私の考える書道教室の役割は、大きく分けると二つあると思います。
まず一つ目は、子供から大人まで、素晴らしい造形と運筆の書を鑑賞し、その書を求める稽古を実践する事で、普遍的な美を求める感覚と行為を身につけることができます。
小学二年生以上のお手本は、学校で習う書写のお手本とは違う、本気モード全開の美しいお手本です。
そして、それを学ぶ事で養われた審美眼を、自分を取り巻く全ての物や事柄に当てはめ、他者の評価ではない自らの価値基準を明確にする事が出来るようになります。
硬い表現になりますが（笑）、世の中の誰かに作られた『流行り廃り』に惑わされない価値基準を持つ事が出来、賢く豊かな生活を送れると言う事ですね。
ま、私もまだまだ修行中の身ではありますが（笑）
もう一つは、書道の『道』を実践する事で、自らを律する事ができます。
それは健全な心を育み維持することのできる人間力を養います。
和翠塾で学ぶ中学生以上には、古典も学んでいただきますが、儒教や仏の教えをベースとした漢詩の一部を取り上げたお手本も多く、それらを中心に学んでいただいています。
自然にゆるりと受け入れてもらいたいと言う、 和翠塾先人の考え方が反映されています。
老荘思想をベースとしだからお手本もいずれ増やしていきたいですね。
書道の『道』が、日本古来の『道』の考え方に仏教や儒教や老荘思想などが混ざって作り上げられてきた物だとすれば、老荘思想をベースとしたお手本が少ないのではないかと思うからです。
老荘思想こそ、疲れた現代人に必要な考え方だと思うんですけどね。
物事を計る尺度は、立ち位置によって変わる絶対的なものではない、と言うことです。
90歳が長生きなのか、60歳だと短命なのか？
千年生きる仙人が長生きなら、90歳しか生きられない人は短命なのか？
万年生きる亀が長生きなら、千年しか生きられない仙人は短命なのか？
そもそも長生きが幸せなことなのか？
長く生きればそれだけ嫌なことも経験するでしょう。
戦争や飢饉での地獄を見、友や仲間を沢山見送る事になる。
それが幸せな事だと思い込んでいませんか？と。
『美人は得だよね』とか『美人は幸せだよね』とよく耳にしますが、それって本当ですか？
美人は王様に貢物とされたり、側女にされたり、生贄にされたりしますよ。
※少々極端ではありますな（笑）
人から妬みや嫉みを受けて辛い思いをします。
そもそも人間は自然に老化していくのですから、そこで生まれる葛藤や、若い美人に対して嫉妬するようになってしまいますよ。
ね、美人って幸せじゃないでしょ、と老荘思想は言っているのです。
学校の成績が良いことって幸せな事なんですか？
もうお分かりですよね。
現代人が生活や仕事で疲れたり、行き詰まったりした時、老荘思想が救ってくれることもあるのです。
小学生から大人まで、老荘思想は親に叱られた時泣きつけるおじいちゃんおばあちゃんのように、優しい笑顔で迎え入れてくれるのです。
現代の書道教室に一番必要なのは、老荘思想なのかもしれませんね。
