ささやんの天邪鬼 座右の迷言

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

銃規制とリベンジの論理

2022-05-31 14:41:43 | 日記


アメリカでまたしても銃乱射事件が起こった。テキサス州でのこと。18歳の犯人は、その場で射殺されたという。

この種の事件が起きると、必ず問題になるのが銃規制の是非である。こんな物騒なものを少年が簡単に入手できるなんて、どこか間違っている、ーーバイデン大統領のように、そう考える人は多いが、反面、トランプ前大統領のように、利益団体NRA(全米ライフル協会)の主張に賛同する人たちも少なくない。複雑な利害が絡むから、この議論にはなかなか決着がつかないのだ。

だが、今回の問題は、そこに「いじめ」という問題が介在している分だけ、議論がヨリ込み入ったものになる。小学校に乱入し、19人の児童を射殺した少年は、自らが学校でいじめを受けていたという。つまり今回の銃乱射事件は、いじめられたことへのルサンチマン(怨恨感情)が引き起こしたと言えるのである。

むろんこの少年の行為は間違っている。いじめに対するリベンジの意味があるのなら、銃口は(いじめには全く無関係の)小学生に向けられるべきではなかった。

この少年はたぶん、自分をいじめた同級生たちに復讐をしたかったのだろう。だが、素手で立ち向かったのでは、しょせん敵う相手ではない。かえってボコボコにされるのが落ちだろう。
殴り合いでは劣る少年でも、しかし、銃を手にすれば違う。自分をいじめた憎い同級生たちに銃口を向け、引き金を引けば、少年は確実に無念を晴らすことができたはずだ。少年はなぜそうしなかったのか。

おいおいーー、という声が聞こえた。君はその少年が、自分をいじめた同級生を銃で射殺すべきだったと言いたいようだが、それはどうかな。復讐を行うのなら、それはあくまでも「同害報復」の原則に基づくべきだと私は言いたいのだ。目には目を、歯には歯を、という言葉があるが、復讐を行うのなら、それは同程度の加害によって果たされなければならない。ちょっとなぶられたぐらいで、相手を射殺するというのは、明らかに度を越えている。そういう度を越えたリベンジができてしまうのも、元はと言えば、少年が簡単に銃を入手できてしまうからだ。やはり銃は規制すべきだと私は思う。

おいおい、と、今度は私が言葉を返したくなった。それじゃあ、弱者の少年は、結局、泣き寝入りをするしかないことになるではないか。あんたは弱肉強食を認めるというのか。

すると声の主はこう答えた。要するに、銃を使うだけがリベンジの手段ではないということさ。リベンジにもいろいろなやり方がある。たとえばこの少年は、悔しさをバネにして、勉学に邁進し、高偏差値の一流大学に挑戦することだってできる。一流大学を卒業して、一流会社に就職し、リッチな生活をして、自分をいじめた昔の同級生を見返すこtだってできるのだ。一流大学を卒業すれば、いろんな可能性が拓ける。キャリア官僚になり、国の制度設計に携われる高級官僚になれば、自分をいじめた昔の同級生らが貧乏にあえぐような社会を作ることだってできる。社会的な強者になれば、社会的な弱者に苦痛を与えることなど、お手のものなのさ。

う〜む。私は言葉を失った。しばらく考えて、やっとこんな言葉を絞り出した。昔いじめをした復讐で、大人になってから貧乏にあえぐことになる、か。痛い目には痛い目を、ということだろうが、これってホントに「同害報復」の原則に適っているのだろうか。


コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

プーチン体制 その崩壊の前兆

2022-05-30 09:44:30 | 日記


蟻の這い出る隙もないほど、ぎしぎしと監視の目を光らせ、批判を頑として許さない厳酷な統制下の社会。そんな社会で、やっと現体制に対する批判の牙が鳴らされた。これは充分「蟻の一穴」になり得るのではないか。こんなニュースを聞いた。

「ロシアによるウクライナへの軍事侵攻について、地方議会の野党議員が公然と撤退すべきだと訴える一幕があり、軍事侵攻に対する不満の広がりもうかがえる事態となっています。
ロシア極東の中心都市ウラジオストクがある沿海地方の議会で27日、野党・共産党に所属する議員が追加議題の発言として、プーチン大統領に宛てたとする文書を突然、読み上げました。(中略)
そのうえで『軍事的な手段での成功は不可能だ』として、ロシア軍の即時撤退を求め、同じ共産党に所属する別の議員1人が拍手しました。」
(NHK NEWS WEB 5月27日配信)

