ささやんの天邪鬼 座右の迷言

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

ウクライナ 食卓での会話

2022-02-28 10:59:36 | 日記


「ウクライナの大統領は」
夕餉の食卓で、私は妻に言った。テレビではNHKのニュースが、ウクライナの悲惨な現状を伝えていた。
「ゼレンスキーだったかな。この大統領は、アホなんじゃないか。政治家としては無能というか、とても有能とはいえないと思うよ」
「あら、どうして?」と、妻。
私は言った。
「大統領のいちばん大事な役目は、国民の生命(いのち)と安全、それに財産を守ることではないのか。戦争になれば、それが守れないことになる。ゼレンスキーは、戦争を回避するように、もっと努力すべきだった」
「あら、それじゃあ、強いものに屈するほうが良いということなのかしら」
「良いとか悪いとかの問題ではなく、賢明か愚かかの問題さ」
「でも、強いものに屈するなんて・・・」
妻は明らかに不満そうだった。私は言った。
「太平洋戦争の末期に、『竹槍でアメリカに立ち向かえ』と言った軍人がいたそうだが、あれはどう見ても賢明とは言えない。そもそも政治の基本は、国民の生命(いのち)と安全を守ることなんじゃないのか。竹槍でアメリカ軍に立ち向かったら、殺されるに決まっている」

言いながら、私はふとクラウセヴィッツの言葉を思い浮かべた。
「戦争とは、他の手段をもってする政治の継続である。」(『戦争論』)

政治とは、交渉や協議によって行う利害の調整行為にほかならない。ウクライナとロシアとの間でも、事が戦争に至るまでに、交渉や協議が何度も重ねられ、両国の利害を調整しようとする試みがなされていたに違いない。

交渉や協議では埒が明かない、と判断したロシアのプーチン大統領は、到頭しびれを切らし、交渉や協議とは別の手段、つまり武力という手段によって決着をつけようと決断するに至った。彼が武力という手段を選択する前に、もっと別の手段を選択するように仕向けることが、ゼレンスキーにはできなかったのだろうか。
プーチン大統領個人への便宜供与でも、ハニートラップでも、何でも良い、あらゆる手を尽くして、プーチンが武力という最悪の手段を選択するのを阻止することが、ゼレンスキーにはできなかったのだろうか。

強いものに諂(へつら)う、と言えば、聞こえは悪いが、清濁併せ呑むのも政治家としての度量である。プライドが邪魔をしてそれができなかったとしたら、ゼレンスキーの器も結局はそれまでということである。

きょうの報道によれば、プーチンは核兵器の使用をちらつかせ始めたという。米欧諸国による経済制裁がロシアに与えたダメージがそれだけ大きかったということだが、核の使用をちらつかせるのは、やはり尋常ではない。狂人には、それなりの対処の仕方がある。



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力による現状変更に対して

2022-02-27 11:42:51 | 日記


力による現状変更は認めない。岸田首相は口癖のように、あちこちでこの種の文言を振りまいている。例えばこんな具合だ。

「岸田文雄首相は25日、ロシアによるウクライナへの大規模な侵攻を受けて記者会見し『力による一方的な現状変更の試みで、明白な国際法違反だ。国際秩序の根幹を揺るがす行為として、断じて許容できず、厳しく非難する。わが国の安全保障の観点からも決して看過できない』と厳しく批判した。」
(産経ニュース2月25日配信)

同種の見解は、林外相もEU外相との会談などで開陳している。察するに、これは岸田首相個人の意見ではなく、日本政府の公式的見解なのだろう。

その上で問題にしたいのだが、では「力による現状変更」は、なぜ認められないのだろうか。

こうした見解を口にするとき、日本政府首脳の念頭にあるのは、明らかに、中国の覇権膨張主義への対抗である。中国は近年、力(軍事力)に物を言わせて、台湾を自国の領土に繰り入れようとしている。その毒牙をわが国の尖閣諸島や沖縄諸島にまで伸ばそうとする中国の野望は、わが国としてはなんとしても阻止しなければならない大きな脅威になる。中国の野望、これは明らかに「力による現状変更」の企てであり、だから断じて認めるわけにはいかないというのである。

中国の野望を阻むための布石が、ロシアへの非難の文言であることは、言うを俟たない。ロシアによるウクライナ侵攻の企てを認めてしまえば、中国による台湾や沖縄への侵攻も見過ごさざるを得なくなる。だからロシアによるウクライナ侵攻の企てに対しては、日本政府は厳しい態度をとり、その不当性を国際社会に向って言い立てざるを得ないのである。

だが、ロシアによるウクライナ侵攻の企てにしても、中国による台湾や沖縄への侵攻の企てにしても、その不当性を訴えるのに、それが「力による現状変更の企てだから」という理由は、これを阻止する理由として充分だろうか。

