海の島に飛ぶ。ジーナに振られたミスター・カーチスがフィオに惚れた為に、クライマックスのマルコとカーチスの決闘では賭けの対象にもなる。カーチスが勝てばフィオは彼の嫁に、マルコが勝てば彼の飛行艇の修理代金をカーチスが払うのだが・・・。
ジブリ作品ではヒロインクラスのキャラクターで、マルコの歳若い恋人役になりそうな少女だが、ラストでマルコの魔法(呪い?)を解くことに。ラストシーンでの後日談のナレーションも彼女である。
マルコの声が森山周一郎。古い洋画ファンにはフランスの名優ジャン・ギャバンの吹き替えとして懐かしい感じの人だけど、このマルコも男っぽい渋さがカッコイイ。
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飛行機同士の空中戦を観ていたら、大昔に読んでいた少年漫画を思い出しました。「0戦はやと」、「0戦太郎」そして「紫電改のタカ」。昔は戦争を描いた漫画も沢山あったんですよね。
相手のバックをとる。なんかレスリングみたいですけどバックをとられたらおしまい、そんなシーンを思い出しました。
・お薦め度【★★★★=友達にも薦めて】
ストーリー的には少し物足りないというのが本音でしょうか。
何回か観た覚えはありますが、内容は内容はあまり覚えてませんでした。
ジブリの名作と言える映画ですね。というより、ジブリ映画はほぼ全て名作と言えますね。
応援完了です!
これって、ストーリーの軸となる事件らしきモノがないんですよね。だからじゃないでしょうか。マルコのカッコイイ生き様を描きたかったというのが本音じゃないでしょうかね。
エピローグのナレーションでも、マルコとジーナの関係は謎のままだし・・・。
渋いポルコと、爽快感あふれる飛行シーン、ノスタルジックで少し不思議なこの世界があれば十分ということかな。
>宮崎監督は自画像を書くときには必ず豚の顔にするらしいから、このポルコは正に監督が自らの理想を投影させた主人公なんでしょうな。
そうだったんですか~。どうりで豚なのに妙にカッコいいわけです。
飛行機乗りへの憧れも、宮崎監督ならではですね。