hanana

二度目の冬眠から覚めました。投稿も復活します。
日本画、水墨画、本、散歩、旅行など自分用の乱文備忘録です。

●東博常設 渡辺始興・狩野元信

2017-04-22 | Art

日春展のあと、東博で4月23日まで渡辺始興の代表作のひとつが展示されていることに気づき、急行。

「屏風と襖絵―安土桃山~江戸」のコーナー。

 

「吉野山図屏風」6曲一双 渡辺始興(1683~1755)18世紀

これは個人蔵で写真不可だったので、Wikipediaから部分の画像

全体ではこんな感じ(例によって下手なメモ恥)。

春うらら。始興はこんなにほのぼのした絵も描くのね!始興の絵を観たいと思ってから、一年に一枚やっと見られるくらい。観るたび画風が違い、どれもひかれる。始興はなんでも描けるらしい。

お山がぽかりぽかり。丸かったり、おにぎり型だったり。萌える緑もほんわか。山は平塗に、ほんの一部に深い緑でニュアンスいれているのが、粋。

桜の花はレース編みみたいにパターン化されていて、かわいいなあ。

金もたっぷり、しかも山間にも満ちる春霞は金砂子。金がふんわりとした役割をしていて、なんて贅沢な。「仁清や光琳の装飾意匠を借りた京風の明るく雅な造形美」とあった。

きっと近衛家や公家の発注品だと思うので、御前様や姫や女房にも喜ばれたでしょう。私もあやかり、楽しい気持ちになった。


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この部屋の他の二作

伝土佐光則(1583~1683)「源氏物語図屏風(若菜上)」

六条院の庭で、女三宮と蹴鞠をしていた柏木が出会い、道ならぬ恋に落ちる。

その御簾をあけてしまった犯人ネコがかわいい^^。唐猫ってこういう模様だったのね。

やんちゃものそうなネコの顔。

瞬間に恋に落ちた、柏木の女三宮を見る悩まし気な目線ときたら。

とっさのことで、女三の宮の目線とはからんではいない。

土佐光則って、こんなに繊細な心持を描きだす人だったとは。土佐光吉の子、光起の父。

 

俵屋宗達「桜山吹図屏風 」6曲1双 17世紀

水平線と、桜の木の垂直線、そこにクジラの背中が浮かんだような山が、おおらかで気持ちよい。

桜は胡粉で、山吹は金で盛ってあった。

アレアレてふてふと、ひらひら蝶が舞うような色紙は、1605年に描かれたもの。屏風は1624年に描かれ、あとからあわせたのにうまくはまるもの。普段使いの美意識に感じ入った。

色紙の読める字を追って少しだけ調べつつ。

「浦近くふりくる雪は白波の末の松山越すかとぞ見る」藤原興風(拾遺和歌集)

「山里は秋こそことにわびしけれ 鹿の鳴く音に目をさましつつ」 壬生忠岑 古今和歌集

 

みよしのの山の白雪つもるらし 故里さむくなりまさるなり?。かな?なんか違う。少し勉強しなくては。

 

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この日はもう時間がなく、23日までの展示の「禅と水墨画」だけはと、他の作に目をふさぎ直行。

狩野元信「四季花鳥図屏風 」6曲1双 16世紀室町時代 これだけは見たかった。

これも写真不可で残念。本物を冒涜するレベルで申し訳ない限りだけれども、記憶のよすがのメモ。

右隻は、力強い松の大木と岩から始まる。鶴の母と子供の鶴が会話している。気づけば水辺にも鴨の父母と元気そうな三羽の雛。空には飛び交う鳥の方向線が交錯している。足元には、小さなたんぽぽやすみれも発見できて、あたたかい春の世界。

左隻は、空気が一変、温度が20度くらい下がっている。葉を落とした枝には雪が積もっている。渡り鳥が降り立とうとする先には、先に到着した仲間が口々に鳴きたてている。枝にとまる叭々鳥?がそれを見る。他の小鳥たちも、それぞれ見ている先がある。

木があって鳥がいる、という構成なのだけれど、全体に流れるストーリーがある。描かれている鳥や花や木といったパーツにも、意志と心がちゃんとあって、会話がある。鳥は体のひねりや首の傾げ方も動きに満ちていて、黒目がとってもかわいい。細部もどこを観ても、見どころになる。

それにしても筆さばきの見事さに感動。

くねり立つ太い幹や、湾曲する岩、対照的にまっすぐ伸びる太い竹の根元。描かれているものすべてに力がみなぎっている。元信の強い精神に触れたような。

地面の方には、一瞬でひとはらいで描きあげられた笹の葉。先に雪を描き出しているから、見事に一枚一枚の葉に雪が積もっている。

高いところの笹の葉は密集してるので、かたまって雪が積もり、重みがかかっている。

右隻、左隻両方でたっぷりとった真ん中の余白には、牧谿のようなかすかな世界。目を凝らすと木立があるのに気づき、その深淵さに何とも言えない心持ちになる。

観られてよかったとしみじみ。元信は見るたび見惚れる。

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その他駆け足で見たもの。

「山姥と金太郎図 」月岡雪鼎筆

やさしそうで、ちょっと寂しそうな影のある山姥。

微かに糸が見える。山姥は機織りをしていたとか、里で機織りを手伝ったとか、各地で伝説が残っているよう。

クマかわいい。

東博のHPを見ると、版画も、喜多川歌麿の山姥と金太郎シリーズがそろっていたようだった。こどもの日に合わせたのかな。5月14日までの展示なので、今度ゆっくりいこう。

みられなかったけれど、いつもと少しディスプレイが変わっていて、平成29年度に新たに国宝・重要文化財指定されたもの46件を展示した部屋ができていた。(5月7日まで)

http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1860

東博のものだけでなく、全国にわたるお寺や、美術館、大学、JR東日本などの企業と、所蔵元も広範。一度に見られる貴重な機会かもしれない。

 

 



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