SVO言語(中・英)とSOV言語(日)
“被征服(交流)”言語と“非征服(非交流)”言語
永井津記夫(ツイッター:https://twitter.com/eternalitywell)
私は2019年1月に発信したツイートで、“監視カメラ”に関連して、中国と米国は相互によく似ているという事に言及した。次のような文章である(一部修正してある)。
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米国と中国はよく似ている。政治体制はいちおう極端に異なるように見える。民主主義体制と一党独裁体制である。が、米国の富裕層の1%が米国の富の50%を握り、この1%を含む10%が富の90%を握っているという極端な格差社会となっている。中国では共産党員の中の一部の特権階級が利権とワイロによって巨大な資産を蓄えているとされ、一般共産党員などを除外した特権共産党幹部とその他のものの資産の格差は米国以上であろう。この「富裕層」と「一般庶民」の極端な格差が米中で似ているのだ。
また、米国では9.11テロ以降に個人情報の窃取を強行し監視カメラ網を張り巡らしている。一方、中国はウィグル人などのテロを怖れて精度の高い顔認証機能を有する監視カメラと情報窃取を続けて国民を監視している。両国は情報窃取と監視カメラ大国として非常に似ている。
もう一つ米中は言語においても似ている。両国ともS(主語)V(動詞)O(目的語)言語、主語のすぐ後に動詞が来る言語である。日本語やアイヌ語、朝鮮語、モンゴル語等はSOVという語順の言語、つまり、 動詞で終わる言語だ。世界には日本語と同じSOV型の言語が一番多い。
英語と同じSVOの語順は、私見では異民族の支配を長く受けたことを示す。英語は11世紀ノルマン人による征服があった。中国は中原をめぐって多数の民族が争った。「民」という漢字の字源は目をつぶされた奴隷を示す。中国の農業戸籍を持つ人々は安い賃金で働かされる現代の“奴隷”だと言う中国研究者がいる。米国は南北戦争まで奴隷制を維持していた。米中はこの点でもよく似ている。
(※ I (S) learn (V) English(O). 我(S) 学(V) 英語(O)。 私は(S) 英語を(O) 学ぶ(V)。 S=subject=主語 ; V=verb= 動詞; O=object=目的語)
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古英語で記述された8世紀の叙事詩『ベオウルフ』を見ると日本語と同じく動詞で終わる文もかなりあり、今のように固定された語順ではない。ラテン語やギリシア語を含めて印欧語は古くは日本語と同じく動詞で終わる言語であった可能性が高いとする研究者もいる。なぜなら、印欧語の最古の言語、ヒッタイト語は動詞で終わっているからだ。また、印欧語に属する(現在使われている)ヒンディー語も日本語と同じく文は動詞で終わるのが原則である。
現在、英語はSVO式言語と言われ、語順に自由度が少なく、固定しているが、古英語はそうではなかった。私は大学時代、中英語(Middle English)の講座も受講し、多少、古英語(Old English)の勉強もした。英語も古くは、ラテン語と同じように名詞に格変化があり、動詞も人称によって複雑な屈折変化があった。私は次の古英語を見て、心の底から驚いた。8世紀初頭に作られた英国最古の英雄叙事詩Beowulf(ベオウルフ)の中に次のような文がある。
ic hine sweorde swebban nylle.
I him a-sword-with slay not-will →I will not slay him with a sword.
