YS Journal アメリカからの雑感

政治、経済、手当たり次第、そしてゴルフ

トヨタ リコール 生産の一時停止

2010-01-27 17:03:45 | アメリカ自動車業界
トヨタは、アクセルペダルの不具合でカムリ、カローラを含む8車種(2007-2010製)のリコールを発表し、販売と生産の一時停止を決定した。対象台数は230万台との事だ。

ビックリしたのは、生産一時停止だ。こんな例はアメリカメーカーでも過去にもあまり無いらしい。生産再開のめどについての発表は未だ無い。

今年の生産は、去年比の3倍ペースで(年間換算150万台)立ち上がっただけに、いきなり出鼻を挫かれた形だ。トヨタブランドへの悪影響については、計り知れない。昨年のレクサスに続いて、それもアクセルペダル絡みなので、尚更である。

原因は、設計要因、製造要因のどちらかしかないのだが、報道からははっきり分からない。カムリ、カローラはグローバルプラットフォームで共通設計なので、日本や中国では問題が無いとの事から察すると、製造要因の可能性が高い。つまり、何らかの原因で設計通りの製造が行われなかった事になる。但し、出荷検査や入庫検査がされているので、スペックアウトが流失したなどと言った単純な事ではないと思う。

そこで考えられるのは、日米の製造文化の違いに基づくものである。これは、設計要因であるともいえるのだが、もっと根深いものがある。

日本の部品は、許されている公差範囲よりもタイトで、安定している傾向にある。設計上の余裕の無さが、この日本独特の製造技術(と言うか慣習)でカバーされたりする事がある。例えば、製造スペック実力値が設計スペックより格段に上で安定していて、試作等で問題にならなかったものが、アメリカで製造するときに、スペックの上限、下限の部品の最悪な組み合せが発生して想定外のモードが出現する事が考えられる。(アメリカは公差内ならOKという感覚が強い)

究極的には設計ミスなのである。設計者には厳しい言い方であるが、スペックの読み方、製造、検査現場の慣習という日米文化の違い(日本と他文化と言っても良いだろう)を考えていないのである。

私が経験した品質問題が、正にこの構図であった。(未だ、完全に後処理が終わってないと思うので具体的には言えない)

今頃、悪者探しが盛んに行われていると思うが、部品会社は、リコール等の莫大な費用発生の可能性があるので、スッペク通りに納入していると主張せざるを得ないのである。トヨタとサプライヤーの関係において、トヨタに対して設計が甘かった可能性など絶対にいえる雰囲気はないし、(そんな事言うと、未来永劫取引禁止とか言い出す人がいたりする)最後は費用の話になるので、真の原因追求は中途半端に終わるのである。

リコールそして生産一時停止という未曾有の出来事なので、トヨタとしても免罪(リコール費用、将来ビジネス)をサプライヤーに与えて、徹底的に究明すべきであろう。でなければ、将来同じような問題が再発する可能性が高いと思う。

調査結果が発表になったら、詳しく検証してみたい。グローバル企業トヨタの真の姿が浮かんでくるような気がする。


最新の画像もっと見る

22 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Toyota (ChicagoKoi)
2010-01-28 00:11:33
昨日今朝と米のTVではLocal News, National Newsとも一番で扱われているので、今朝は貴方のブログでもこの前例のないトヨタの措置について書かれていると予想してました。

2-3ヶ月前から始まったのでしたっけ。当初Tyotaは床のカーペットがペダルに掛かるの原因だといいはり、次にはペダルの問題だと発表した。そのころから消費者からはかなりのトヨタに対する批判がありました。ABCのBrian Rossがかなり執拗にこの問題を追いかけていました。

サプライヤーも痛手でしょうが、販売する
Dealerも酷い打撃かと思いますなにしろ、販売中止では売ることができないのですから、
この間はリコールの修理をしてその費用をToyotaから取ってしのぐのでしょうか、他人事ながら気になることです。

今朝 日経を含む日本の新聞をネットでみましたが、この件に関する扱いが小さい印象を受けました。 米では一番のNewsとなっています。数日前にもリコールに関する日本の新聞記事には死者は出ていないがリコールを決定したと書いてありましたが、米では2000件の事故で16人の死者が出ていると報道されています。この温度差はなんなんでしょう。

先日、レンタカーで一日$7余分に払ってまでCamryにUpgradeして運転しましたが車には満足でしたが、自分だけには起こらないと考えているからでしょうかいま考えるとちょっと怖いですね。もしも高速道路でOut of Controlになって一瞬の判断でギアをニュートラルに入れられるかですね。
返信する
恐れ入谷の鬼子母神 (ysjournal)
2010-01-28 03:48:28
完全に読まれてますね。オバマ大統領の一般教書演説イブを書こうとしていたのですが、生産中止に激しく反応してしまいました。

レクサスのリコールでは、スタートボタンを3秒押し続けるとエンジンが切れると言うニューテクニックを覚えたばかりですが、機械の暴走対応テクニック習得が必要のようです。

確率的にリコール現象の車に当たる可能性は限りなくゼロに近いのですが、心理的にそうは考えられないところが、今後のブランド力の低下に拍車が掛かりそうです。

生産や販売の判断が、次々変わっているのは、原因究明が行き詰っている事を示唆していると思います。Failture Mode再現のために、公差のばらついた部品の組み合わせで実験をやったはずです。(未だやっているかも)

現実対応として、暫くは、同じ設計の日本製を輸入して生産再開ということになると思います。これから、大量のアクセルペダルアッシーが空輸されると思います。問題大きいので、この方法でNHTSAが納得するかどうかが見所だと思います。
返信する
トヨタ文化の弱点 (Lilac)
2010-01-30 07:12:29
大変面白く読ませていただきました。自分がもしかしたら、と漠然と考えていた設計に関する問題が、はっきり書かれていて、とても参考になりました。

