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相田家のグッドバイ Running in the Blood (幻冬舎文庫) |
森 博嗣 | |
幻冬舎 表紙の写真に魅かれて借りてみました。 多分私と同じ世代の人の写真だろうと思ったのですが当たっていました。 昭和の高度成長期に育った長男の言葉で語られていくこの両親と子どもの話です。 どこにでも居そうなこの父親と母親。 外部から見ればきちんと仕事をして家族を養っている父親と きちんと主婦をしてちゃんと二人の子どもを育てあげた母親 そして大学教授になる息子と、結婚して双子を産む妹。 淡々とその日常が語られて「これはいったい何の話なんだろう?」と思いながら読み進むと 話は思いもよらぬ方向に進んで行きます。 きちんと正しい主婦、妻、母親だった母親は生ごみ以外の物を全て、そう全く全て捨てずに保存しておく人であり 例えばお弁当に入っているビニールのバランを綺麗に洗って束にして空き箱にぎっちり詰めてあるとか 空き缶の中はマトリョーシカ状態に缶が詰まっている。衣類から子どものテストの紙、工作作品の全てなどなどです。 広い家と庭に建てられた倉庫二つのほとんどがその溜め込まれた、言ってしまえばきちんと整理整頓されたゴミに埋め尽くされて いてそのまま母は亡くなります。 建築設計士として個人事務所を経営していた父は、家族に対しての「情」と言えるものは皆無で もしかして「愛」はあったのかもしれないけど、子どもも孫も別に可愛いと思ってなどいないようで どんどん無口に、そして無言になり、誰とも関わらず 日がな一日真っ暗な家の中でテレビもつけず、いつもの椅子に腰かけて過ごし 次第に食事もせず着かえもせず入浴もせずにただ座っているようになるのです。 それでもボケてしまったりはぜず、息子や娘を頼るでもな最晩年は施設に自分から入りそして亡くなります。 息子と娘もきちんとした人で、別に遺産相続で揉めるでもなく 淡々といろんなことをこなしていくのですが、残された家には膨大な収拾された物が詰まり 通帳も印鑑も保険証書も現金もバラバラにそのゴミの中に隠されているを 息子夫婦は根気よく発掘していき、3年かかった後に今後どうするか?を夫婦で話し合うのです。 この時に妻が「私たち自由なのよ。引っ越しましょう」と言って行動に出ます。 3年かかっても全てのゴミが片付いたわけでなく、友人10人が集まってくれて 総出で家探しをして現金や宝石などが出てきた後に業者に依頼して重機で中も家財道具も何もかも いしょくたに家を壊して産業廃棄物として処分してしまうのです。 両親の遺灰は海に撒き、一切の痕跡を消してしまって息子夫婦はイギリスに転居して行くのです。 私がなぜこんなに詳細にこの内容を書くのかと言うと 夫の両親のゴミ屋敷を片付けたときとよく似た状況だということと 私の実家のこれからのことをいつも、ずっと考えるのですが 私が父も姉もいなくなったらあの家をどうやって片付け処分すればいいのか? 考えても仕方のないことですが、これはいつもずっと私の中にある問題なのです。 残すという選択肢はないのですが、中に詰まっている沢山の生活の記録と記憶と物達と どう決着をつければいいのか?それが分からないからです。 もし兄でもいてあの家を継いでいるのなら、住んでいる人の良いようにして・・・と言えるのですけど とにかく私は実家の家の最後の総決算を任されているようなものなのです。 まあ、私が先に死んでしまったらこのことは無しになるのですけどね。 この本に出会って「そうなのか~~・・・すべてを跡形もなく消してしまうことはありなんだ・・・」と 目から鱗が落ちた気がしたのです。 少し気分が楽になりました。
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