昭和21年4月 15才。昼間は親父の仕事で土方仕事の手伝い、夕方から夜間の中学生として学校へ通う生活が始まった。
夜間学校の話は少し先にして、仕事のその後の経過を話しておきます。
(タイトルは、高校生としましたが、進学したのは中学です。この経緯は後ほどお話します。)
先ずは、先に工事していた「鉛筆の芯を作っている工場でのロールの据付」が行われることになりました。
職人Aと職人Bと次兄と私が一緒に4人で「鉛筆工場」に出向いた。
工場には、据えつける機械の「ロール機」が組みあがっていて、我々が作ってきた基礎工事の傍に、立派な姿で待ち構えています。
機械屋さんが二人、私達の到着を待っていました。
数日架けて、機械屋さんが、ここの場所で組み上げたのだという。
さて、この「ロール機械」を基礎工事の上まで運びこむ訳だが、かなりの重量があるものだという。
職人Aさんが、我々に指示し、機械の移動作業の準備が始まった。
機械の下に、片側に一枚づつ厚手の板を入れる、「厚手の板を入れる作業」だ。
機械の片側2箇所から、「バール(3センチの丸棒で先がへら)を機械の足下に差込み、持ち上げる。」
2センチほど持ち上げると、職人Aさんが仮板を差し込む。
片側が終わると、今度は反対側に廻って同じ作業を行う。一度に沢山持ち上げすぎると、ロール機械が歪むので少しづつやるのだそうだ。
何回か、同じ作業が繰り返されて「据付られるロール」が15センチほど持ち上げられた。
ここで、機械の足に厚板を差込み、その板の下に「コロ(丸い鉄管)」を5本ほど曳き、「バール」で「基礎コンクリート」に向けて、コロを転がして押し出す。
職人Aさんが、基礎の中心に真っ直ぐ乗せるために、コロを「ハンマー」で叩いて向きを調整する。
ゆっくり、静かに、そーっと、全員息を殺して、時間をかけてバールで押す。
「基礎コンクリート」に入れて置いた4個の木の箱は、次兄が「バール」で取り壊して出していて、4個の穴がポカット出来ている。
「ロール」が、「基礎コンクリート」の中央に辿り着いた。
今度は、「ロール」を「基礎」の上に降ろす作業だ。
「ロール」の足の部分に「アンカー・ボルト」4本を仮止して差込み、静かに降ろす。
「ロール」が「基礎」に置かれると、機械屋さんのチーフが「水平・曲がりが無いか・機械全体の位置が正しいか」を検証する。
チーフからOKが出されると。今度は、「アンカー・ボルト」の穴に「コンクリート」の流し込み作業が始まる。
その翌日に、据付た機械の周りを「上塗り」して。これで、今日の一連の作業が終わる。
《15才の私の感想》
なんで、仕事がキツイのにも関わらず、嫌がらずに、嫌味・雑言に耐えて「土方仕事」をやっているのか。実は幼い私にも解らない。まあ、強いて言えば次のように言えるかも。
① 仕事の一つひとつが、興味深深で、この次は何が始まるのか、どんな道具をどんな風に使ってやるのか。
② 仕事がすすむ事に、次は・次は何をと思い「はあ・なるほど」と感心する。
③ 仕事の、一つひとつが面白く、勉強になる思いだ。
④ 職人Bさんの「戯言」もあまり気にならない。
一つは、15才の私には「言っている意味が何かよく解らない。」ことが多い。
二つ目は、この「戯言」に反応して、仕事中に家に帰ったら「親父に酷く怒られ、飯も食わせてもらえなくなる。」
三つ目は、先に言ったように、仕事の興味があり「仕事の進みかた」「道具の使い方」をみているだけで時間が経つ。
⑤ 夜間高校に進学出来ることになったことも、仕事の励みになっている。
⑥ この「戯言」に耐えたことが、成人した後の私の社会生活で力になったと思っている。
(この話は、機会があればしたいと思う。)
《タイトルの夜間中学と夜間高校》
この話はこういうことだ。
15才で入学したのは、中学の3年生である。(終戦の年、今まで通っていた中学校が焼失してしまったので、別の場所で焼け残った中学校に、一年送れで途中入学したのである。)
中学3年生の学業を一年間済ませた。
「ここで、一歳遅れ。」
この年の3月に、新制高校制度が発足し、ここの中学が新制の高校に衣替えになるという。
学校側から「中学で卒業してもよい。」し。
「新制高校にこのまま進級することも出来る。」
「ただし、今度の高校制度は、昼間部は3年で卒業できるが、夜間部は4年制だと言う。」
自宅に帰って、よく両親と相談して進路を決めろ。
「君達は、入学試験なしで新制高校に入れることになっている。」
「勿論、ここの夜間部の学校も中学校でなくなり、高校に編成替えになる。」
「このため、先生方も同じで、校舎などの設備も今までどおりで、変わらない。」
こんな経過があり、私は「新制高校」にそのまま通うことにしました。
学友のほとんどが「新制高校」を選択した。
「土方(仕事)と夜間高校」と言う、タイトルにした理由がお分かりになりましたでしょうか。
結局、私は、ここの中学から新制高校を終わるまでの期間、「5年間も通う」ことになったのです。
従って、入学時に「一歳遅れ」で中学に入り、さらに「高校で一年長くなり」世間と同じ年令の子供より、高校卒業時には「二才年上」ということになる。