トヨタは「あうんの呼吸」の文化だとよく言われますが、その長所が裏目にでているのかな、と思いました。
言われなくても精度は高くする、言わなくてもわかる、といった文化が、グローバル化の中で少しずつ、齟齬を生じているのかな、と。
アメリカ人経営者が居つかない問題にしてもそうですよね。

私も時間があればトヨタのことをブログ記事にしたいな、と思っていたのですが、その時よければこの記事を取り上げさせていただければ幸いです(もっとも来週から授業が始まって忙しくなるのでかけなくなってしまうかもなのですが・・)
返信する
寄せ木細工とレゴブロック (ysJournal)
2010-01-30 08:41:06
http://blog.goo.ne.jp/ysjournal/e/3483d8ead48a158a898105508cc3ef57 でも似た様な考察をしております。

ここの日本人技術者は優秀な人が多いのだが、専門分野に中だけで考えるので、製造文化の違いには気がつくのですが、全体を見渡せないので、改善指向で、たこ壷を深くしちゃったりします。

トヨタの記事、のんびり楽しみに待ってます。(プレッシャーかけるわけではありませんが)私の記事でよければ、いくらでも。光栄です。
返信する
日米:リコール記事量の違い (snowbees)
2010-01-30 18:55:24
1)トヨタの広告宣伝費は、リーマン・ショックまで、年間約¥1,000億であり、マスコミなどを「恫喝」していた。現在は、宣伝費を3-5割ほど削減したので、TVなどマスメディアの不況を招いた。
2)従って、今回のリコールに関する記事量は、日本では少ないと。
返信する
トヨタ日本での記者会見 (ysJournal)
2010-01-30 22:01:29
「従って、今回のリコールに関する記事量は、日本では少ないと」と勘ぐりたくもなります。

昨日、アメリカのラジオニュースで、トヨタがこのリコールの初めての記者会見を行った事を聞きました。広報担当者(?)マスクをしたまま応答をしている事に、ビックリしておりました。(映像観てみたかった。日本人的には理解出来なくもないのですが。)

アメリカでは、起業にとって大問題が起きた時は、トップが直ぐに出てきて、強いメーッセージを送る事が常識になりつつあります。

アメリカの事を日本で発表するという事で、普通にやったのだとも思いますが、そんな事までが直ぐアメリカで批判される事がグローバルという事だと思います。

問題も対応も、トヨタの真の体質を曝しています。

コメントありがとうございました。
返信する
マスクして会見 (googler@tokyo)
2010-02-01 12:56:41
トヨタのアクセルペダル問題がアメリカと日本とでどう扱われているのか調べているとこに、こちらに訪問させていただきました。参考になりました。

コメントにありました「マスクをして会見」していた映像は、こちらのサイトでそのソースを紹介していました。ご参考まで。
http://www7a.biglobe.ne.jp/~cbx/
返信する
二つのリコールがごちゃ混ぜ (ysJournal)
2010-02-01 18:41:22
コメント及び映像紹介ありがとうございました。

日本でもアメリカでも、昨年と今回のリコールがごちゃ混ぜになって報道されております。同じアクセルペダル絡みなのですが、本質的に違います。

昨年のフロアマットのリコールの件は、純正部品であれば問題ないとの決着、つまりアクセルペダルには問題は無いという事になっています。しかし、突然エンジン回転があがったり、あがったまま戻らなくなったりするクレームへの回答になっていません。現象からは、アクセルもしくはエンジン電装系の欠陥への疑惑が払拭されておりませんでした。

で、今回の件ですが、これは単純にアクセルペダルのメカニカルの問題です。つまりペダルの作動上に問題があり、踏み込んだままになったり、戻りが悪かったりするという事です。よって、対策も新デザインのペダルアッシー交換という事になっております。

今回のリコールが大騒ぎななった事で、昨年の事が蒸し返された上に一緒くたになって、大混乱になっています。

アメリカの月曜朝に、今年の方のリコール対策のトヨタの記者会見があるとの事です。新デザインのペダルを優先的にディーラーに提供するとの噂がありますので、生産の一時停止が、今週一週間から伸びる可能性が高くなってきました。

続報していくつもりです。
返信する
メカではなく、電子系統の異常では (snowbees)
2010-02-01 19:53:56
NYTによれば、事故の原因として、トヨタは否定しているが、電子系統の異常を疑うと。私の憶測だが、もし、"drive-by-wire"システムの異常ならば、大事件に発展するかも。:QTE

A lawyer for a California man whose wife died in a 2007 crash of a Camry said the company was avoiding a potentially more pervasive problem by focusing on mats and stuck pedals, rather than its electronics.

“There are thousands of these complaints, and we’re not seeing floor mats and we’re not seeing stuck throttles,” said the lawyer, Donald H. Slavik, of Milwaukee. The traffic safety agency “simply doesn’t have the resources to analyze the electronic systems of these cars.UNQTE
返信する
電子系統の異常 (ysJournal)
2010-02-01 21:59:31
さっき、リコールの続編をポストしたばっかりなので、そちらも参考にして下さい。

今回の大騒ぎの根底には、この電気系統への疑惑があるのは承知しております。

電気系への疑惑は、全くの別問題であると考えています。もし、"drive-by-wire"システムの異常で、トヨタが隠蔽でもしていたら、大事件どころかトヨタが潰れてしまします。

電気系統への疑惑は否定出来ませんが、ある程度技術的には解決しているとの私なりの見解です。但し、世論、特に弁護士が煽っている様なので、トヨタにとって修羅場であるには変わりません。
返信する

コメントを投稿