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トランプ大統領が使った“restore its promise”の深遠な意味

2017-05-27 21:29:44 | 時事問題
 トランプ大統領就任演説の中の“restore its promise” の考察

 池上彰氏は、2017年1月27日付けの朝日新聞朝刊「池上彰 新聞ななめ読み」のコーナーで、トランプ氏の大統領就任演説の中の英語に言及し、“restore its promise”を取り上げています。この部分は演説の冒頭部の謝辞の後に来ます。文の全体を示すと、
   We, the citizens of America, are now joined in a great national effort to rebuild our country and restore its promise for all of our people.
となります。問題部分はそのままにして私の訳を示すと、
 
私たち米国民はいま一丸となって、米国を再建し、全国民に対する米国の約束をrestoreする素晴らしい国民的取り組みをしているのです。

 池上氏が引用している各社の日本語訳は以下のようになっています。
 
「私たち米国市民は今,国を再建し,すべての国民に対する約束を復活させるための偉大で国民的な取り組みに加わっている」(読売)  
 「我々,米国民はいま,我々の国を再建し,全ての米国民への約束を復活させる国を挙げての偉大な努力に結集した」(日経)
 「私たち米国民は今,国を立て直し,すべての国民に対する約束を守るという偉大で国民的な取り組みを始めたところです」(毎日)
 「私たち米国民は今,自国を再建し,全ての国民にとって可能性をよみがえらせる壮大な国民的取り組みのために,一つにまとまっています」(朝日)

 池上氏はrestore its promiseの部分を問題にして、毎日の「約束を守る」という訳がいちばんこなれている、としています。しかし、この「約束」が何かについては言及していません。池上氏はこの「約束」を自明のことと考えたのだと思います。トランプ氏は「国境を守る」「雇用を取り戻す」「公道や橋や空港を建設する」など、演説の中で複数の“公約”に言及していますから、池上氏はこれらの約束だと見たのかもしれません。しかし、its promiseのpromiseは単数です。
 トランプ氏の演説の前半の要点は、自分が大統領に就任したことによって米国の統治を一部の支配層から国民にかえすことになったということです。彼は、
 What truly matters is not which party controls our government, but whether our government is controlled by the people. January 20th 2017, will be remembered as the day the people became the rulers of this nation again. (本当に大切なことはどの党が我が国の政治を支配するかではなく、我が国の政治を支配するのが国民かということです。2017年1月20日は国民がこの国の統治者になった日として記憶されることになるでしょう)
というように、“国民”が米国の統治者(支配者)であることを明言しています。彼は演説の中で、「国民が国を支配する」こと、つまり、真の意味での「国民主権=democracy(demo=民衆 cracy=統治)=国民統治」を説いているのです。
 これに関して、米国史上もっとも有名で尊敬されているといっても過言ではないリンカーン大統領の次の言葉を思いだします。
   government of the people, by the people, for the people
(人民の、人民による、人民のための政治)…peopleを「人民」と訳すのは伝統的訳。「国民」と訳すこともできます。 政治=統治すること、人民の政治=人民を統治すること(cf. 子供の救助=子供を救助すること)と解すると、「人民が人民のために人民を統治すること」の意になります。昔はgovernment of the people, by the king, for the noble and the rich (王が貴族と金持ちのために人民を統治すること) でした。しかし、この考えには異論があります。 of the peopleのof は主格のofと目的格のofがあり、ofを主格と解せば、of the peopleは「人民が(統治すること)」となり、by the peopleと同意になります。その場合は、by the people, for the peopleはof the peopleの意味を補強していることになります。民主主義の権化のようなリンカーン大統領が「人民を統治すること」と最初に言うかどうかを考えると、ofを主格に解するほうがよいのかもしれません。英語のdemocracyはギリシア語に由来しますが、語源はdemo=民衆、cracy=統治で、「民衆が統治すること」です。したがって、「人民の人民による人民のための政治」という定訳に従い、ofを主格と解するほうがよさそうです。

 「人民の人民による人民のための政治」、つまり、うそ偽りのない本物の「国民主権の政治」、「民衆による政治」が昔からの米国の約束であり、トランプ氏はこの約束をrestoreすると言っていると考えられます。rebuildを「再建する」と訳せば、それに合わせて「再履行する」か「再実行する」という訳が考えられます。が、米国の悲惨な状況、rusted-factories scattered like tombstones(さび付いた工場群が墓石のように点在し)とあり、まるで、戦場跡のような表現があるので、rebuidは「復興する」と訳した方がよいかもしれません。そうすると、restoreも「復活させる」と訳せます。原文はrebuild、restoreというように re-という“頭韻”を踏んでいるので、訳も「復興」「復活」と訳して「復」で頭韻を踏んでおこうと思います。nationalもここでは「国民的」ではなく「全国的」と訳すほうがよさそうです。
 最終的な私の訳は、
私たち米国民はいま一丸となって、米国を復興し、全国民に対する米国の約束を復活させる素晴らしい全国的な取り組みをしているのです。
となります。トランプ氏は今までの米国の政治形態は、就任演説の言葉を使えば、
  government over the people, by a small group in our nation’ s Capital, for the establishment
  首都にいる小集団が、支配階層(既得権層)のために国民を統治すること

