15才にして、初めての仕事の手伝いとして、職人さんAとBさん二人の「手元」(雑用係り)として、本格的な仕事現場に出た。
仕事の現場は、「鉛筆の芯を製造している工場」である。
場所は、3月10日の東京大空襲の爆心地に近い、隅田川沿いで焼けなかった工場だ。
お袋から、風呂敷に包んだ「弁当箱」を渡され、何か嬉しく「これで私も認められたのかという思い」と「仕事と言うけど、何をどうすれば良いのか、親父は一言も教えてくれない。」それらの不安が入り交じる。
「今日は熱くなるからな、水を十分とって、帽子を忘れずに被ぶってな。」親父が言ったのは、唯これだけ。
《最初の仕事現場》
職人Aさんと、工場主の旦那と、我が家の親父で仕事のことで盛んに話ている。
さあ、始めるぞと職人のAさん、職人のBさんがこれに応えて、スコップやツルハシを抱えて、仕事をする場所の近に運ぶ。
親父は、打ち合わせが終わってすぐに帰ってしまい居ない。
この現場は、私を含めて三人で仕事を進める事になる。
私 「まず、なにをして良いのか、判らない。」
「職人Bさんが、道具を抱えて、仕事をする場所に運んだので、まだ残っている道具を二つほど抱え、私も職人Bさんの後についていった。」
職人B「バカヤロー、この道具は今すぐに使うものではない。」(以下、職人Bは・単にBとします。)
「邪魔になるだけだから、元の場所に戻しておけ。」
私 「最初からこれでは、先が思いやられるな。」
「と、思ったが、口に出しては言えない。」
「仕事とは、厳しいものだぞ、と聞いてはいたが、最初からバカヤローでは、情けない。」
「まあしかし、良かれと運んだ道具か、すぐに使うものでなく邪魔になるなら怒られても仕方ないか。」と思い直す。
《仕事の内容》
この現場の仕事は、「鉛筆の芯、その素材である黒鉛と炭の粉を混ぜて、練り上げる。ロールという機械を据えつける土台をコンクリートで作るのだそうだ。」
この、ロールには、動力で相当の力が懸かるので、ロールを据付て置く土台は頑丈なものを要求されているという。
さて、工事が始まった。職人Aさんが工事をする場所の土間を、棒切れを使って直線を引く。(当時は、白墨などがないので棒でやっている。)
大きさは、畳でいえば二枚分位か。
Aさんが、ツルハシとシヤベルで、傍線で印した内側を堀りはじめる。
Bさんが、掘り出した土を纏めて整理し、バケツに入れて、外の空き地に運びだす。
二人の呼気うが、合っていて仕事がスムースに進む。
私 なにをして良いのか、判らずにまごまごしていると。
Bさんの声が、その時に飛んだ。「この役ただづめ、その辺でまびまごされていたのでは、邪魔だ。どけどけ。」
私 「バカヤロー、の次ぎは、役ただずでは、酷い」
「このまま、家に帰ってしまおうか、とも思ったが、まだ、仕事現場で何の働きもしていない。」
「まあ、もう少し様子を見てからか。」「このまま、家に帰ったら親父に叱られる。」いろいろな思いがよぎる。
Aさんが掘り進んでいる穴がだんだん深くなり、Aさんの腰くらいになる。
Aさんが掘った土を、Bさんがバケツに入れて運び出すか、やや高くなってきたので、力がかかり大変な様子。
Bさん「おい、糞坊主手伝え。バケツを囲いの上に出すから、上で受け取って捨ててこい。」
私 「やっと、仕事が廻ってきたかと思うが。」
「糞坊主はないだろう。」
「仕事とは、こういうものかい??。」
「バケツの土は、下に行くほど水分をふくんできて重くなる。」
「初日だ我慢・がまん。」
《昼の弁当》
私 「食べるものが不足している戦後だ。この昼の弁当が唯一の楽しみだ。」
「ここで、挫けては弁当が食べられない。」
「仕事でも、何とか手伝いになりそう。」
「また、どんな風に、この仕事が出来上がって、ロールと言う機械がどのように収まるのかも楽しみだる」
B職人の、「雑言・罵倒・嫌味・駄洒落」に付き合っての昼弁当だけが助け舟だ。
