夏原 想の少数異見 ーすべてを疑えー

混迷する世界で「真実はこの一点にあるとまでは断定できないが、おぼろげながらこの辺にありそうだ」を自分自身の言葉で追求する

アフガニスタン 西側メディアのフェイク報道 

2021-09-04 09:39:47 | 政治
 

 アフガニスタンから脱出を望む多くの住民は内戦が原因
  
 西側メディアは、タリバンの権力掌握後、アフガニスタンから脱出を試みる人びとの報道を続けている。英BBCも米CNNも、カブール空港の大混乱や陸路、隣国パキスタンなどへ出国を待つ人びとの映像を流し続けている。あたかもアフガニスタンからの脱出する人びとは、タリバンの権力掌握後に発生しているかのように見える。しかし、それは本当なのだろうか?
 
 国連のUNHCRによれば、2020年の時点で、アフガン難民は290万人以上であり、逃避先としては、最も多くがパキスタンで150万人、次がイランで80万人以上に上っているという。世界中の難民数で、シリアに次いで多いのがアフガン難民なのである。UNHCRは「40年間の紛争が生んだアフガン難民」という言葉を使い、 その主な原因は、1979年のソ連の軍事進攻以来の内戦だとはっきりと言明している。それはタリバンの圧政以前に、ソ連による軍事進攻から大量に発生し、ソ連軍対イスラムゲリラ、北部同盟など軍閥対イスラムゲリラ、イスラムジハード主義者どうしの戦闘、米軍対イスラムゲリラなどの内戦によるものなのである。軍事衝突によって、巻き添えで殺され、家を焼かれ、住居も食料も失った多くの住民の生存の危機が多くの難民を生み出しているのである。
 
 バイデンの米軍撤退の決断に対して批判が巻き起こったが、その中で、最悪なのは「『最も長い戦争』を終わらせるという愚かな政治的スローガン 」という言葉を使ったトニー・ブレアのものだろう。虚偽の証拠に基づきイラク戦争を始めたこの元英国首相は、自分の過ちを反省するどころか、愚論を繰り返し主張している。ブレアは「アフガニスタンとその国民を見捨てることは 悲劇的」で、「イギリスとアメリカには、退避の必要があるすべての人が安全に国外に脱出するまで、アフガニスタンに留まる 」べきだと主張した。この愚かな政治家は、「退避の必要があるすべて人」がタリバンの復権以前に、数百万人もいた事実を完全に無視しているのだ。ブレアにとっては、アフガニスタン住民など「人」ではないかのようだ。また、このブレアの主張は外国の軍隊が領土内に存在することが、タリバンやその他のイスラムジハード主義者にとっての攻撃対象となり、軍事衝突によって命と生活が脅かされる人びとがいるという現実も完全に無視している。8月29日に米軍の攻撃で9人もの民間人が巻き添えで死んだことが、その象徴的な出来事だ。
 
 英BBCや米CNNが、タリバンの復権後に脱出を試みる人びとだけを報道することは、ブレアの主張を後押しすることになるのは明らかだ。視聴者は、40年間にわたりアフガン難民がいた事実を忘れ、タリバンの圧政だけが問題だと誤解する。そのことは、多くの視聴者が、タリバンの圧政に対抗する軍事介入を正当だと考える、その材料になるのだ。
 
 確かに、タリバンの圧政に逃げ出す多くの人びとがいることは事実だ。しかし、それ以前に数百万人の難民が存在することも事実なのである。そのどちらかしか報道しなければ、真実からはほど遠い。まさに、Fake虚報なのである。

 2003年の国連演説で、フランス外相のドミニク・ド・ヴィルパンは、アメリカのイラクへの軍事介入に「戦争と占領と蛮行を経験した古い国」だからこそ反対すると言った。その中で、「軍事介入は、すでに傷つき脆弱なこの地域の安定に、計り知れない深刻な結果をもたらすだろう。不正義に対する感情を増幅し、緊張を深刻化させ、さらなる紛争の引き金になりかねない。 」とも言っている。この言葉は、当然イラクにもアフガニスタンにも当てはまる。この演説に、国連議場内は総立ちで拍手が起きたのだが、ブレアも西側メディアも、100%そのことを忘れているのだ。
 

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