検証・電力システムに関する改革方針

「自然エネルギーですべての電力をまかなう町」の第2部です。

10年後、林業は今より大変なことになる 連載小説63

2012年07月30日 | 第2部-小説
「おっしゃる通りです。林業は消えることはないと思いますが個人の持ち山はこの先もダメでしょ。将来性がない林業を継ぐ者はいません。だから林業を研究しようとする人もいない、そうしたなかで冨田さんのような人はめずらしい。だが私たちにとってはありがたい」と貝田はいっきにいった。
「何ができるか、わかってやっているのではないので」
「いやいや、関心を持っていただく人がいる。それだけでもありがたいことです」

 将太は、貝田のそうした物言いに接して、この男は業界で活躍している人物だと思った。創業者の3世かと思う若さだが知見は林業全体をつかみ、ありようについて責任の一端をになっている自負を漂わせている。それであれば一林業会社の経営状況を聞くより、林業全体の状況や業界の取り組みを聞いたほうが貝田に似合っていると思い、次のような質問をした。
「林業は今、何が一番問題ですか」
「丸太の売値がこれまでの投下資本より低いことです」
「その一番の原因は何ですか」
「円高と外材の完全輸入自由化です」
「外材も今は集成材や合板として輸入されていますよね」
「よくご存知で」
「少し、勉強しましたから」
「いやいや、そこまで知っている方は少ないです」
「東京の新木場に巨大な貯木場がありますが、今、一本もありません」
「かつてあそこはラワンの原木などでいっぱいでした」
「木材輸出国が付加価値をつけた木材輸出に転じている影響はどうですか」
「その影響は本当に大きい」
「それは例えば、貝田さんの会社にも影響がある」
「もちろん、あります」

「例えば」
「やはり施主さんの要求ですよ。ツーバイフォ建築や集成材建築を求められると、それに応えなければいけない」
「ということは、こちらでも外材を扱うことがある」
「いや、私の会社は扱っていません」
「ということは外材の影響を受けていることに」
「そう、直接ではないが間接的に外材に食われている」
「それに対抗できる方法は何か、考えていることはありますか」
「業界としていろいろやつていますが決定打になっていません」
「それは国内材の大量消費には及ばないということで」
「ええ、その通りです。日本の林業は10年後、今より大変なことになります」
「大径木問題」
「そうです。そのとおりです」

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