ささやんの天邪鬼 座右の迷言

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

兵役をめぐる戦時下のウクライナ

2024-03-17 11:45:56 | 日記
きょうの朝日新聞に、次のような見出しの記事がのっていた。


戦時下の法案、撤回・修正 混迷の兵士動員、拡大恐れるウクライナ国民


ウクライナの現状を伝えようとする記事だが、私が仄聞している情報に照らして、この報道はかなり真相に迫っていると感じる。


「〈正義〉の戦争」であれ、「〈不正義〉への抵抗の戦争」であれ、戦時下の現実は、特に兵役をめぐって見苦しい様相を呈する。ロシアの侵攻に果敢に挑むウクライナ軍の反撃を「〈正義〉の抗戦」として礼賛する人が多いが、そういう人にこそ知ってもらいたい(美名とは裏腹の)現実である。


以下、この記事の要所を抜き書きすることにしよう。


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ウクライナの首都キーウ。女性らが並んで抗議の声を上げていた。
「除隊は36カ月後? これじゃあ、まるで刑の言い渡し」
2月6日、議会で兵士動員の法案審議が始まるのに合わせ、約20人が思い思いのカードを手に集まった。2022年、全面侵攻が始まった直後に自ら軍に志願した兵士らの妻や母、恋人たちだ。
法案には、戦時体制下で事実上無期限だった兵役期間に初めて36カ月の期限が盛り込まれた。しかし、それでも兵士らは除隊まで最低であと1年は待たねばならない。


 ■「もう交代だ」
激戦が続く東部バフムート近郊に夫(32)がいるエウヘニア・ボンダレンコさん(31)はこう話す。「侵攻が始まった日、私は『行かないで』と泣いて頼みました。でも、彼は行きました。プログラマーで軍経験もなかったのに。この2年で休暇は10日だけ」。そして訴えた。「彼はもう十分役割を果たしました。だれかが交代すべきです」
 
侵攻開始と同時に戦時体制となり、動員も始まった。当初約35万人とされたウクライナ軍は100万~110万規模に膨らんだ。任務は「戦時体制解除まで」とされ、ほとんどの兵士が今も戦場に残ったままだ。ゼレンスキー大統領は今年2月、兵士の死者を3万1千人と公表。そこに負傷者を加えた人数分の兵士の穴埋めも必要となる。


 ■志願出尽くす
自ら志願する人は出尽くした模様だ。各州の軍事委員会による動員は思うようには進まない。登録と異なる住所に移り、召喚状の受領を避ける人も多い。
昨年12月の世論調査で74%はたとえ戦争が長引いてもロシアとの一切の妥協を拒むと答えた。今も多くの人が侵略への徹底抗戦を支持する。だが、だれもがそのために命を危険にさらせるわけではない。交代要員の動員が進まなければ、現役兵士は今後も戦場に残るしかない。
「これって公正でしょうか」。昨年10月から女性グループの活動に参加するウハニさんは言葉に力を込めた。


 ■年齢引き下げ、期間「36カ月」明記
政府や軍、議会の対応は混迷している。
ゼレンスキー氏は昨年12月の記者会見で「軍は45万~50万人の動員を求めている」と説明。
一方、軍トップのザルジニー司令官(当時)も1週間後の記者会見で「前線部隊を6カ月で交代させるには現状の少なくとも2倍の人員が必要だ」と動員の必要性を訴える一方、「軍は数字に言及していない」とゼレンスキー氏の発言を否定した。
長引くロシアとの戦いは互いに相手の疲弊を狙う消耗戦に陥った。このままでは体力に勝るロシアが圧倒的に有利だ。
だが、国民の多くは動員拡大を恐れる。2人の発言の食い違いは責任の押し付け合いととられ、2月のザルジニー氏解任の伏線にもなった。
政府は、2月には修正した新法案を提出。新法案で初めて明記された兵役期間は、早期除隊を求める現役兵士の家族らの声にもかかわらず36カ月だ。短い期間で兵士の除隊を認めれば、その分、新たな動員が必要になるためとみられる。


 ■賄賂や偽造、後絶たぬ違法出国
戦時体制下で18歳以上60歳未満の男性は出国を禁止されているが、動員逃れを目的にさまざまな手段で出国を試みる人が後を絶たない。
英BBCウクライナ語放送によると、22年2月から昨年8月までの間に約2万人がルーマニア、モルドバ、ポーランドなど隣国との国境を違法に越えた。関係者らに賄賂を支払うか、書類を偽造して出国許可を得る人も多い。徴兵事務所の汚職事件が各地で相次ぎ、ゼレンスキー氏は昨夏、全州の軍事委員会トップの一斉解任に踏み切った。


 ■産業界に打撃
経済界も動揺している。働き盛りを直撃する動員拡大は、戦時下で苦しむ産業界にさらに打撃を加えかねない。
ウクライナ企業約100社でつくる「欧州ビジネス協会」は1月、声明で「現状でも1人の兵士を6人の納税者で支える状態だ」とし、「経済が安定的に機能しなければ軍も機能しない」と訴えた。
(以上、朝日新聞3月17日付より)


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