ささやんの天邪鬼 座右の迷言

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

ガーシーと冤罪の罠

2023-03-31 14:00:33 | 日記
目から鱗(うろこ)。言われてみて、「あ、な〜んだ、そういうことだったのか」と気づかされ、呆気にとられることがある。

きのうはデイサービスへの「出勤」の日だった。着座して行う集団体操の後で、個別のリハビリを待つ空き時間に、私は(2つの絵を見比べる、子ども騙しのような)「間違い探し」をやるように言われた。

同じにしか見えない2つの絵なのだが、違いが8個あるという。目を皿にして探しても、私には5つしか見つからなかった。気分が悪いので、残りの3つがどれかを、スタッフの(比較的)若い女の子に訊いてみた。

「えーと、ここと、ここと、あとはここですね」
言われてよく見ると、たしかに違っている。
「な〜んだ。参ったな」
私は頭を掻いた。

これと同じ思いを、私はけさ次の記事を見て味わったのである。
「たしかに、そう言えばそうだよな」
起きがけのベッドで、私が目にしたのはこんな記事だった。

26日の『ワイドナショー』(フジテレビ系)に出演した俳優・武田鉄矢(73)。東谷容疑者について『人の悪口を言っただけ』『(悪口を)公に言わない、言った、それだけの差で国際指名手配? パスポートを取り上げられるんですか? どう考えたって、法のはかりがあったら合わないんですよ!』と持論を展開した。
(日刊ゲンダイDIGITAL 3月28日配信)

参院議員だったガーシーこと東谷義和氏(51)は、国会への欠席を続けたため、懲罰として除名処分を受けている。東谷氏は海外にいて帰国できないため、国会へは出席できなかったのだが、なぜ帰国できないのかというと、芸能人や実業家などの著名人に対する暴力行為法違反(常習的脅迫)や名誉棄損で逮捕状と旅券返納命令が出ているためだという。

東谷氏に逮捕状が出されるに至った経緯について、私はそれまで全く疑っていなかった。東谷氏といえば、YouTubeで芸能人のスキャンダルを暴くうるさ型の人として有名だったが、逮捕状が出されたからには、それだけ悪いことをしたのだろう。「カネを払わなければ秘密をバラすぞ!」と、芸能人に対して、脅迫を常習的に行っていたに違いない、そう思っていた。

しかし、これはあくまでも私の想像に過ぎない。東谷氏に逮捕状を出した警察が嫌疑の具体的な内容について話したことではない。だから、嫌疑はただの嫌疑にとどまり、実際には東谷氏が脅迫行為をはたらいていなかった可能性もあることになる。

とすれば、武田鉄矢が言うように、東谷氏は「人の悪口を言っただけ」ということになる。東谷氏は高々「名誉毀損」の罪を犯したに過ぎないのだ。したがって東谷氏は「公に言わない、言った、それだけの差で国際指名手配の対象になり、パスポートを取り上げられる」ことになる。これは「 どう考えたって、法のはかりがあったら合わない」ということになる。

武田鉄矢は、(だれもが考えてもみなかった)東谷氏が冤罪をこうむる可能性を気づかせてくれたと言えるだろう。ところが武田の発言を紹介した「日刊ゲンダイ」の記事は、これを「老害」のなせる業とし、東谷=極悪人とみなす常識的一般人の偏見の域を一歩も出ていない。この記事は、「武田鉄矢」という、旬を過ぎた芸能人をおちょくるだけのゴシップ記事になってしまっており、その点が残念である。
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プーチンがヤバいぞ

2023-03-30 11:25:16 | 日記
びっくりした。それどころではない。そのときの私の気持ちは、文字通り絶望に近かった。ああ、気違いプーチンのせいで核戦争が勃発し、この地球は〈ジ・エンド〉となってしまうかも・・・。
次のようなニュースを読んだ。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は25日、同盟関係にあるベラルーシに戦術核兵器を配備することで、ベラルーシ側と合意したことを明らかにした。
(BBC NEWS Japan 3月26日配信)

ベラルーシに核を配備しようとするプーチンの意図が、私には解らない。いや、意図ははっきりしている。ウクライナを降伏させるために、核兵器を使うつもりだろう。
だが、なぜプーチンはこういう決断をしたのか。それが私には解らない。
というのも、先ごろ中国が発表した(ロシアとウクライナとの)仲介案には、こう謳われているからである。

