浅舞地区には、浅舞酒造という造り酒屋がある。「天の戸」という酒を造っている。その魅惑的なネーミングに心惹かれ、買ったことがある。香り高く旨い酒だった。だから浅舞の酒には良いイメージがある。後日、何かの地図で見ると、もう一軒「朝乃舞」という酒を造る舞鶴酒造という造り酒屋さんがあることを発見した。行く機会はないままだったが、今回それを見に行った。残念なことに、こういう状態だった。帰宅後調べてみると、結構複雑な事情があるようだ。舞鶴酒造は2002年頃から、純米酒だけを生産する小規模酒屋の道を選び、低温長期発酵という手間暇がかかる製造のお酒「田从(たびと)」にこだわっていた。そして徐々にファンを増やしていっていたそうだ。この仕掛け人は、杜氏にして経営者でもあった女性社長であるという。ところが、2008年から2011年にかけて、大雪と震災により建物や倉庫が複数回に渡って倒壊し、本社は使用不能状態となった。当然、醸造設備も使えない。その後「田从(たびと)」は、県外の酒蔵の設備を借り受けて形で製造を続けていたそうだ。設備の復旧には助成金が出るが、その上限を使い切ってしまい、それ以上の復旧は出来なかったのだ。それがいつまで製造されて、現在どうなったかについては、情報がなかった。
僕も秋田県に住み始め、十年以上が経った。すべての酒蔵の酒を飲むことは困難だけど、眼の前までたどり着いた造り酒屋の、このような状況を見ると哀しくなる。少量であってもどこかで生産を続けていると良いな、そう思うことにする。
X-PRO2 / XF23mm F1.4R
思わぬところに集落があり、商店があったりして驚きの連続です。
追伸:浅舞の「朝市」、いつか行ってみようと思います。