オリンピックの開会式のNHKのテレビ視聴率は、56.4%(ビデオリサーチ社)と、1964年東京大会(関東地区61.2%)に迫る高視聴率となった。テレビ・新聞は日本人選手の「活躍」を連日報道し、国民の熱気を煽っている。さぞ、国民は菅政権の失政を忘れ、オリンピックに熱中しているかのようにも見える。
しかしながら、オリンピックが開催された7月23日~25日の日経新聞とテレ東の世論調査では、内閣支持率が前回調査の6月から9ポイント低下の34%で、2020年9月に政権が発足してから最低となった。 開催以前の調査でも、7月9日~11日の政権応援団の読売新聞のものでも(読売新聞の世論調査は、質問文が政権に都合のいいように出るよう工夫されている。そのため、他のメディアより内閣支持率が高く出る。)、内閣支持率は37%と横ばいだったが、不支持率が53%(前回50%)に上がるなど、支持率の低下傾向が続いていた。それを挽回すべく、五輪の強行開催に打って出たのだが、開催後の世論調査でも、支持率低下に歯止めはかからなかったのだ。
25日には、金メダルを獲得した髙藤直寿選手に、菅首相はお祝い電話をかけた。それを、ご丁寧にも、首相官邸のホームページでも動画付きで報じるなど、五輪に便乗しての人気回復に余念がない。与党幹部は、多数派の五輪中止の世論に「日本人選手の金メダルラッシュで、状況は一変する」と言ったが、そうはなりそうもなく、支持率回復はできそうもないのである。
当然のことである。国民は、日本人選手のメダル獲得は、菅首相のおかげなどではないことを知っている。日本人選手を応援するが、コロナ危機が深刻さを増しているのを忘れるはずがないからだ。
五輪開催の東京は、27日新規陽性確認者2,848人となり、1週間平均でも149%と爆発的な感染拡大が続いている。それでも菅首相は、記者団の五輪中止の質問に「人流も減っているので、そこはありえません」とまったく根拠なく答えている(朝日新聞27日)。それ以前にも、菅首相は重症者・死者は増えていないことを強調し、危険な状況にあることをを否定しているが、現実は、高齢者の感染は減ったとしても、それ以下の世代の爆発的感染拡大は、中等・軽症の著しい増加とその後の重症化を招くことは避けられず、医療の崩壊が迫っているが実情である。
五輪の感染予防バブル方式の「穴」も避けられないが、それ以上に、「五輪をやっているのだから、自分たちだけ我慢するのは不公平」という意識を醸成させ、主に外での飲食の抑制だけという感染予防策では、所謂人流を抑制することはできない。日経新聞が25日、「都内飲食店の5割超、時短応じず」と報道しているように、緊急事態宣言の感染予防策はまったく機能していない。
五輪のお祭りムードがある以上、行動抑制は歯止めが効かなくっており、ワクチンによる予防効果は高齢者のみで、感染が減少する要因なゼロとなっている。新規陽性確認者の増加は止まることはあり得ず、その数字は未知の領域に突入する。その中で、たとえ多額の放映権料を支払ったテレビ各局とはいえ、五輪報道を辞めることはできないが、厳しさを増す感染状況を無視することはできないだろう。新聞では、東京、毎日、朝日は、紙面で感染の状況を表す記事は増えており、菅政権応援団の読売、産経も、今のところ、感染状況の記事を五輪関連記事の片隅に置いているが、いずれ五輪より感染状況にスポットを当てる記事を書かざるを得ないだろう。
支持率回復のための五輪強行開催は、完全に裏目に出たのである。自民党は、このままでは、衆院選の敗北は決定的である。当然、首相の「首の架け替え」論が噴出すのは必至だろう。5月27日に安倍前首相は、菅の後任候補に4人の名前を挙げたが、恐らくは、安倍自身が再再度、首相になりたがっているのは、間違いない。
いずれにしても、そのような状況では、菅は自分から辞職を言い出す可能性が高い。記者会見での、おどおどした自信のない表情は、精神状態をも表している。安倍がそうであったように、精神状態から疾患に陥り、入院という構図が繰り返される可能性は高い。
結局のところ、菅にとっては、最悪の結果ということになるだろう。しかし本当のところは、最悪なのは、コロナウイルスに蹂躙されつつある国民の方である。無能な政府のせいで、国民は甚大な被害を被るのである。
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