一地方議員が放ったこの批判の矢は、だが正確にいえば、強固な堤防が瓦解しはじめた予兆の一つにすぎない。ロシアのプーチン体制がやっと崩れはじめた。これを示す証は、すでにあちこちにあふれている。こんな具合だ。

「ウクライナ侵攻後、ロシアとベラルーシから脱出する国民が後を絶たない。両国とも厳しい言論統制が敷かれ、国際社会から経済制裁が科された。あるロシア人学生は『軍事演習』への兵役を拒み、日本に渡った。あるベラルーシ人の女性はジョージアへ。背中を押したのは、戦争への失望や怒り、ソ連時代回帰への恐怖だ。」
(JIJI.COM 3月25日配信)

私は当初、プーチン体制の崩壊はロシア軍将校たちのクーデターによって引き起こされるはずだと考え、これはすぐにでも起きるのではないかと予想していた。だがこの予想に反して、崩壊は綻びの形をとり、意外なところから始まったと言うべきだろう。

強固な堤防を崩すのが小さな蟻の一穴であるように、厳酷なプーチン体制を崩すのは名もない民衆の不満であり、怒りであり、批判だということである。蟻の思いも天に届く。

さて、今後はどうなりますことやら。


コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

共産党と自衛隊の奇妙な関係

2022-05-29 11:31:20 | 日記


きのうの朝日新聞朝刊に日本共産党・志位委員長のインタビュー記事が載っていた。総選挙が近づいているからだろう。志位委員長は先の会合で「(党が違憲とする)自衛隊を活用する」と発言した。「野党連合政権」の実現に向け、現実路線をアピールした格好だが、これはスキャンダラスとは言わないまでも、充分にセンセーショナルな発言である。このインタビュー記事では、志位委員長のこの問題発言の真意に質問の焦点が絞られている。

「Q:4月の党会合で、『急迫不正の主権侵害に際しては自衛隊を活用する』と発言した真意は
A:自民党は『安全保障=軍事』だが、軍事力でなく、外交の力を用いるのが我々の安全保障論。ただ、外交の努力をしても万が一のことが起こればどうするか。いま日本を取り巻く状況の中には実際にきな臭い要素がある。我々が政権に入ればこういう対応をしますということを述べた。
Q:自衛隊は違憲との立場では
A:共産党としては違憲の立場を貫くが、党が参加する民主的政権の対応としてはどうなるか。自衛隊と共存しているので、政権としては理の必然として合憲の立場をとる。国民多数の合意なしに自衛隊を合憲から違憲に憲法解釈の変更はしない。党として憲法9条と自衛隊の矛盾を、国民合意で一歩一歩解消するよう力を尽くす。
(以下、略)」

このインタビュー記事を読んで、私は狐につままれたような、どうにも釈然としない思いを禁じ得なかった。「俺もとうとうボケてしまったのだろうか・・・」と、自分の脳ミソを疑ったほどである。

なんといっても理解不能なのは、「党として憲法9条と自衛隊の矛盾を、国民合意で一歩一歩解消するよう力を尽くす」という発言である。
いうまでもなく「憲法9条と自衛隊は矛盾している」というのが、共産党の基本的見解である。だから共産党は、「自衛隊は違憲である」と主張するのである。

では、「憲法9条と自衛隊の矛盾を解消する」とは、どういうことか。「憲法9条と自衛隊は矛盾しない」よって「自衛隊は合憲である」とする立場にたつことではないのか。そうした「立場の変更」あるいは「見解の変更」を「国民合意で一歩一歩」実現していくというのは、「自衛隊は合憲である」とする見解を、国民多数派の合意にしていくということにほかならない。

つまり志位委員長は、共産党の基本的見解(「自衛隊は違憲である」)と相反するような見解(「自衛隊は合憲である」)を、国民多数派の合意にしようとしているのである。志位氏は、共産党の委員長としては失格だろう。

あるいは、こうも考えられる。「憲法9条と自衛隊の矛盾を解消する」とは「自衛隊と矛盾しないように憲法9条を変える」ということ、つまり、「自衛隊と矛盾しないように憲法改正を行う」ということにほかならない。この憲法改正必要論は自民党の基本的立場であり、つまり、志位委員長はここでは(自らがこれまで散々批判してきた)自民党の見解をただリピートしているだけなのである。これでは志位氏は、やはり共産党の委員長としては失格だと言わなければならない。

