四谷三丁目すし処のがみ・毎日のおしながき

新子はコハダに。新いかはまだ新いかで。いくらは塩から出汁醤油漬けに。すじこも登場。新秋刀魚、ブリと、もう秋です。

第402回にちよう☆ひるのがみ(お子さんデー)

2024-04-21 00:37:55 | 4/1~4/30


野上啓三インスタグラムsushi43nogami2←こちらに変更しました。
すべての魚・貝、天然ものです。
◇営業時間について◇火曜~土曜17:30~21:55※ラストオーダー(酒類・酒類以外全て)21:25まで
日曜お子さんデーは11:30~17:30です。※日曜はお子様の日です
店には月曜(+第一日曜日)以外10:30~営業終了+aおりますのでお気軽にご連絡ください!03-3356-0170
※レストラン予約代行サービス『オートリザーブ』でのご予約は日付・時間帯にかかわらず受け付けておりません。
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おかみノート
 主人の実家はお寿司屋さん。私はなんにも知らないドシロウト。今まで見たり聞いたり体験した 寿司屋のいろんなことを書いておきたいと思います。  

『 いいんだよ<前編> 』
お名刺を両手で持ちながら会社名とお名前を見た。
「ママ、この人はね、照明デザイナーなんだよ。うちのビルとかミュージアムもやってくれたんだけど、ものすごくセンスがよくてね。羽田さっき着いたんだよな?何食いたい?って訊いたら寿司だって言うからさ。リゾートホテルだっけ今やってるの」
問いかけに答えないその人の茶色い靴ヒモは固くなかなか解けなかった。
おしぼりで手を拭きながら社長さんが言った。
「とりあえず、お刺身か何か盛り合わせで。ここの本当においしいから」
「はい」と主人は言うと、きつく絞ったサラシで青磁の皿を拭き刺し盛りの準備を始めた。
バックヤードにお名刺を置きに行くとフロアに戻り、お二人が脱いだ靴を小上がりの下の収納スペースに納めた。
社長さんは開店の時からお世話になっている取引業者の方で、東京から離れたところに拠点がある。
うちが何ヶ月経ってもガラガラなのを気にして出張のたびに東京にいる知り合いの方を連れてきてくださっていた。
照明デザイナーの方が足をよじりながら言った。
「飛行機だったからさー。靴脱げるほうがラクだと思ったんだけど…掘りごたつじゃないとキツイね、あーキツイ」
「でもカウンターよりくつろげるじゃない。俺は好きだよ御座敷のほうが」
「あがったよ。はい、よろしく」
「はーい」と返事をし、誰もいないカウンターから刺身の盛り合わせを受け取り体だけを反転させてテーブルに置いた。
盛り合わせは寒ぶりもヒラメも赤貝もヤリイカも大根のツマもわさびもぜんぶピカピカに光っていた。
厨房に戻りお燗をつけながら以前聞いた主人の話を思い出していた。
「どんなにヒマな時でも、鮮度、質、両方いいものを揃えておかなくちゃならないんだ。例えばね、ガラガラの店で駄目なもの出してごらん、一発でアウトだよ。これが不思議なものでね、混んで賑わってる店に置いてあるものはたとえ普通のものでもコンディションよく見えるんだよ。うちはお客様を絶対に裏切りたくないからとにかく何は無くともネタ揃えには妥協しないよ。“ヒマなときこそとびっきりいいネタ”を!オーッ!!」

「いろいろ頂いてみたけど、おいしいよね」
「ありがとうございます」
「ここはどれくらいやっているの?」
「半年です」
「ふーん。仕入れは築地から?」
「はい」
「毎日仕入れに行って?」
「はい。開市の時は必ず行ってます」
お燗を運び戻ろうとした時だった。
「あなたは奥さん?」
「あ、はい」
「いつもこんな感じ?」
「・・・?」
「店だよ、店」
「“店”とおっしゃいますと?」
「いつも空いてるの?こんな感じで」
「まぁいろいろです・・ね」
「ままま、いいじゃない。さ、ほら熱いの飲みましょう」
社長さんの言葉をキッカケに会釈をしてその場を去った。
主人は社長さんの指示で握り始めた。
下げてきた瓶ビール用のグラスやお通しの小皿を洗っていると会話が聞こえてきた。
「クリスマス・・・忘年会どうしよう」
「東京にいる連中の?」
「うん。あんまり暮れに差し迫ると全員のスケジュール合わないから十二月・・なるべく一週目くらいのほうがいいんじゃない?俺、年末また沖縄入ってるし」
「十人、十二人・・」
「場所、場所、どうしようね。洋より和がいいなー」
「あっじゃあ寿司ってことで、ここはどう?」
「となると貸切だな。おい!ねぇ!日曜日ここ、貸し切りで」
「定休日の月曜でしたらお受けできるかもしれませんが普段の営業日は貸切はしておりません」
主人が言った。
「なんで?貸し切るほうがラクでしょうが」
「せっかく来て頂いたお客様に貸切だと言ってお帰り頂くことは僕はイヤなので」
「あーじゃあ定休日って月曜だよねマスター?どうです、十二月の一週目の月曜にしませんか」
「・・○○さんがいいならいいですよ」
「マスター、どうかな?」
「いいですよ」
照明デザイナーの方は店内を見回し始めた。
「・・・ま、スペース的には問題ないだろうけど。それにしてもなんだこの照明は。こんなんじゃ人呼べんだろうよ!?え?あらためて見ると酷いなこりゃ。誰がやったの?」
今度は私が答えた。
「誰っていうわけではないですけど、前の居酒屋さんのままの照明です」
「ネタケースの上にやるような照明があるでしょう。上から当てて刺身がおいしそうに見えるヤツ。ああいうの何でやらないの?」
「何でと言われましても、まぁ、いろいろとありまして」
「座敷のこのだらけきった感じ!この空間はないなー、ないない。あー窓だ窓、窓!!外が見えるのなんて光りがジャマだよ!全部塞いじゃって・・そうだな。今のもろもろ全部やめて、和紙と小枝で作った照明カバーにして、こっちの畳の方は真っ暗の中にポワッ、ポワッと二つだけ低い位置にライトを置いて締めてメリハリのある空間を作る、と。ふふふ。それにね、喜んだほうがいいよ~キミたち。俺には秘密兵器があるんだ。週刊○○ってあるでしょ。あのイラストの表紙の部分だけ実は十年間分ファイルしてあるんだよ。それを今回特別に貸してあげるから。ちょうどいいや!!この何もないダ――ッと空いている白い壁の部分、全部貼っちゃって。で、週刊○○にすぐ電話する。“おたくの表紙を飾ってあるから取材に来てくださーい”・・ってね。そしたらイヤでも取材に来てくれる。それでマスコミに載りなさいよ。それで軌道に乗りなさい。・・・○○万かな。○○万よこしなさい。そうしたら私が照明関係パーフェクトにやってあげるから」
「けっこうです」
「い、いや、ママ?この人ね業界ですごく有名なデザイナーなんだよ?いい話だし滅多にやってくれないよ。お願いしたら?」
「じゃあこういう条件を呑んでくれたらお願いするかもしれませんけど。私たち窓から見える新宿通りの雰囲気が気に入ってるので塞がずに活かした見せ方をしてもらえれば。あと、枝とか和紙とかイヤなんで、一緒に選ぶことが出来るなら」
「あのね。・・・ったくわっかんないかなー。だからこっちに全部任せれば、あるもんでいろいろやってあげるって言ってるんでしょう?」
「あの、そもそも私たちこのままで不満なんてないですから」
「これじゃ我々が格好つかないの。笑われちゃうの」
「だったら貸切自体をお止めになったらいかがですか?このままだと恥かいちゃうんですよね?私たちは直す気はまったくありませんから」
「・・・・・・」
「とにかく今のお話は結構ですんで。社長も内装の話、絶対進めないでくださいよ?うち困りますから」
社長さんは黙っていた。
「あーあーあー!この店もこの店だけど、○○さんも○○さんだ。○○さん、あなたほどの人がなんでこんな店を気に入ってんだかわからん!!それにここに来てる客だ、全員ダメだ!なんだこんな店!!何を考えてんだまったく」

   “ ップーン ” という音が身体の中で鳴った。

「いま、何て言いました?」
「・・・・え?」
「だから、いま、何て言いました?」
「・・・・・・・」
厨房の冷蔵機器のモーターが回る音と新宿通りの車が走る音だけが聞こえていた。

明日は 『 いいんだよ<後編> 』です
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◎赤貝の仕込み 動画アップしました(5分03秒)
◎シャリ酢あわせ 動画アップしました(1分50秒)
◎かんぴょうを煮る動画アップしました(7分30秒)
◎玉子焼き動画アップしました(6分53秒)
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今、築地4/20→4/24[穀雨・葭始生あしはじめてしょうず]4/25→4/29[穀雨・霜止出苗しもやんでなえいずる]今、店今、築地今、築地001[2013年]

 

009[2012年]赤貝、右が岡山で左が宮城・閖上(ゆりあげ)です。

 

 

 

009

 

[2011年]

北海道・別海(べっかい)の子にしんが入りました。酢〆でどうぞ‥

マコガレイ、横須賀です。

生・昆布〆・切り身の煮付け、三通りでお愉しみいただけます。

鰹、すみいか、新規入荷です。

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[2010年]赤いか、けっこう立派だとのことです。

今日は芝海老のおぼろを仕込んでいました。002

とり貝・あおやぎ・赤貝、どれも貝殻に入ったままネタケースに並んでいます。剥きたての味をどうぞ‥

 

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[2009年]こばしら(小柱)は二種、千葉・富津産と北海道・野付産があります。 今日のうには塩水に浸けたものではなく、主人の言葉を借りるなら、“とれっぱなしの” 瓶入りうにです。 〆鯖は太平洋側はそろそろ終わりに近づいていて、日本海側のものも今日は島根・浜田から来ていますが、それほど入ってきていないとのことです。真夏にはゴマサバを置くこともありますが、通常〆鯖に使うマサバ(真鯖)は、秋から冬、そして春あたりまでがシーズンです。

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