今年もやってきました!
『一日千字文大会』!
一日で千字書くという、ハードルの高い目標を掲げたお稽古ですが、書技アップには役立つ事間違い無しなのでオススメです。
数多くの書家や能書家が千字文を書いており、またそれらはお手本とされてきましたが、彼らが千字文も一日で書いたのかと言えば、そうではないでしょうね。
ゆえに、千字文を一日で書くのは『一日千字文大会』のかつての趣旨であって、個人的な見解としては『一日千字文にチャレンジする会』と考え、位置付けています。
昔の記録を調べると、『何時何分で誰が書き終えた』と上位三名ぐらいまで記載されています。
競争する事でモチベーションを上げ、エアコンのない真夏の暑さに打ち勝つ精神力を養っていたのかもしれません。
とはいうものの、戦後数年のうちに行われた『一日千字文大会』の参加者は、全員が戦争体験者。
現代の我々とら比べると、忍耐力や精神力の違いは歴然です。
それでも、敗戦による打ちひしがれた国民の心を癒し、戦後復興の気迫をみなぎらせるために、各方面の指導者たちはそれぞれ苦心して、その方法を実践していたのではないでしょうか。
書道界においても、戦後教育に書道を復活させる運動が大きな動きであるとすれば、一方で各団体での取り組みのひとつとして、この『一日千字文大会』を真夏に行う意義があったのではないかと思うのです。
終戦記念日の前後に行ってきた『一日千字文大会』は、太平洋戦争の戦禍に倒れた多くの人々の鎮魂を、目的の一つにしていたと思います。
とは言うものの、『一日千字文大会』をあまり重く捉えすぎないようにしたいところです。
主の目的は個人個人の書技上達にあるのですから。
いつ始めても、いつ完成してもよいのです。
千字文のお手本として使っている小野鵞堂先生は、和翠塾を遡ると数代前の先生にあたります。
かなの先生として有名ですが、楷書の達人でもありました。
ところが小野鵞堂先生が活躍していた明治期は、男はちょんまげの代わりにヒゲを生やし、威厳を前面に出すのが風潮でした。
漢字も力強い書体や書法が好まれたのです。
小野鵞堂先生の楷書は、とても美しい書体です。
その秘密は、規則性ある書体にあります。
その書体をさらに美しく磨き上げ、完成の域にしたのが、みなさんが日頃使っているお手本を書いた高橋鵞翠です。
つまり、小野鵞堂の千字文を習うと言うことは、高橋鵞翠のルーツに迫る事になるのです。
高橋鵞翠のルーツに迫れば、手元にあるお手本の見え方も変わってきます。
そこが、小野鵞堂の千字文を稽古する一番大きな意義です。
無心になって書いているうちに、その書体や書法が刷り込まれていきますから。
しかし、小野鵞堂だけを習って書の世界を全て知るわけにはいきません。
故に、小野鵞堂の楷、行、草の三体が終わった方には、村田海石やその他の人が書いた千字文にチャレンジすることをお勧めしているのです。
『一日千字文大会』に参加できなくても、日頃のお稽古で千字文に軽く触れていくのもアリ、なのです。
いよいよ明後日の土曜日が迫ってまいりました!
ゆる〜い服装で、気軽にお越しくださいませ。
そこそこ涼しいと嬉しいですね〰