私は 彼を 剣-で 殺さ ない-つもりだ。
※“sweorde”は“sweord(剣…単数)”の対格で、語尾の“e”は日本語の「で」に相当。“nylle=ne(ない)+wille(つもりだ、だろう)=not will(ないつもりだ、ないだろう)”
つまり、古英語で書かれたベオウルフの上文は、日本語と同じ語順である。とくに、“nylle(ないつもりだ)”に一番おどろいた、否定語と助動詞の連接が日本語とまったく同じ語順だったからだ。古い英語は日本語と同じような語順でも話される場合も少なくなかった(動詞で終わる場合もあるが、日本語のように動詞で終わるのが原則ではなく、語順が自由というのが一般的学者の見解)。というより、世界中の言語はもともとは日本語と同じように動詞で終わっていた、とする研究がある。
『ユーラシア語族の可能性』(岸本通夫著1971年 神戸学術出版刊) には、ユーラシア大陸に分布する諸語、印欧語、ウラル語、アルタイ諸語は同じ祖語を持つという考えが示されている。英語やドイツ語やラテン語、ギリシア語などの印欧語も古くは動詞で終わっていたと岸本氏は述べている。彼は、ラテン語やギリシア語も古い文献になるほど動詞で終わる文が多くなる、それに最古の印欧語とされるヒッタイト語は日本語と同様に動詞で終わる、と説く。つまり、SVO文型の総元締めのような印欧語(インド・ヨーロッパ語)ですら、古くは動詞で終わっていたと考えて大きな間違いはないと私も考えている。日本語、アイヌ語、朝鮮語、モンゴル語、トルコ語などはSOV型の動詞で終わる言語であり、この動詞で終わる言語が世界の諸言語で約半数を占め、最も多いのである。これは、人間の標準的な思考の流れがSOVであることを示しているのであろう。
現在の英語がなぜSVO型の言語に固定してしまったのか。この問いに対する私の答は簡単である。異言語を話す集団の衝突(=征服・支配)と交流の結果である。最初、ブリテン島ではケルト語を話す住民が住んでいたが、5世紀にゲルマン民族の一部族のアングロ族が、ついでサクソン族がブリテン島に侵攻し、ケルト語を話す住民を駆逐した。この時にゲルマン系統(古代ドイツ語)の言語を話すアングロサクソン語(古代英語)とケルト語の接触が起こったと考えられる。そして、1066年にノルマン人の征服によって、征服者、つまり、支配層の話すフランス語と現地住民の話す英語の接触によって、“外国人”が話すのに面倒な動詞の屈折変化や名詞や形容詞の性(男・女・中)や語尾変化が消滅していき、おそらく、異言語話者同士での一番理解が簡単なSとVが最初に結びつく語順が確定していった、と思われる。そして、動詞の屈折変化や名詞や形容詞の語尾変化が消滅していった結果、孤立語に近い現在の英語ができあがっていった、と考えてよいだろう。
この英語と同様にドイツ語やフランス語も英語ほどではないが(動詞の人称変化がまだかなり残っており、ドイツ語では従属節中ではSOVの語順になる)、SVO言語になっている。ヨーロッパ大陸も他民族が複雑に交錯し、支配・被支配の変化が繰り返されたと考えてよい。
漢語(中国語)も英語と同様な変化が生じたと私は考えている。中国の中原は“古代漢民族”と北方等の諸民族が接触し、闘争し、征服と被征服、回復と支配を繰り返したたところと言える。その結果、言語も英語と同じように、孤立語化したと思われる。漢語は典型的な“孤立語”とされているが、一人称代名詞の「我」と「吾」は英語の「I」と「me」のように元は代名詞の格変化を表していたとする研究者もいる。つまり、他民族(複数民族)の接触、交流、闘争、征服、支配、被支配のある地域では言語がSVO化しやすく、孤立語化しやすいのではないか、と私は考えている。 (2022年8月10日記)
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※中国と米国がよく似ているのは、支配層の中に「“商人“=殷人の遺民・流浪の民の末裔」と「“ユダヤ人“=故国を破壊され奴隷化され流浪の民・商人となった者の末裔”が多数いて巣くっているように思われることである。
現在の米国の(主として民主党)政権に寄生して世界を支配しようとするDS(Deep State)は、大多数ユダヤの流浪の民の末裔で、奴隷にされてきた(あるいは奴隷状態に近い差別的状況の中で暮らさざるえなかった)怨念のDNAと(その奴隷状態を逆転させ)世界の人々を奴隷的に支配しようとする強欲のDNAとを深層意識に併せ持つ支配層(≒金儲け第一主義の商売人)である。世界の人々を幸せにしようとする哲学や宗教心は持ち合わせていない(世界には敬虔なユダヤ教徒が多数いることはよく承知している)。 同様に、現在の中国の支配層も米国の支配層のユダヤ人と同じような“怨念”のDNAを持っている。
この“怨念”が米国人大衆の不幸であり、中国人大衆の不幸である。中国や米国の現在の状況はその国に住む人々を幸せにしないし、世界の人々の利益(=安全・名誉・幸福・平和)を損なう。(2022年8月17日追記)