「8)戦略的リスクの軽減:核兵器は使用されるべきではなく、核戦争は行われるべきではない。」

仲介案12項のうちのこの第8項目を、プーチンが知らなかったはずはない。次のニュースが伝える通りである。

ロシアのプーチン大統領は21日、同国を公式訪問中の中国の習近平国家主席と2日目の会談を行い、両国の戦略的協力に関する合意書に署名した。両首脳はウクライナ停戦に向けた中国の仲介案についても協議し、プーチン氏は平和的解決の基礎とすることができるとの認識を示した。
(ロイター3月22日配信)

中国との戦略的協力に関して合意し、中国の仲介案を戦争の「平和的解決の基礎」にすることができる、と述べながら、プーチンはなぜ中国の仲介案を否定するような行動に出ようとするのか。

一つ考えられるのは、プーチンがこの仲介案を「ただのタテマエ」と捉え、実際の行動には関わらない単なる理念の表明と受け止めた可能性である。ベラルーシに核を配備しても、中国との戦略的協力に関する合意書に違反したことにはならない、とプーチンが理解した可能性は否定できない。

だが、この「理解」は「誤解」だと言わなければならない。中国には、ロ−ウク戦争の平和的終結を望む強い理由があるからである。
一つには、プーチンが中国の仲介案を足蹴にするような挙に出れば、中国は国際社会でメンツを潰されたことになる。
もう一つは、ウクライナは中国にとって、大事な食糧の輸入相手国だという事情がある。次のデータがそれを示している。

ウクライナにとって中国は最大の貿易相手国だ。中国と農業開発プロジェクトをはじめた2012年当時の(ウクライナの)最大の貿易相手国はロシアで、貿易額の29.4%を占めていた。それが減少していくと、16年からは対中貿易が急増。19年に中国がロシアを抜いて最大の貿易相手国となり、21年の貿易額はロシアが6.8%にまで低下したのに対し、中国は13.5%を占めた。
(JBpress 《「ウクライナ戦争、そろそろ停戦してほしい」と中国がジリジリしだした理由》筆者は青沼 陽一郎氏、3月27日配信)

食糧の供給という実利的な事情から、中国は「ロ−ウク戦争」の平和的終結をマジで望んでいる。その中国にとって、核の使用に走ろうとするプーチンの態度は、到底許せないものに違いない。

一方、プーチンからすれば、ウクライナの肩を持ち、停戦のために妥協を強く迫る中国の姿勢は、耐えがたいものに感じられたに違いない。プーチンは中国の反発を承知で、ーーということは中国と手を切るのを覚悟で、孤立無援も仕方がないと思いながら、いわば破れかぶれの態度でベラルーシへの核の配備を決めたのだろう。
だからこそ、プーチンを取り巻く今の情勢は、私には「これはヤバいぞ」と思えるのである。
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教科書検定問題に寄せて

2023-03-29 11:17:41 | 日記
文科省が3月28日、小学校教科書の検定結果を公表した。これに関して、韓国からはさっそく批判の声が上がっている。

外務省報道官は声明で、島根県竹島(韓国名・独島)が『日本固有の領土』と明記されたことを問題視し、『不当な主張が盛り込まれた』と非難した。
また声明は、日本の植民地支配下の徴用問題などを巡る記述について『強制動員に関連する表現が強制性を薄める方向に変更された』と批判。『日本政府が表明してきた歴史に関する謝罪と反省の精神を真摯(しんし)に実践する』よう要求した。

(JIJI.COM 3月28日配信)

相変わらずの日本批判である。領土問題はともかく、徴用問題については、つい先ごろ尹(ユン)大統領が訪日したことで、一応決着がついたのではなかったか。少なくとも、韓国の現政権が決着をめざしたことは事実である。いったん決着した問題を、韓国は性懲りもなくまた蒸し返そうとしているのか。

こう言えば、おそらく韓国側は次のように言い返すに違いない。
「蒸し返そうとしているのは、日本のほうでないか」

たかが小学校教科書、されど小学校教科書である。小学校教科書の記述にまで韓国が目くじらをたてるのは、子どもの頃からの国民教育がいかに大事を韓国政府がよく知っているからである。