それが正当な理由になるのは、少なくとも(既成の秩序としての)「現状」が「理性的に見て、妥当とみなしうる正当な秩序」である限りのことである。
だが、ある国(A国ならA国)の領土をかくかくしかじかと定める既成の国境の秩序は、何によってかく定められたのかといえば、そのほとんどは(世界史的に見れば、)戦争という力の行使によってだと言えるだろう。
「戦争の世紀」とされる20世紀、数多くの戦争が戦われ、それとともに数多くの「現状変更の企て」が企てられ、多くの国が生まれたり、消えたりした。

話が大きくなりすぎ、問題が見えなくなってはまずいので、話題をウクライナ問題に引き戻そう。ここで問題になっているのは、ある意味では国境の問題である。「ある意味では」と言ったのは、ここで問題になっているのは、「国と国との境界」という意味での国境ではなく、「(東西の)勢力圏の境界」という意味での国境だからである。

どういうことか。ウクライナがNATOに加盟すれば、東西の勢力圏の境界は確実に変わる。(既成の秩序としての)「現状」が変更されるのである。ロシアからすれば、これは「軍事同盟の武力に物を言わせた、不当な現状変更の企て」にほかならない。

私が何が言いたいかは、もうお分かりだろう。手短にいえば、「力による現状変更の企てだから」という理由は、ロシアや中国の野望を阻む理由としては充分ではないということである。ロシアや中国のーー特に中国のーー覇権膨張主義を阻むには、力に物を言わせるしかないのではないか。経済制裁や軍事力による対抗しかないのではないか。今や超経済大国に成り上がった中国を相手に、経済制裁がどこまで物を言うかは不明だが、これはまた別の問題である。


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諸刃の剣の核兵器

2022-02-26 13:22:36 | 日記


「諸刃の剣」という言葉がある。核兵器がまさにそれに当たるだろう。ロシアがウクライナを侵攻したとき、アメリカは武力でこれに対抗することをしなかった。バイデン米大統領はロシアに対して敵意を顕にし、「経済制裁を科す」と述べたが、軍事力に訴えることには明らかに腰が引けていた。「ウクライナはNATOのメンバーではない」などと勿体ぶった理由をあげているが、彼がロシアの核兵器を意識していたことは明らかである。

アメリカが武力に訴えれば、どうなるのか。ロシアは対抗手段として、核兵器に訴えるだろう。これは確実であり、事態はまたたく間に全面的な核戦争へと発展する。この事態を恐れるから、バイデン大統領は軍事力に訴えることができないのである。ここでは核兵器は、抑止装置としての役割を立派に果たしていると言えるだろう。

だが核兵器は、いつも抑止装置として働くとは限らない。それがかえって敵の攻撃を呼び込む(マイナスの)効果を持つこともある。今回のウクライナ侵攻に際して、ロシアが持ち出した正当化の口実の一つは、「(ウクライナの)核物質による挑発を防止するため」ということだった。

思い出されるのは、今から20年前のことである。アメリカは「(イラクが保有する)大量破壊兵器を廃棄するため」として、イラク攻撃を開始した。大量破壊兵器は結局発見されなかったが、今度はロシアがこの口実作戦を真似した格好である。

核兵器はロシアにとって、自己を護る頼もしい抑止の盾ともなり、敵を攻める鋭い口実の矛ともなったが、では、これが自己を害する刃になるのは、どんなふうにしてなのか。

一つ確かなのは、欧米諸国が科す経済制裁の効果である。これによってロシアの国民経済は確実に悪化し、国民の間にたまった不満の声は、徐々にプーチン政権の批判へと向かうことになる。次の記事は、「諸刃の剣」がプーチンに向かう大きな非難の刃と化したことを如実に示している。

「ロシアによるウクライナ侵攻が発表された24日、国内外で『反戦デモ』が同時多発的に開かれた。プーチン政権は首都モスクワで機動隊を投入し、老若男女を問わず参加者を拘束。素早い弾圧の背景にあるのは、自国世論の反発が拡大すれば、作戦遂行に支障を来すとの危機感だ。」
(JIJI.COM 2月26日配信)

「刃」となって降りかかるのは、武力・軍事力だけではない。生活苦を忌避する庶民の怨嗟の声があり、平和を望む市民の悲痛な叫びがある。

それ以外に、こんな報道も目にした。

「ロシアが隣国ウクライナに軍事侵攻し、国際的な批判が高まる中、国際ハッカー集団『アノニマス』を名乗るグループが2月25日、ロシアに対するサイバー攻撃を行うとする声明をTwitter上で発表し、話題となっている。米国などの欧米諸国を中心とした軍事同盟『NATO』(北大西洋条約機構)がロシアとの武力衝突を恐れ、ウクライナへの軍事介入を表明しない中、同集団は『世界平和だけを望んでいる』としており、サイバー空間を使った、ロシアへの事実上の報復とみられる。」
(ITmedia ビジネスオンライン2月25日配信)

はてさてどうなりますことやら。






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プーチンと森の関係がどうした

2022-02-25 11:22:34 | 日記


プーチン大統領は笑わない。私は、プーチン大統領の笑った顔を見たことがありません。ところが、この人は森喜朗元首相と会ったときだけは笑顔を浮かべるのです。私は、プーチン大統領と森元首相と、この二人はそうとう親交が深いのではないかと見ています。
そこで総理、ひとつ提案なのですが、森元首相をプーチン大統領の元に特使として派遣して、ウクライナ侵攻を止めるよう、説得を試みてもらってはいかがでしょうか。

きのうの昼過ぎ、テレビをつけたら、NHKが国会中継を流していた。野党議員がこんな質問をしていた。
あほくさ。
あまりの馬鹿馬鹿しさに、笑いを通り越して、怒りがこみ上げてきた。
なんたる税金の無駄遣い、時間の無駄遣いであることか!

