子育て・私流

子供を三人育て、孫も五人になった。
男親の私がどのように考え、子供や孫に接してきたかを書く。

焦土の東京で 18 夜間高校生の授業

2007年05月25日 | 焦土の東京で 土方と夜間高校生
やっと、表題のタイトルと同じになりましたよ。
今までの一年間は、中学3年生でしたすらね、

ただね、高校生になって嬉しいが、「昼間は親父の仕事の手伝いで土方同然」それも高校の夜間部は4年間だという。

夜間の勉強は、すでに中学3年生として、「無遅刻・無欠席」で勤め上げましたが。
これから、まだ4年間も夜学が続くのだ。身体が持つかな、頑張れるかなと自分自身思う。

この夜間高校の4年間を無事に過せば、中学生を含めて「通算5年間の夜学生」ということになる。
まあ、先の事は今から考えても仕方が無い。
「お前は学校に行きたかったのだろう」

「石の上にも3年+1年だ」頑張ろう。と自分に言い聞かせる。
《石の上にも三年》
(冷たい石の上でも三年座っていれば暖かくなるように、つらいことでも辛抱して努力すれば必ず報われるという教え)

昼間の土方生活がきつい日もある。
文句も言わずに、黙って職人さんのやる仕事の傍で、材料を運ぶ、セメントを捏ねてから運ぶ。

午後4時になると、私だけ仕事を止めて先に家に帰らせて貰う毎日。

家に帰ってから、「手足と顔を水で洗って、学位服に着替えて、運動靴を履いて」新制高校の学校へ向かう。
お袋が、道すがら食べられる物を何かしらくれるが、昼間の労働で腹が空いて我慢が出来ない。
夕食が、食べられる時間は、学校から帰った午後10時が毎日。

学校に通える魅力が、私を支える。学友と合える。話が出来る。

《学友と勉強の話・停電》

学校での授業が始まる。今日は大丈夫かなと思う。

なにを心配しているのかと言うと「停電だ。」
この時期まだまだ「電力不足」の様子で一日に一回は電気が消える。

停電で授業が中断される。「教室の中は真っ暗」先生は仕方なく職員室に戻ってしまう。
授業が、一時間目か二時間目での「停電」では帰宅してよいの指示は出ない。

と、教室の中は騒然となり「わいわい、がやがや」

教室の後ろのほうで「喧嘩」だ。

S君、僕の「消しゴム」をなぜ放り投げるのた゛。
H君、お前が「先にいたずらしたのだろ」「それに、僕の家の悪口を言った。」

もうじき、取っ組み合いに成りそうな剣幕。

一番前の席に居る私に喧嘩を見ていた学友が来て、止めてくれと言う。
何で私が喧嘩を止める役が。「何で俺なんだよ。」
「だって、お前は一つ年上だろ。それに力がありそうだから。」だと言う。
わからない理屈だが職人(土方)根性がもちあがる。

「分かったよ。」と私が立ちあがり教室の奥に向かう。

S君の隣に私は椅子を寄せて「どうしてH君の消しゴムを放り投げたのかよ」と聞く。
「あいつがな、俺のノートにいたずら書きをしたんだ。」俺が怒ったら「お前のうちは貧乏だからな。」と言った。
 さらに「お前の母さん出臍(べそ)といったから。」だ。

今度は、H君の傍に椅子を寄せて座り直して。
私 「まあ、仲良く皆で勉強しようよ。」
  「人の家の悪口は、言ってはまずいよな。」

私 「皆な、消しゴムを探してくれ。」と全員に声をかける。
大勢でさがすので、停電で真っ暗な教室の中ても直ぐに見つかる。

私 「S君に、消しゴムを渡して、貴方から誤って返しなさい。」

《このへんまでのやり取りは、私が仕事で経験した仕事の段取りの仕方が参考になっている。怒らずに、静かに、何が原因か、を良く聞いてやること。》
《だいたい、相手の話をゆっくり聞いてやるだけで、相手の感情もしずまり、喧嘩も収まるものだ。》

そのうち、騒ぎを聞きつけた担任の先生が教室に来て、事情も聞かずに頭から怒る。

こんなことなら「音楽部屋」 で歌でも歌っていたほうがよかったよ、と内心思う。

《学友の職業と帰り道》

学校の帰り、同じ方向に歩いて帰る仲間が大抵6人。
帰り道での学友とのおしゃべりが、また楽しい。

「家族のこと、仕事の話」などなど、帰り道の話は尽きない。」
(今と違って、学生が寄り道するような店は、当時一軒もない。)

一番近い学友が、「またな」と言って分かれていく。

次の学友の家は、大通りに面していて、親が「活版印刷屋」だという。
なんにでも、興味を示す私としては、「ちょっと見ていってもいい。」ときくと、どうぞと言って玄関に入れてくれた。
ははあん「活版と言うのは、文字が反対向きのものを揃えるのだ。」これはむずかしいぞ。

一回見ただけでは、よく理解できないので、またの機会によく見せてと言うことで今日は失礼する。

三番目の学友は、「男物の靴屋だと言う。」靴も男物と女物とに分かれていて仕事の手順が全然違うというのだ。
耳で聞いているだけでは、よく分からないので日を改めて見せてと頼む。

もう、私のお腹がぐうぐういっていて、早く自分の家で夜食にしたい、と家に急ぐ。

次回は、我が家の近所で、どんな仕事がされていたかを。