子どもの頃からの国民教育がいかに大事か。それを知っている点では、日本政府も同断である。だからこそ日本の政府は、教科書に検定制度を設け、その記述の細々した点にまで嘴(くちばし)を挟もうとするのである。

たとえば「国や郷土を愛する態度」。愛国心の醸成を国民教育の基本にすえる日本の政府は、(学習指導要領にある)この項目に殊のほか細心の注意を払う。教育に関する政府の基本方針を前提しなければ、以下の記事が伝える文言の修正の、その意味は理解できないだろう。

光村図書は6年生の教科書で指摘を受けた。秋田の伝統工芸品である曲げわっぱの話を聞いた小学生がその魅力に気付くという内容の『曲げわっぱから伝わるもの』という読み物教材の末尾にある、『曲げわっぱの他にも、昔から日本各地で大切にされているものがあるよ。調べてみてもいいね』という問いかけを『君が思う日本のよさはどんなものかな。それらのよさを、どうやってよりよいものにしていきたいかな』と修正した。発問は工芸品や伝統技術という具体的な話題から離れ、より抽象的になった。」
(朝日新聞DIGITAL 3月28日配信)

「愛国心」という言葉を聞くと、(戦意をあおる)軍国教育をすぐに連想して、政府の教育に関する基本方針を批判する人たちがいるが、私はそうは思わない。健全な愛国心、健全な祖国愛や郷土愛の醸成は必要なことだと私は考える。
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マスク着用/不着用と社会

2023-03-28 11:36:48 | 日記
きのうupしたブログ記事について、すこし補足を行いたい。きのうのブログ記事の最後で、私は、(「コクラン」が公表した)研究論文を取りあげたネット記事を紹介したが、よく考えてみると、このネット記事が紹介するこの研究論文は、思いのほか深刻な問題を投げかけているように思えるのである。

まずは、(すこし長くなるが)このネット記事の全文を紹介する。以下の通りである。

厚労省は、マスクの着用に関して屋外では原則不要、屋内では原則着用を推奨してきました。しかし、令和5年3月13日から、マスクの着用は個人の判断を基本とする方針に変更されました。行政が一律にルールを策定するのではなく、個人の主体的な選択を尊重するというのが方針変更の大きな理由です。

一方で、感染リスクに対するマスクの有効性を疑問視する声も多く、加えてマスクの感染予防効果を検証した研究データも限られているのが現状でした。そんな中、質の高い医療情報の発信で世界的に定評のあるコクランという非営利団体が、ウイルス感染症に対するマスクの有効性を検討した研究論文を2023年1月30日付で公開しました。

この研究では、これまでに報告されているマスクの感染予防効果を検討した研究9件分のデータが統合解析されています。新型コロナウイルス感染症のみならず、インフルエンザ感染症など呼吸器(喉や鼻、気管支など)に感染するウイルスが検討対象となりました。

解析の結果、ウイルス感染症の症状は、マスクを着用していた場合で1000人あたり152人、マスクを着用していない場合で1000人あたり160人と、マスクを着用していた場合で5%の低下傾向を認めましたが、統計学的に有意な差は示されませんでした。

ただし、解析に含まれた研究の中でも最大規模のデータは、マスクの直接的な感染予防効果を検証した研究ではなく、マスクの着用を推奨する教育的な取り組みの効果を検証した研究でした。たしかに、個人に対するマスクの有効性は必ずしも高いものではないように思います。しかし、この解析結果は、集団における感染拡大の抑止に対するマスクの効果を否定するものではありません。

(日刊ゲンダイヘルスケア3月26日配信)

さて、この研究論文を公表した「コクラン」とは、一体どのような組織なのか。この組織は、記事にあるように、「質の高い医療情報の発信で世界的に定評のある、非営利団体」であるが、 Wikipedia はこの組織について次のように書いている。
「現在にいたるまで、世界50か国と地域に支部をもち、130か国以上の科学者が参加し、8000以上のメタアナリシス(メタ分析)が行われコクランレビューが作成されている。国際的なNPO(非営利団体)の形態をとり、企業からの資金提供やその他の利害関係のない、信頼性の高い情報を生み出すことを大切にする。」

