検証・電力システムに関する改革方針

「自然エネルギーですべての電力をまかなう町」の第2部です。

町長の提案は最高 連載小説286

2013年05月13日 | 第2部-小説
3月議会は波乱なく、穏やかに終わった。その夜、大平町長は将太と松本を自宅に呼んでご苦労さん会をしたいと誘った。
酒と料理が用意されていたが大平の妻・京香は居なかった。
 台所から公平が出来上がったばかりのトックリを2つ盆に乗せて持ってくると「無事、終わりました。ご苦労様でした」と言って銚子に注ぐと、だれからともなくご苦労様といいあって乾杯した。

  終わったという安堵が体の内から湧き出す。その中から水蒸気のように湧き上がるものがあった。理事者側の席から見た議場だった。
町長の報告と提案に「よし」「よし」と賛意の声を出す。最後は「異議なし」の一声で3月議会は終わった。
「何事もなく終わりましたが大体あんな感じですか?」
 将太は感想を率直に言った。
「いつもはもう少し、質問はありますが今回は静かでしたね。でも提案がすべて原案通り可決されたのはすごいですよ」
 松本は真顔で言った。
「しかしこれからが大変ですよ。みなさん、しっかりやってください。頼みますよ」 と大平が応えて言った。

確かにその通りだと将太は思った。
3月議会に総出力100kWの太陽光発電パネルを町有地に設置することを提案した。世の中メガワットと騒いでいる中で100kWは10分の1という規模だが財政が乏しい占部町としては7年ぶりに取り組む町単独事業だった。事業資金は結局、地方債を起債してまかなうことにした。借金を減らし、基金を積み増しする国の地方財政健全化方針の指導を受け、占部町は職員の定数削減と俸給の減額をはじめ、さまざまな経費削減、そして使用料・利用料の引き上げをしてきた。しかしそれで町が活気を取り戻したかといえば逆だった。庁舎のトイレが破れたまま、ガムテープでふさいでいるのはなんとも格好が悪い。

「今回、借金をすることになるがこの事業は確実に収益がある。占部町再生のチャンスです。このチャンスを生かして収益を上げる。その収益で町財政を強化して、町独自の事業ができるようにしたい。今回の事業はそのスタートですと言った町長のあの最後の言葉、あれは良かったなあ」

 松本は3月議会で町長がした言葉を生き生きと蘇らせた。将太がその横顔を見ると目が光っていた。
「町長の話は良かったですか」
 将太の質問に松本は「最高!」と言うと、手のひらで涙をぬぐった。

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