次回は、「夜間学校」のことを記るすことにします。
夜間学校の話は少し先にして、仕事のその後の経過を話しておきます。
(タイトルは、高校生としましたが、進学したのは中学です。この経緯は後ほどお話します。)
先ずは、先に工事していた「鉛筆の芯を作っている工場でのロールの据付」が行われることになりました。
職人Aと職人Bと次兄と私が一緒に4人で「鉛筆工場」に出向いた。
工場には、据えつける機械の「ロール機」が組みあがっていて、我々が作ってきた基礎工事の傍に、立派な姿で待ち構えています。
機械屋さんが二人、私達の到着を待っていました。
数日架けて、機械屋さんが、ここの場所で組み上げたのだという。
さて、この「ロール機械」を基礎工事の上まで運びこむ訳だが、かなりの重量があるものだという。
職人Aさんが、我々に指示し、機械の移動作業の準備が始まった。
機械の下に、片側に一枚づつ厚手の板を入れる、「厚手の板を入れる作業」だ。
機械の片側2箇所から、「バール(3センチの丸棒で先がへら)を機械の足下に差込み、持ち上げる。」
2センチほど持ち上げると、職人Aさんが仮板を差し込む。
片側が終わると、今度は反対側に廻って同じ作業を行う。一度に沢山持ち上げすぎると、ロール機械が歪むので少しづつやるのだそうだ。
何回か、同じ作業が繰り返されて「据付られるロール」が15センチほど持ち上げられた。
ここで、機械の足に厚板を差込み、その板の下に「コロ(丸い鉄管)」を5本ほど曳き、「バール」で「基礎コンクリート」に向けて、コロを転がして押し出す。
職人Aさんが、基礎の中心に真っ直ぐ乗せるために、コロを「ハンマー」で叩いて向きを調整する。
ゆっくり、静かに、そーっと、全員息を殺して、時間をかけてバールで押す。
「基礎コンクリート」に入れて置いた4個の木の箱は、次兄が「バール」で取り壊して出していて、4個の穴がポカット出来ている。
「ロール」が、「基礎コンクリート」の中央に辿り着いた。
今度は、「ロール」を「基礎」の上に降ろす作業だ。
「ロール」の足の部分に「アンカー・ボルト」4本を仮止して差込み、静かに降ろす。
「ロール」が「基礎」に置かれると、機械屋さんのチーフが「水平・曲がりが無いか・機械全体の位置が正しいか」を検証する。
チーフからOKが出されると。今度は、「アンカー・ボルト」の穴に「コンクリート」の流し込み作業が始まる。
その翌日に、据付た機械の周りを「上塗り」して。これで、今日の一連の作業が終わる。
《15才の私の感想》
なんで、仕事がキツイのにも関わらず、嫌がらずに、嫌味・雑言に耐えて「土方仕事」をやっているのか。実は幼い私にも解らない。まあ、強いて言えば次のように言えるかも。
① 仕事の一つひとつが、興味深深で、この次は何が始まるのか、どんな道具をどんな風に使ってやるのか。
② 仕事がすすむ事に、次は・次は何をと思い「はあ・なるほど」と感心する。
③ 仕事の、一つひとつが面白く、勉強になる思いだ。
④ 職人Bさんの「戯言」もあまり気にならない。
一つは、15才の私には「言っている意味が何かよく解らない。」ことが多い。
二つ目は、この「戯言」に反応して、仕事中に家に帰ったら「親父に酷く怒られ、飯も食わせてもらえなくなる。」
三つ目は、先に言ったように、仕事の興味があり「仕事の進みかた」「道具の使い方」をみているだけで時間が経つ。
⑤ 夜間高校に進学出来ることになったことも、仕事の励みになっている。
⑥ この「戯言」に耐えたことが、成人した後の私の社会生活で力になったと思っている。
(この話は、機会があればしたいと思う。)
《タイトルの夜間中学と夜間高校》
この話はこういうことだ。
15才で入学したのは、中学の3年生である。(終戦の年、今まで通っていた中学校が焼失してしまったので、別の場所で焼け残った中学校に、一年送れで途中入学したのである。)
中学3年生の学業を一年間済ませた。
「ここで、一歳遅れ。」
この年の3月に、新制高校制度が発足し、ここの中学が新制の高校に衣替えになるという。
学校側から「中学で卒業してもよい。」し。
「新制高校にこのまま進級することも出来る。」
「ただし、今度の高校制度は、昼間部は3年で卒業できるが、夜間部は4年制だと言う。」
自宅に帰って、よく両親と相談して進路を決めろ。
「君達は、入学試験なしで新制高校に入れることになっている。」
「勿論、ここの夜間部の学校も中学校でなくなり、高校に編成替えになる。」
「このため、先生方も同じで、校舎などの設備も今までどおりで、変わらない。」
こんな経過があり、私は「新制高校」にそのまま通うことにしました。
学友のほとんどが「新制高校」を選択した。
「土方(仕事)と夜間高校」と言う、タイトルにした理由がお分かりになりましたでしょうか。
結局、私は、ここの中学から新制高校を終わるまでの期間、「5年間も通う」ことになったのです。
従って、入学時に「一歳遅れ」で中学に入り、さらに「高校で一年長くなり」世間と同じ年令の子供より、高校卒業時には「二才年上」ということになる。
次回は、「夜間学校」のことを記るすことにします。