と認識していることになります。私もこの認識は大筋において正しいと思います。米国社会の貧富の差の拡大、つまり、国民の間の“南北問題”をトランプ氏はトランプ流に解決しようとしているだと思われます。国民間の南北問題、国家間の南北問題は貧の側に属する人々に大きな怨念を生じさせ、それが現在の世界を混乱に陥れている大きな原因となっています。
 イスラム過激組織ISも二つの南北問題の結果として生みだされたと私は考えます。日本の政府もマスコミもようやくこの“南北問題”に気づいたようです。日本の政府は世界のグローバリズムの潮流に乗り遅れまいとして、マスコミはその潮流を無批判に受け入れ、結果として、国内外の南北問題の助長に手を貸してきたふしがありますが、今こそ立ち止まるべき時です。世界一貧富の差が少ない社会をつくり出したと言われた日本社会にも大きな格差、貧富の差が生まれています。貧の側にいて、夢をいだけず、自暴自棄になった人たち(若者とはかぎりません)がいつ大きなテロを起こしても不思議ではありません。

 さて、これで、restore its promiseの意味が明確になったことと思います。a small group in our nation’s Capitalは、首都ワシントンを牛耳っている大統領とその側近とそれを支える議員集団をさし、establishmentはその小集団と権益を享受する財界を指していると考えられます。トランプ氏はこの政治状況を、by the people, for the people(国民が国民のために)に変えるのだと宣言しているのです。
 この就任演説の書き手(トランプ氏自身だとされています)は、「主権在民」を歌いあげたリンカーン大統領のゲティスバーグの演説を念頭に、この演説原稿を書いたのだと思います。リンカーンは奴隷制を廃止するために南北戦争を決断し実行した人権尊重の権化のような大統領であるのに対して、トランプ氏は移民政策や不法移民対策においても“人権尊重”を重視する大統領にはとても見えません。女性差別的な言動を過去にしたことでも問題となりました。
 米国メディアは、自分たちをフェイク(インチキ)呼ばわりするトランプ大統領に対して好意をいだいていないためでしょうが、彼の演説の重要な要素、
transferring power from Washington, D.C. and giving it back to you, the American People …権力をワシントンから米国民にもどす
its promise米国の約束=government of the people, by the people, for the people ∴restore its promise=restore government of the people, by the people, for the people

を、米国の政治の神様とも言えるリンカーン大統領の演説に結びつけるのは意識的にせよ無意識的にせよ避けているのでしょう。しかし、トランプ氏はリンカーン大統領を意識してこの演説の原稿を書いているはずです。この点においてトランプ氏は立派な大統領になろうと努めていると思われますが、the peopleの中身が問題です。「忘れられた人たち」に目を向ける政治は非常に重要です。が、同時に「排除されてきた人たち」「排除されそうな人たち」にどう対処するのかもきわめて重要です。
 トランプ大統領の就任演説は平易で、内容も明確です。池上彰氏は「使う英文がアメリカの小学生レベルで、英語が苦手な人にも理解が容易」、「大統領の就任演説としては格調に著しく欠けます」としています。私は、この池上氏の見解に、やや同調できないところがあります。英語は平易と言えますが、「平易な英語」を書くことは平易なことではありません。言語は話すことが一番やさしく、次が「読むこと」で、一番むずかしいのが「書くこと」です。
 豊富な語彙で、内容をあいまいにしながら書く方が、書くことに長けた者にとって、はるかに簡単です。日本語でも同様です。話すことを“商売”にしている人たち、たとえば、国会議員や芸能人の中で自分の意見を文章にまとめて書くことができる人がどのくらいの割合でいるでしょうか。書くことが一番むずかしいことは書くことを“商売”にしているジャーナリストならよくわかるはずです。トランプ大統領がみずから就任演説の原稿を書いたとするなら、彼はかなりの書き手であることは明らかです。
 なお、トランプ大統領の就任演説の和訳は各新聞社がhighwayを「高速道路」と訳すなどまちがいがあり、NHKの速報で出た和訳にはかなりの誤訳があります(英語highwayは「幹線道路」「公道」という意味)。それは次の小論で示したいと考えています。(2017-5-27記)

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追加修正:
 「President Trump’s address government of the people」という語句を入れてインターネット検索すると、CNNのサイトに、トランプ氏が2016年10月末にリンカーン大統領が有名な演説を行なったゲティスバーグで演説し、次のことを発言したとの記述があります。
We will drain the swamp in Washington, D.C. and replace it with a new government of, by and for the people. Believe me.(私たちはワシントンの湿地の水抜きを実行し、そこを人民の人民による人民の政府に置き換えます) 
[ 参照 http://transcripts.cnn.com/TRANSCRIPTS/1610/22/cnr.03.html]

NPR(National Public Radio)のサイトには、トランプ氏の発表した(released)公約の締めくくりの言葉として、
And if we follow these steps, we will once more have a government of, by and for the people. (そして、これらの段階を踏んでいけば、私たちはもう一度人民の人民による人民のための政治を手に入れることになります)
 ※もう一度手に入れる=復活させる=restore
 他のニュースサイトにも同様の記述があり、トランプ氏は選挙演説中にリンカーンの有名な民主政治の原理を述べた言葉を自分の演説で引用していたことが分かります。そうすると、彼が大統領就任演説で用いた“restore its promise”の“its promise”は「米国の約束」、リンカーンがゲティスバーグで宣言した「government of the people, by the people, for the people(人民の人民による人民のための政治)」のことであると断定してよいと思われます。restoreは「復活させる」という意味なのでrestore its promiseは「真の国民主権の政治を復活させる」という意味になります。(2017年6月4日記)