私は即座にテレビのスイッチを切り、このアホ議員の名前を頭にたたき込んだ。立憲民主党、白眞勲。

こんな具合では、立憲民主党ももうお終いだな。そう思った。

笑顔を浮かべたから「親交が深い」だって?「親交」がない相手にも、親しみを込めた笑顔を振りまくのが、政治家の十八番(おはこ)ではなかったのか。

仮に二人の間に「親交」があったとしても、森元首相がプーチン大統領を説得できると考えるのは、愚の骨頂である。そもそもプーチン大統領は、それほどウェットな男ではない。
仮にプーチン大統領がウェットなメンタリティーの持ち主だったとしても、一国の命運を左右するほど重大な決定を、一友人の言によって撤回したりすることがあるだろうか。プーチン大統領がそんなことをする男だったら、彼こそ愚かな大馬鹿者の大統領だということになるだろう。

そんなことも弁えずに「親交が深い森元首相を特使としてプーチン大統領の元に派遣したらどうか」なんて、馬鹿も休み休み言え!と、どやしたくなる。
立憲民主党は批判型、いちゃもん型の野党から「政策先導型」の野党へと脱皮を図っているようだが、傘下の代表選手がこんなアホな提案をするようでは、この党の将来が思いやられる。

あまりに腹が立ったので、昨夜、この件についてネットに当たってみた。次のような記事が見つかった。

「岸田文雄首相は24日の参院予算委員会で、森喜朗元首相を特使としてロシアに派遣べきだとの提案に対して『具体的な対応について今は予定はない』と慎重な考えを示した。緊迫するウクライナ情勢について『今後の動向を見ながら適切に対応していく』と述べた。立憲民主党の白真勲氏への答弁。
白氏は、ロシアのプーチン大統領と森氏の親交が深いと指摘した上で『森氏を特使として派遣し、仲介の労をとってもらうことはどうか』と求めた。
首相は『人間関係は大事な要素ではある』と答える一方で、『国際秩序や国際法、基本的な理念が重要だ。国際法をはじめとする基本的なルールや理念を大事にしながら、外交を進めていくことが基本だ』と語った。」
(産経ニュース2月24日配信)

この記事を読む限り、岸田首相の答弁はまともこの上ない。自民党の1強支配はまだまだ続きそうだ。



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ウクライナ情勢と下部構造

2022-02-24 11:15:07 | 日記


下部構造は上部構造を規定する、と言ったのは、マルクスである。上部構造、すなわち思想信条や政治は、下部構造、すなわち経済関係によって規定される、との謂である。

このほどロシアのプーチン大統領がとった政治行動、ーーウクライナへ兵を進めた彼の政治的決断は、(クリミア併合以来、米欧諸国の経済制裁によって疲弊した)ロシアの経済を、なんとか立て直そうという「背に腹」の思いから出たものと言えるだろう。

けれども、かく下部構造に規定されたプーチンの政治的決断は、グローバルな市場構造を揺り動かし、この意味での下部構造に逆に変化をもたらすものになる。報道は次のように伝えている。

「ウクライナ情勢が商品市場を揺さぶっている。
ロシアの派兵決定や欧米による対ロシア制裁発表を受け、原油先物相場は約7年5カ月ぶりの高値を付け、1バレル=100ドルの大台に肉薄。ロシアを主要生産国とするアルミニウムやニッケルの価格も急騰した。」
(JIJI.COM 2月23日配信)

経済事情の変化に敏感に反応するのは、先物相場だけではない。株式相場もまた経済事情の変化に敏感に反応する。米株式相場の推移について、報道は次のように伝えている。

「23日のニューヨーク株式相場は、ウクライナ情勢をめぐる懸念が続き、5営業日続落した。優良株で構成するダウ工業株30種平均は前日終値比464.85ドル安の3万3131.76ドルで終了。5日間で計1800ドル超下落し、終値としては、昨年3月以来の安値となった。」
(JIJI.COM 2月24日配信)

余談になるが、遠藤誉氏が言うように、ロシアのウクライナ侵攻にもしアメリカの陰謀意図が働いているとしたら、アメリカの株式は上昇こそすれ、下落したりはしないだろう。このところの米株式相場の下落は、図らずも遠藤氏の勘繰りが「ハズレ」だったことを示している。そうではないだろうか。



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