次回は、B職人の「駄洒落三昧」です。
仕事の現場は、「鉛筆の芯を製造している工場」である。
場所は、3月10日の東京大空襲の爆心地に近い、隅田川沿いで焼けなかった工場だ。
お袋から、風呂敷に包んだ「弁当箱」を渡され、何か嬉しく「これで私も認められたのかという思い」と「仕事と言うけど、何をどうすれば良いのか、親父は一言も教えてくれない。」それらの不安が入り交じる。
「今日は熱くなるからな、水を十分とって、帽子を忘れずに被ぶってな。」親父が言ったのは、唯これだけ。
《最初の仕事現場》
職人Aさんと、工場主の旦那と、我が家の親父で仕事のことで盛んに話ている。
さあ、始めるぞと職人のAさん、職人のBさんがこれに応えて、スコップやツルハシを抱えて、仕事をする場所の近に運ぶ。
親父は、打ち合わせが終わってすぐに帰ってしまい居ない。
この現場は、私を含めて三人で仕事を進める事になる。
私 「まず、なにをして良いのか、判らない。」
「職人Bさんが、道具を抱えて、仕事をする場所に運んだので、まだ残っている道具を二つほど抱え、私も職人Bさんの後についていった。」
職人B「バカヤロー、この道具は今すぐに使うものではない。」(以下、職人Bは・単にBとします。)
「邪魔になるだけだから、元の場所に戻しておけ。」
私 「最初からこれでは、先が思いやられるな。」
「と、思ったが、口に出しては言えない。」
「仕事とは、厳しいものだぞ、と聞いてはいたが、最初からバカヤローでは、情けない。」
「まあしかし、良かれと運んだ道具か、すぐに使うものでなく邪魔になるなら怒られても仕方ないか。」と思い直す。
《仕事の内容》
この現場の仕事は、「鉛筆の芯、その素材である黒鉛と炭の粉を混ぜて、練り上げる。ロールという機械を据えつける土台をコンクリートで作るのだそうだ。」
この、ロールには、動力で相当の力が懸かるので、ロールを据付て置く土台は頑丈なものを要求されているという。
さて、工事が始まった。職人Aさんが工事をする場所の土間を、棒切れを使って直線を引く。(当時は、白墨などがないので棒でやっている。)
大きさは、畳でいえば二枚分位か。
Aさんが、ツルハシとシヤベルで、傍線で印した内側を堀りはじめる。
Bさんが、掘り出した土を纏めて整理し、バケツに入れて、外の空き地に運びだす。
二人の呼気うが、合っていて仕事がスムースに進む。
私 なにをして良いのか、判らずにまごまごしていると。
Bさんの声が、その時に飛んだ。「この役ただづめ、その辺でまびまごされていたのでは、邪魔だ。どけどけ。」
私 「バカヤロー、の次ぎは、役ただずでは、酷い」
「このまま、家に帰ってしまおうか、とも思ったが、まだ、仕事現場で何の働きもしていない。」
「まあ、もう少し様子を見てからか。」「このまま、家に帰ったら親父に叱られる。」いろいろな思いがよぎる。
Aさんが掘り進んでいる穴がだんだん深くなり、Aさんの腰くらいになる。
Aさんが掘った土を、Bさんがバケツに入れて運び出すか、やや高くなってきたので、力がかかり大変な様子。
Bさん「おい、糞坊主手伝え。バケツを囲いの上に出すから、上で受け取って捨ててこい。」
私 「やっと、仕事が廻ってきたかと思うが。」
「糞坊主はないだろう。」
「仕事とは、こういうものかい??。」
「バケツの土は、下に行くほど水分をふくんできて重くなる。」
「初日だ我慢・がまん。」
《昼の弁当》
私 「食べるものが不足している戦後だ。この昼の弁当が唯一の楽しみだ。」
「ここで、挫けては弁当が食べられない。」
「仕事でも、何とか手伝いになりそう。」
「また、どんな風に、この仕事が出来上がって、ロールと言う機械がどのように収まるのかも楽しみだる」
B職人の、「雑言・罵倒・嫌味・駄洒落」に付き合っての昼弁当だけが助け舟だ。
次回は、B職人の「駄洒落三昧」です。