北野進の活動日記

志賀原発の廃炉に向けた取り組みや珠洲の情報、ときにはうちの庭の様子も紹介。

原発擁護、推進に突き進む寺島実郎氏

2012-05-13 | 脱原発
 先週のサンデーモーニング。
 コメンテーターとして発言した寺島実郎氏は原発再稼働を巡る政府の対応について、大飯3、4号機は福島第一と違って最新型なんだから安全なんだ、政府はそこをちゃんと地元に説明しなきゃだめだ、という趣旨の発言をしていた。

 私はこれまで、寺島氏の原発擁護の理屈について、下記の一文に象徴的に示されていると思ってきた。

 「私は原発推進論者ではないが、日本は、原子力の平和利用に徹して世界的に最も高いレベルの技術を蓄積し、それ故にこそ兵器としての核の廃絶と不拡散を主導する、という筋を通すべきだと考える。」(「世界」2007年1月号「能力のレッスン ― 軽率に『核保有』を議論してはいけない理由」より)

 要するに核兵器の廃絶こそ日本が最も重要視すべき課題であり、そのためには原子力の「平和」利用に取り組み、世界をリードできるだけの高度な原子力技術をもつべきだというのである。
 この論理自体、理解し難いものであるが、仮にこの論理を前提にしても、福島の事故で「高度な原子力技術の蓄積で核廃絶を主導する」という彼の核廃絶の道筋は破たんしたはずだった。
 
 ところが3.11後も彼は基本的にこの思考の枠組みにこだわり続けている。
 「世界」の2012年6月号の「能力のレッスン」でも、日本の取るべき原子力政策の選択肢として「核の傘の段階的相対化とそのための原子力の基盤技術の維持・蓄積」を主張している。
 
 この道を選択すべき理由として、2006年に東芝がウェスチングハウスと、2007年に日立がGE、三菱がフランス・アレバと合弁会社を設立し、日本が世界の原子力産業の中核主体となった現実を指摘している。日本が世界の原子力産業の主役なんだから、その中で発言基盤を強化することが「核兵器廃絶」に向けて重要だという論理である。

 この論理は二重の意味で悪質だと私は思う。

 まず、世界の核保有国は、米国に限らず原子力の商業利用も軍事利用も一体として進めてきた。日本の原子力産業が「日米原子力共同体」の構造に浸ったということはまさに米国の核戦略に組み込まれたことを意味するわけで、そんな中で核廃絶を主導できるわけがない。まさに空論である。100歩譲って核兵器廃絶の理想を抱いていたとしても、まさに「ミイラ取りがミイラになった」構造そのものである。
 寺島氏の論理は、「核兵器廃絶への手段」を言い訳に、日本の原子力産業を米国の核戦略に組み込ませるものでしかない。

 2つ目は、「核兵器廃絶」という日本の国是を利用して、原発の再稼働を後押しし、原子力産業の存続を全面的に擁護しているということである。
 「核兵器廃絶」を錦の御旗にして、保安院や斑目原子力安全委員長でさえ思いつかない「大飯は最新型だから安全」というデタラメな論理で再稼働を主張する寺島氏は、フクシマから何も学んでいないと思わざるをえない。

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