子育て・私流

子供を三人育て、孫も五人になった。
男親の私がどのように考え、子供や孫に接してきたかを書く。

焦土の東京で 16 仕事のやり方と勉強停電

2007年05月22日 | 焦土の東京で 土方と夜間高校生
《工事での、手作業》
前回の最後のところに。

① 3-4-5 の法則 (板を三枚使って、90度を測る。)

と言うこを書きました。戦後間もなくのことで「計測器類」が何も無い時代です。

職人Aさんが、「5メートルの貫き板を三枚持ち出してきました。」「野原で、鉄塔の位置を計算しています。」

       (まず貫き板をというの説明しておきますと。幅10センチ。厚さ1センチのもので、長さ3メートル。)
       (家屋を建築する際に柱と柱の間に通して内壁の下地にする板。)

工事する「鉄塔の一辺の角の位置」を決めて、先ほどの板の角が揃うようにして二枚の「貫き板」を釘で止めています。

板の頂点から、 4メートルに印を付ける。
もう一方の板に、3メートルに印を付ける。

手に残っている3枚目の板の頂点から、5メートルの位置に印を付けて、上記の板の3と4メートルに重ね合わせて、釘で止める。

職人Aさん、「さあ出来たぞという。」これが「90度の直角をしめしているという。」
私 「ホントかよる」と思うが、見てみる限りでは、三枚の板で90度を示している。
《90度のテストをやってください。》
紙でも、紐でも、板でもいいですから。3枚(個)一辺の長さのところにそれぞれ、3-4-5センチのものを作ってやってみてください。

野原で野球のベースを作るときなどに、利用されたら良いかと思いますが、どうでしょう。

② 馬鹿棒 の使い方、(中心点を測る。長さを測る棒だ。)

 A4の用紙でテストします。
 当然に、計測する「定規」も何も持ち合わせていない、前提でやってください。

 A4の用紙の中心点を鉛筆一本で探してください。この時にA4用紙を折り曲げたり、破ったりしないで、机の上においたままです。

 どうやるのか、こうです。

 A4用紙の縦の長い処の端に、鉛筆の底をあわせて先の方に印を置きます。
 次いで、今度は用紙の反対側から同じようにやって印をします。

 印と印の間隔が狭くなりましたね。
 この狭い間隔なら、これなら真ん中の点を印すのは、目分量でも難しくないと思いますが。どうでしょうか。

 A4用紙の横も同じ要領でやって下さい。かなり、良い線で用紙の中央を探せる筈です。

③ 垂直を測る。
  垂直は、たこ「糸の先に、小石をぶら下げて、3メートルくらい下げる。」
  糸は、垂直を示している。

焼け跡で、何もないときの「職人の知恵」の一端がお分かり頂けましたでしょうか。 
何でも物珍しい好きな私です。
職人Aさんのやることに、毎度興味深深で毎回見つめている。
ははあん。なるほどな。うまい(仕事)ことをやるものだ。

《段取り》
これらの一連の作業は、仕事の打ち合わせから始まり、かなりの時間をかけて現場で計測し計算しています。
職人Aさん曰く「仕事の出来栄えの良し悪しは、段取り次第だぞ。」と私に言う。
       
       「下手な仕事師は、ろくな段取りもしないで、仕事を急ぐ。」
       「その結果仕事の出来上がりが、上手くいっていないことになる。仕事が終わった後では、手直ししようがない。」

私 「ここで言われた、職人Aさんの言葉(仕事は段取り次第)は、私の心の奥底にずーと残って、生かされる。」
  
  「段取り、なにをするにも段取りが大切だ。段取りとは準備や手配り、気配りのことだ。」
  「こんどの穴堀り仕事でいえば、先ず掘った土を何処に片付けておくか、この役割は誰と誰か。」
  「堀り進み水が沸いてきたら、どのような対策を講じるのか。」
  「人足(労働者)は、これで足りているか。」
  「掘っている場所の壁が崩れないか、その土止めの用意の材木と材料は揃っているか。」  


《諺を二つ》
「自慢は知恵の行き止まり」
 (人間は自慢するようになったら、もうそれ以上の進歩向上は望めないという戒め。)
「使っている鍬(くわ)は光る。」
 (いつも使っている鍬は錆びずに光っているように、たえず努力し、精出して働いている人は立派に見えるというたとえ。)

中学3年生とローソク

夜間中学3年生になって、学校生活にもなれてきて、遅刻・欠席もなく続いている。
ただ、困ったことに勉強中に教室の電気が消えることだ。停電がちょくちよくあるので、電気が回復するまで教室は真っ暗闇。

先生が言った、「明日からローソクを一本づつ持って来い。」
私が家に帰ってお袋に言うと「お前我が家では、ローソクは貴重品だよ。」
       「それにな、仏壇で使う小さなものしかないよ。」
私      「仕方ないな。それでもいいよ。」

学校でまた停電「小さなローソクに火を付けて、机の片隅に立てる。」が、これではいくらも持たない。
       「学友の中には、20センチもある大きなローソクを持って来た者もいて、皆から羨ましく思われる。」
停電も毎日一回は、あるので先生も諦めていて、「大きなローソクの近くに、全員が集まって、先生がローソクの光で教科書を読んでくれる。」

ある時には、先生が「停電では授業が出来ないから、帰宅していいぞ。」と言う。
「早い時間で帰っても仕方が無いので。有志で「音楽」はどうか。」ということに話がすすんだ。
学友仲間が10名ほど残っている。おい、「先生と交渉してくれよ。」と私に言う。
私 「やだよ。」
学友「でもお前が適任なんだよ。」
私 「仕方がないな、ダメといわれたらどうする。」
学友「その時は、仕方が無いよ。」

私  教員部屋に行って担任の先生に、10人ほど残っていて、「停電でも歌を歌うぐらいはできるであろうから、音楽の先生に頼んでもらいたい。」と頼んだ。
担任が音楽の先生のところに行って説明している。

音楽の先生「はい、いいですよ。まだ授業時間の途中ですからね。」ということで「停電」の中「音楽の時間」になった。

こんな状況が半年も続いたが、年の後半には「停電」は少なくなってきた。

次回は、いよいよ「高校1年生が始まる」です。