つまり、共産党が政権に就くことは、共産党の自己否定なしには不可能だということである。共産党ははたして自己を否定するのだろうか。それとも、委員長の見解を否定して、志位氏をお払い箱にするのだろうか。


コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ロシアのあまりに人道的

2022-05-28 09:24:34 | 日記


ヨシモトのお笑い芸人も顔負けの、意表を突いた卓抜なブラック・ギャグである。ロシアは軍事だけでは飽き足りず、今後は「芸事」にも乗り出そうというのだろうか。

こんなニュースを聞いた。

「国連安全保障理事会は26日、北朝鮮の相次ぐ弾道ミサイル発射を受けて緊急会合を開き、安保理制裁強化の決議案を採決した。常任理事国の中国とロシアが拒否権を行使し、否決された。(中略)
中国の張軍国連大使は『北朝鮮への追加制裁は問題解決に役立たず、対立のエスカレートにつながる』と主張。ロシアのワシリー・ネベンジャ国連大使は『制裁圧力を強めることに効果はなく、非人道的だ』と同調した。」
(読売新聞オンライン 5月27日配信)

お笑いの世界には「お前が言うな!」、「どの口が言うとるんや!」という返し技がある。拒否権を行使したロシアの拒否権行使の理由に対しても、この常套句が使えるだろう。

だって、そうではないか。あのロシアがーーウクライナを侵攻して、民間人を多数虐殺するなど、非人道的な行いを散々はたらいたあのロシアがーー「非人道的だ」という理由で、北朝鮮制裁に反対したというのだから。

しかもロシアは、だれもがアッと驚くこのギャグを、まったく場違いな国連安保理の議場で披露してみせた。お笑いもここまで来れば、滑稽を通り越して凄みすら感じさせ、観客は薄ら寒い思いでただ唖然とするばかり。呆気にとられて反論する気にもなれない。

ロシア軍兵士の中には、このギャグをギャグとしてではなく、マジメな主張として受け取ったウブな兵士もいたらしい。国家親衛軍に属するロシア兵115人がウクライナ侵攻の兵役につくことを拒否したという。彼らはこう言いたかったに違いない。「このような任務は非人道的ですので、従事したくありません。我々、人道的な兵士は、これを拒否します。」
ロシアの軍事裁判所は、この異議申し立てを棄却したという。
まあ、そうだろうな。
異議申し立てを棄却した軍事裁判所の、その判決理由を知りたいものだ。


コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

インバウンドの毒饅頭

2022-05-27 11:49:38 | 日記


人はパンのみで生きるにあらず。されど、パン無しには生きること能わず。さりながら、もしそのパンに毒入りせば、人はまた生きること能わず。

う〜む。これは難しい問題である。カネがなければ、我々はこの世の中で生きていけない。今は円安。カネを稼ぐこの絶好の機会に、何もせず、ただ指をくわえて見ている手はない。しかしながら、もしそのカネに妖怪コロナのウイルスが潜んでいるとしたら・・・。

我々は今、まさしくこの難問に直面している。というのも、我らがキシダ君が誘惑に負けて、この「毒饅頭(まんじゅう)」に手を出してしまったからだ。きのうのことである。届いたメルマガに、こんな記事が載っていた。

「政府は26日夜、岸田文雄首相が表明した外国人観光客受け入れ再開の詳細を発表した。米国や中国など98カ国・地域からの観光客を対象に、6月10日から受け入れの手続きを始める。新型コロナウイルスの感染が落ち着いていて、入国時の検査でも陽性率が低い国が対象だ。ワクチン接種の有無にかかわらず、入国時の感染検査や待機は不要にする。」
(日本経済新聞5月26日配信)

この記事を読み、私が思い出したのは、おととし2020年の秋に起こったあの「 GO TO トラベル」騒動である。当時首相だったスカ君は、衰退著しい観光業界がカネを得られるようにと「 GO TO トラベル」事業を導入したが、この「毒饅頭」によってコロナ感染者が急増したため、この業界振興策を急きょ取りやめざるを得なくなったのだった。

このたびキシダ君は、「さあ、円安だ。インバウンド増大の絶好の機会だ!」と前のめりで、この饅頭が毒入りだということをすっかり忘れてしまったようだ。

この饅頭が毒入りだということ、海外からの来客が増えればコロナ感染者が急増することは、(北京五輪を経た)中国の事情がよく示している。こうした中国の事例や、一昨年の日本の事例を、キシダ政権は忘れてしまったのだろうか。それとも、忘れたふりをしているのだろうか。



コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする