ひろし君の読書や旅日記

昨日より今日が少しは面白くなるかな て思って

『家を失う人々』にアメリカの貧困を感じる

2024-03-04 10:17:23 | 読書感想
マシュー・デスモンドと言うアメリカの社会学者が書いた「家を失う人々」を読みました。この本は、所謂社会学者が書く、多くの統計資料の羅列で読んでいて何が問題なのか良く分からなくなる物とは違い、現地での体験を生々しく書いてとても読み応えが有ります。日本でも貧困は、とても深刻な問題として有ります。日本では多くの場合、子供たちや高齢者にフォーカスされた報道を見ますが、アメリカでは人種的な問題も関係したより複雑な事として有るようです。この本に書かれている内容は、2008年5月から2009年12月の間に著者が体験した事がもとになっていますが、現状はその後のコロナ禍やトランプの愚行に因って更に悪化していると思います。ではどうして「家を失う」のでしょうか? それは、この本の原題のEVICKEDの訳語「追い出された」を見とハッキリします。具体的な例が本の冒頭のプロローグから始まりす。
家主がドアが壊れていることに気づき、アーリーンと息子たちを退去させることにしたのは、一家がここで暮らすようになってから、八か月がすぎたときだった。立ち退き期限の日は、おそろしく寒かった。だが、これ以上ぐずぐずしようものなら、家主が郡の保安官を呼ぶだろう。銃を腰にさした保安官は、長靴姿の引っ越し業者一団を連れてきて、この家はもうおまえの家ではない、と記された強制退去の執行状をもっているはずだ。
この様な状況は、日本では通常の家屋の立ち退きなどでは有り得ない事ですが、この本の中ではアメリカでは当たり前の事として行わているそうです。そしてこの本に書かれていますが、この様な事が家屋の所有者に多くの利益をもたらしていて「スラムはおいしい」と言う言葉があるそうです。日本でも、とくに生活保護を受けている人々を対象とした「貧困ビジネス」と呼ばれる業態が有りますが、内容はかなり異なる様に感じます。この本でも触れられていますが、この立ち退きの先には路上ホームレスが広がっている様です。

では、どうしたらいいのか、と言う話はとても難しい事のようです。  アメリカの貧困の一端に触れた感じでした。