こうした記述から判断すれば、この「コクラン」が公表する研究論文は、充分信頼するに足る医療情報だと言えるだろう。したがって、誰もがこの情報を「ホントのことだ」と信じる状況は、かなりの高確率でやってくると考えられる。

この研究論文が提供しているのは、「マスク着用に新型コロナの感染予防効果はない」という情報であるが、では、だれもがこの情報を「ホントのことだ」と信じたとき、そこにはどういう社会がやってくるのか。深刻なのは、この問題である。

まず(ふつうの)若者であるが、彼らは新型コレラに感染しても重症化することは極めて稀だから、新型コレラを恐れない。したかって彼らは、マスクに感染予防の効果がないと知れば、迷うことなくマスクを脱ぎ捨て、街へと出ていくだろう。「迷惑だ。コロナウイルスを撒き散らさないように、マスクを着けよ」という声は、もはや完全に説得力を失っている。

問題なのは、感染すると重症化する可能性が高いとされる人たち、つまりほとんどの高齢者である。そういう高齢者は、これまでなら感染予防のためにマスクを着用し、生活必需品を買ったりするために、びくびくしながら近所のスーパーマーケットに出かけていた。マスクを着用しても感染予防の効果はパーフェクトではないから、できる限り「無用の外出」は控えていた。デイサービスに行く/行かないは、これを必要/無用と考えるかどうかによって、人それぞれに異なっていた。

しかし、「マスク着用には感染予防効果がない」と知り、ほとんどの高齢者がこの情報を信じたときには、一体どういうことになるのか。
マスクを着用しても、ウイルス感染を予防することはできないのだから、彼らは「サバイバルのためには、自室に引きこもるしかない」と考えるだろう。

今は通販会社による「置き配」の仕組みが普及してきたから、他人(ひと)と接触せずに食料や日用品を調達することも出来るようにになった。しかし通販会社を利用できない「ネット難民」の高齢者も少なくないから、市町村の行政は、そういう人たちに食料や日用品を配る仕組みを作る必要に迫られるだろう。

高齢者たちがヤドカリのようにそれぞれ自分の殻に閉じこもって暮らす社会。これからは少子化が進み、高齢者が急増するから、社会のヤドカリ化はすぐにでもやって来る。これは相当に深刻なヤバい問題だと天邪鬼爺は考えるが、いかがだろうか。

ただ、救いがないわけではない。引用したネット記事の最後には、次のように書かれている。

解析に含まれた研究の中でも最大規模のデータは、マスクの直接的な感染予防効果を検証した研究ではなく、マスクの着用を推奨する教育的な取り組みの効果を検証した研究でした。たしかに、個人に対するマスクの有効性は必ずしも高いものではないように思います。しかし、この解析結果は、集団における感染拡大の抑止に対するマスクの効果を否定するものではありません。

この研究論文は、解析のために9本の論文を参照しているが、その中で最大のデータを提供する論文は「マスクの直接的な感染予防効果を検証した研究」ではない。したがって「この解析結果は、集団における感染拡大の抑止に対するマスクの効果を否定するものではない」と記事は言うのである。

このネット記事の筆者である青島周一氏は、ここで取りあげた研究論文のヤバさ加減を少しでも和らげるためにこの見解を付け加えたと思われるが、この見解をどう捉えるかによって、我々が「まだ望みはある」と考えるかどうかも違ってくる。
個人と集団との違いについて述べたこの見解を、我々はどう捉えるべきだろうか。
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マスク着用をどうする

2023-03-27 16:36:04 | 日記
ここ数日、テレビでは、「マスクを着用するかどうか」の話題が取りあげられることが多くなった。去る3月13日から、マスクが解禁になったからだという。それまでは「屋外でのマスク着用は原則不要。屋内ではマスク着用を原則推奨」だったが、3月13日以降は、「屋外、屋内を問わず、マスクを着けるかどうかは個人の判断が基本」になったというのである。

新型コロナの感染法上の分類が「5類」になったことに伴う移行措置であるようだが、さて、それでは我々は、これからどういうスタンスでこのマスク問題に臨めば良いのだろうか。

「そういうお前はどうなのだ?」と訊く人がいるかもしれない。私の場合は、ひどい花粉症なので、スギ花粉が多く飛ぶこの時期はマスクの着用が欠かせない。私の場合、春のスギ花粉は、秋のセイタカアワダチソウと同様、新型コロナウイルス以上に身近な脅威なのである。特に今年は、10年に1度の飛散量の多さとかで、マスクを着用しているにもかかわらず、連日、私は鼻炎による鼻グジュグジュに悩まされている。

では、もし花粉症でなかったらどうなのだ、と、さらに問う人がいるかもしれない。花粉症でなかったとしても、私は今現在の環境であれば、やはりマスクの着用を続けるだろう。私が外出して、他人(ひと)様と接触する機会は唯一デイサービスへの「出勤」時に限られているが、最近私が通いはじめたこの施設では、スタッフを含めた全員が、いまだにマスクを着用し続けている。デイサービスは、一旦妖怪コロナに感染すれば重症化を免れない高齢者が多いから、「原則としてマスク着用」はやむを得ない措置と言えるが、この施設のそうした暗黙の取り決めを、あえて破るほどの強い理由を、私は持たないのである。

たしかに、「マスク美人」が多いこの施設の女性スタッフの、その素顔を覗きたいと思う衝動に駆られることもないわけではない。マスクなしの素顔で表樹がはっきり分かったほうが、意思疎通の上で安心できる、という声も少なくない。

だが、あえて私は言いたい。素顔の表情のほうが本人の心情を正確に伝える、という我々の思いなしは、果たしてどの程度ホントだろうか。それが根拠のない迷信であることを、我々はむしろしばしば経験しているのではないか。

キャバクラのお姉さんたちの謎めいた微笑が、客にもっと多く酒を飲ませるための商売上の媚態だったり、バレンタインデーに初老の教授へチョコレートを差し出す女子学生のあどけない笑顔が、単位をおねだりするための作り笑いだったり、といったことは、よく聞く(笑えない)笑い話である。逆に、若いホストの優しげな言葉に誘われ、このホストに入れあげて、ホストクラブに大枚をつぎ込む中年オバサンの話も後を絶たない。

表情はしばしば嘘をつく。嘘をつくための道具として表情が使われることもある。そうだとしたら、表情を覆うこれまでのマスク越しの顔のほうが、よほど正直だということになるのではないか。

「正確なコミュニケーションのためには、素顔が一番」というのは、低俗な神話に過ぎない。むしろ仮面もどきのマスク顔のほうが、その人の性格を正確に表す。その意味では、屋内でのマスク着用を推奨するこれまでの慣例のほうが、むしろ健全な社会を形作る礎(いしずえ)になるかもしれないのである。

以上、素顔に自信のない私は、やや強引に「マスク不要論」への反論を試みた。私は、昨夜舞い込んだ次のような情報が、世間を席巻しなければ良いが、と考えている。《マスクに感染予防効果はない? 世界的機関「コクラン」が論文公開》と題されたこの記事は、以下のように述べている。

質の高い医療情報の発信で世界的に定評のある『コクラン』という非営利団体が、ウイルス感染症に対するマスクの有効性を検討した研究論文を2023年1月30日付で公開しました。
この研究では、これまでに報告されているマスクの感染予防効果を検討した研究9件分のデータが統合解析されています。新型コロナウイルス感染症のみならず、インフルエンザ感染症など呼吸器(喉や鼻、気管支など)に感染するウイルスが検討対象となりました。
解析の結果、ウイルス感染症の症状は、マスクを着用していた場合で1000人あたり152人、マスクを着用していない場合で1000人あたり160人と、マスクを着用していた場合で5%の低下傾向を認めましたが、統計学的に有意な差は示されませんでした。

(日刊ゲンダイヘルスケア3月26日配信)

マスクの着用に新型コロナ感染の予防効果はない、ということになれば、(花粉症でない)若者たちは、今後、大手を振ってマスクを脱ぎ捨てるだろう。他方、新型コロナに感染すれば重症化を免れず、必要以上に用心深くなっている高齢者は、そうなれば、自室に引きこもり、マスクを着用したまま、戦々恐々と暮らさざるを得なくなる。そんな社会が来ることを、私は望まない。
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